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If you are…#6 Rob(智北・外垣)

「それで、話ってなんですか?」

秋くんが勉強机のキャスター付き椅子に座ると智北先輩に聞いた。秋くんが乗り気じゃないことなんて死んだ目とか無許可で椅子に座っちゃうところとかですでにわかるけど、それを見てなお秋くんに頼ろうとする先輩も先輩である。

「単刀直入に言うよ?横にいる彼女、俺に頂戴?」

「は⁈」と私たちはつい言ってしまった。でも言い訳させて欲しい、他人の彼女を横取りする人がいるだなんて予想だにしなかった。しかも先輩だし、あろうことか生徒会の人間である。そしてそのトチ狂った先輩は続ける。

「そりゃあタダで、とは言わないよ。それなりの報酬はこちらで用意するしできるだけ簡単な仕事にしたいと思っているよ。この間してもらった監査の腕をもう一度借りたいなあって思った次第だし。」

一瞬ポカンとしてしまったが、先輩が何を言いたいのかはわかった。生徒会の手伝いってことだ。私は急に肩の力が抜けてしまい、わかりにくいが秋もそういう状況らしい。さらに先輩は私たちの様子を見てプッと吹き出した。

「人の恋人とるような人間じゃないよ僕は。智子ちゃんは役員の者が案内するから続きはそっちで聞いて?で、秋くんにも手伝って欲しいことがあるからそれは僕から直接言おうかな。」

それだけ言い終わると私は役員の人に連れてかれた。

〜side change〜

智子が連れて行かれ、書記室には俺と智北先輩だけになった。腐女子が好きそうな展開かもしれないが、俺も先輩もそういう趣味はない…そもそも俺には智子という恋人がいる。

「それで、俺がやることってなんですか?」

僕が聞くと先輩は言ってきた。

「智子ちゃんと別れてほしい。」

さっきの冗談とは語を変えただけで言ってることは同じだ。ただ、いつもヘラヘラしている先輩の顔が本気─つまり冗談抜きの交渉ってところか。しかし、そんな一つや二つの返事で彼女をやすやすと渡す彼氏はいない。

「意味わかりません。俺も智子もお互いが好きだから恋人なんですけど。」

「関係ないよ。彼女が失恋に泣いたら僕に振り向いてくれるでしょ?」

こいつマジか、それが俺の率直な感想だ。そんな自分勝手で人の気持ちを考えていないやつなんか初めてあったんじゃないか。俺は「だから」と続けようと思ったが鉛筆で口を押さえられてしまった。

「やっぱりタダで、っていうのは無理だよね。それに物で釣れるような人間じゃないことくらいわかってるよ。ま、そうなる気はしてたから役員の子がうまいこと『仕事』してるんじゃないかな。頭のいい君なら何が言いたいのか、わかるんじゃないかな?」

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