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If you are…#7 Hot(智北青葉)

画像:http://mao.sub.jp/bgd_sc.htm

7月の最終週は夏休み。しかし、それより前はまだ学校…しかも生徒会にはとんでもない仕事がある─『挨拶運動』である。県内屈指の進学校が何をしているんだろう、そうとしか思えない炎天下の中私は営業スマイルを展開するのであった。

「今日は終了!各自ホームルームに間に合うように!」

その先生の一言が天からの恵みであるかのように錯覚してしまうくらい直射日光とアスファルト熱のダブルパンチで汗が吹き出していた。

「戻りました~。」と書記室に戻ると冷房がガンガンに効いていてエアコンのありがたさをひしひしと感じた。それが滑稽だったのかは知らないが青葉先輩が「そこまで?」と笑った。

「炎天直下の中営業スマイルを保ったんですよ?ご褒美欲しいくらいですよ!」

「あー、ごめんって。休み時間までに用意するから、ね?」

他の男子と比べると小さな先輩だが、私はさらに小さいので見下ろされ、胸が高鳴ってしまう。いや、Mとかそういうわけじゃなく。

「わかりましたよ、絶対ですからね!」と私は念を押して自分の教室に戻った。

それが今日の朝のことなのだが、4階にある自分の教室
に昼休みが来た。騒がしくなった教室の噂話に耳を傾けながら自分の昼食を取り出していた。すると、横からコンコンという軽い音がしたので真横─廊下と教室を隔てる壁に設置されている窓を覗いた…先輩だった。

今日は珍しくストレートだったのはおそらく縮毛矯正で、それはすっかり意味をなさなくなっていた。おまけにビジュアル系バンドも感心しそうな厚化粧も汗でファンデーションの大部分が落ちていた。

かわいそうとしか思えなかったので私は窓を開けた。すると、先輩は「早く!」と催促するから廊下に出ることにした。なるほど、この暑さでは1階登るだけでも汗だくになると実感できた。それは廊下を歩いている時もそうで、廊下という名の蒸し風呂と言っても大袈裟じゃない気がする。

私たちが着いたのは書記室…ではなく正面玄関にある自動販売機だった。

「どれでも選んでいいよ…しょうもないと思ったら断っちゃってもいいよ。」

『断る』という選択肢はあってないようなものだった─だって蒸し風呂の中をわざわざ1階登ってまで来てくれた人にそんなことするのは人外くらいであろう。

「ありがとうございます。では。」と先輩が小銭を入れた後に選び始めた。「暑いねー。」と言って先輩は手持ちファンを回すとその風に目を瞑った。化粧なのか地なのかはわからないが長いまつ毛がなんとも艶かしい。こんなことを言ったら怒られてしまいそうだから私は心の内にしまっておく。


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