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If you are…#20 Elder

…どうしてこうなった。

私の部屋の一角にある参考書の段ボール、その中には白地に茶虎が入った猫。そして秋くんがそれを撫でている。この猫を連れてきたのは他でもない彼であり、『うちじゃ飼えないから』という事らしい。

「秋くん。私、動物飼ったことないよ。」

「俺は…昔飼ってたか。確か普通に牛乳あげたらダメとかあったと思うからちょっと買ってくる。」

そう言って彼は飛び出してしまった。いつもはクールな彼がここまで行動的になることってまあない。もしかしたら意外と動物好きなのかもしれない。暫く私はワークを進めていたが、その手を止め猫に近づいた。

拾われたというのに毛並みはあまりボサボサじゃなくむしろ綺麗で、ちょっと垂れ目で眠そうにしている。

「本当、どっかの誰かさんとそっくり。」

つい呟いてしまったので今頃ビニール袋を引っ提げてくしゃみをしているかもしれない。

「お前さん、そうだな…『アキ』はどこで拾われてきたんだい?あの人そっくりだからびっくりしてしまったよ。」

もし彼が飼っていたなら『ペットは飼い主に似る』って冗談が言えたけど、飼ってすらいない猫が似るとは予想だにしなかった。

ガチャリと音を立ててドアが開いたのでそちらを見ると、(私がしゃがんでいたので)眼前にパンパンの袋が見えた。そこからは猫が描かれたパッケージが透けて見えた。

「ちょっと買いすぎたかもしんないけど足りなくなるよりはいいでしょ。」

彼は満員の袋を3つほど机に横付けた。そのうちの1つに手を突っ込むとトマトジュースと、隠れて何かは見えないが飲料の缶を出し、そのうちのトマトジュースをくれた。

「もうちょっと選択あったでしょ。」と少し文句を垂れつつ頂いた。甘くなくて美味しい。アキにかからないように蓋を閉めると、後ろから缶を開ける音とのどごしの音がした。しかし、好奇心に負けて振り返った私がバカだった。

何時の間にやら占拠されていた机の上に置かれていた缶の下の方にバッチリ『アルコール飲料』と書かれていたのだ。

「ちょっとごめん。」

「…どしたの?」と言う彼は既に目がいつも以上に眠そうだ。

「高校生ってお酒買っていい年齢だっけ。」

「確かに俺は高校生だけどさ、いつ『未成年』って言ったっけ?」

そんなことを言っている間にカードケースの中から保険証を出してきた。その中の生年月日の欄に『2000年』という記述が見えた。

━詰まるところ、私と違って彼はすでに大人だったのだ…色んな意味で。

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