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If you are…#13 Hamburger steak(智北青葉)

画像:みんちりえ様( https://min-chi.material.jp/

「お腹すいたー!なんかない?」

その一言で全てが始まった。というか青葉先輩に家を教えた記憶が全くない。これも所謂生徒会権限なのか…と最早諦めている私は既に麻痺してしまっているのだろう。本来だったらこんなことは起きてはいけないのであろうが、恋人だとつい許してしまうものらしい。

ちょうど親が寝静まった時に来たのでなんだか同棲でも始めたかのような雰囲気を感じつつ、余ったハンバーグをはじめ、味噌汁なりサラダなり白米なりを用意してたら定食のようになった。しかもここはただの民家なので簡素なものになってしまっている。

それなのに先輩はとってもいいリアクションをしてくれる…私が作ったことは黙っておこう。先輩はハンバーグを一口頂くと「んー!」と甘美な笑顔を見せてくれるところが、私は慕わしいと思ってしまっている。

「久しぶりにまともなごはーん!」と先輩が言っていたのに私は衝撃を隠せない。

「先輩、何食べて生きていたんですか。」

「え?カロリーバー。」

それをさも普通かのように言える先輩は一般に見てもおかしいし私からしても絶句するくらいにはおかしい。さらに先輩は続ける。

「だからさ、こうやって智子ちゃんと同棲したら毎日美味しいご飯が食べれるんだなーって思うと嬉しいなー。」

「何言ってるんですか先輩…」と続けようとしたら「『先輩』じゃなくて『青葉』呼びして?あと敬語もやめて今日だけは同棲。」と遮られてしまった。私は言い直すしか無かった。

「…青葉と同棲しても美味しいご飯が食べれるわけじゃない…よ。」

「嘘だね。お母さんが作ってたとしたら僕、もっと違うこと言ってたと思うよ。だって心配して欲しいもん。」

「え、それって。」と私が困惑していると青葉は少し考えている風にするとまた答えた。

「カロリーバーの話は嘘ってことだよね。でもそんくらい言わないと智子ちゃん心配してくれないじゃん。」

彼はそう言って少しむすっとしてしまったようだ。私は特に悪いことはしていないはずなのだが、謎の罪悪感が生まれてしまった。でも、それすら愛らしいと思ってしまっているところもある…絶対本人には言えないけど。

でも本人には伝わってしまったようで「何さ。」と言われてしまった。

「怒らないでね。その…可愛いなって。」

前置きは意味がなかったようで「言われても嬉しくない。」と言って彼は立ち上がると逆側…すなわち私のところにきて接吻をされた。

「僕が男だってこと忘れてないよね?『同棲』だし、何されたって文句言わないでね?」

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