If you are…#24 Reversal(烏羽・外垣)
逆転現象は意外とそこらへんに溢れている。例えば『逆ドーナツ化現象』、これは郊外にたくさん住んでいたはずがいつしか都心に集まり始めるというものだ。
どうして『逆ドーナツ化現象』なんてものを取り上げたのか、それは空先輩が政治経済の科目について補講(という名の強制自習)になってしまったからだ…しかも私という巻き添いを添えて。
「えー、これはどっちが需要でどっちが供給?」
「上がってってるやつが供給で下がってってるやつが需要ですよ。」
まさか夏休みにもなって教室に来るとは思ってもみなかった。私は先輩よりも学年が下だし留年した記憶もない。普通は逆のはずなのだが。
クーラーが効いているとはいえ流石にドリンクは必須であり、私はスポーツドリンクのペットボトルを横に常駐させている。しかし、もうそれの中身は空で外側に水滴を残すのみとなっていた。すると先輩にそれを知られたらしく、提案をされた。
「僕、ドリンク買ってこようか?」
「大丈夫です。先輩に無理をさせたら先生になんて言われるか。あと別に運動してないんで。」
「わかんないよ。もしかしたら組体操始めちゃうかもよ。」
『組体操』というワードセンスはアレだが、なんのことかわかった私はとても気恥ずかしくなった。それを見た先輩は私の方に近寄ると「じゃあ、今始めちゃおっか。」と言ってきた…とても冗談と言えない冗談だ。
「はい、学校内での不純行為はやめてください。」
少し遠くからそんな冷徹な声が聞こえたので私たちはそちらを見て固まってしまった。1学期によく見た隣席─外垣秋であった。
「秋くんはなんでいんの?補習とは無縁な成績でしょうに。」
「それ、あんたが言えたことかよ。」と秋くんはおでこをこづいた。どうやらその様子が面白くなかったようで空先輩は頬を膨らませている。その先輩の様子を見た秋くんがクスッと笑うととんでもない行動に出た。
秋くんと私の顔がちょっとの間近づいた─それもほぼ距離はなく、鼻だったり唇だったりが接触した…キスだった。
「あんまりバカすぎるとこうやって彼女取られるかもですね。」
秋くんの先輩に対する一言も、冗談と言えない冗談であってほしい。彼にホールドされているせいで先輩の顔は見えない。ただ、秋くんの真剣でやはり洗練された顔だけが視界を占拠する。
すると、その体と体の間に先輩が割って入ってきた。秋くんに代わり先輩が視界を占拠するとガッチリとホールドしてきた。
「どんなにされたって僕が必ず取り返すから。奪えるものならやってごらん。」
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