見出し画像

If you are…#27 Colors(烏羽空)

画像:フリー素材.com様(https://free-materials.com/病院(クリニック)の待合室/)

待合室には私と養護教諭だけ。でも私は、彼がいなくなったら本当に一人になってしまうのではないか。違う色合いの黒が中で渦巻いている。墨・暗黒・濡羽…どれも美しい色のはずなのに。

すると、先生が肩をぽんと叩いた。

「博多さん、烏羽くんに死んでほしくないでしょう?」

私は頷くことしかできない。

「烏羽くんと何がしたい?」

「ライトノベルの真似っことか、もう一回公園に行ったりしたいです。あと…」

「あと?」

「さっき聞かれた問題を教えたい。」

先生は笑ったが、それは決して侮辱の色は認められなかった。そして先生は続ける。

「もしその答えを教えたいなら、烏羽くんのこと、信じてみない?多分彼も同じこと思ってんじゃないかな?」

私の中に渦巻いた色々な黒の中に1本だけ違う色が入った─先生の白衣の色だ。

暫くその白を信じて祈っていると、三白眼のちょっと怖い医者らしきし人がやってきた。私はその白衣に縋るように「空先輩は⁈」と勢いよく聞いてしまった。全く、私らしくないではないか。

「とりあえず一命は取り留めました。」

その一言が黒ずくめの渦巻きを白に変えていく。さっきの白衣の色に、卯の花・生成り・乳白…でもまだ1色足りない。

私は最後の色を補完しに彼の病室へ急いだ。病院特有のスライドドアを開けると、見える位置にある椅子で彼はアフタヌーンティーを嗜んでいた。スコーン・小さなオープンサンド・立方体のケーキ…実に豪華だ。確かにそれ自体も先輩も美しいけど…こいつ、病人よな?

でもそんな平和なシーンが見れたからだろうけど、私の体から力がどっと抜けて座り込んでしまった。すると、本当だったら心配される側の空先輩の方から心配された。

「大丈夫⁈いっぱい走ってきたの⁈」

「そうじゃないです…先輩がいなくなったら嫌ですよ…私一人置いていったら先輩も私も、どうやって生きていくんですか。」

先輩はちょっと黙った。それはおそらく『仰天』がふさわしいんだろうけど、先輩は天邪鬼なことを言ってきた。

「別に智子ちゃんだったら素敵な人見つかるって。可愛くて、性格よくて…だから僕がいなくなったところで─」

それ以上聞きたくなくて口同士で蓋をした。そして、いつか言われた言葉を返してやるのだった。

「口には気をつけた方がいいよ。」私は意地悪に笑った。

ブラインド越しに見える青空には純白の入道雲がコントラストをなしていた。あの日と比べてどうだったかは、純白のカーテンのせいでわからない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?