If you are…#23 Staged
画像:つけめん様(https://seiga.nicovideo.jp/seiga/im10660754)
今日は八重先輩の家にお呼ばれ…と言いたいが、残念ながら先輩の事務所にお呼ばれした。
どうやら化粧室(トイレとかではなく本当に身だしなみのチェックをするところ)に通されたようで、ドレッサーが点在。ダンボールの中は衣服で溢れかえっていた。流石、大手芸能事務所である。
そんな中、ドアが開いてある女性が入ってきた。青い目をしたお人形のような人物、一言で言い表すならこうであろうか。生き人形は私の逆側に座るとポケットからカードケースを取り出し、その最も外側にあった名刺をローテーブルの上に置いてスライドした。
「聞いていると思うけど、私はここの事務所を統括しているの。」
そう言われて名刺に目を通すと、確かに『ワンインクCEO』というような肩書きがあった。しかし、そんなお偉いさんが何の用だろう。
「いつも吉野くんがお世話になってるみたいで。大丈夫?変なことされてない?」
「いつも優しくしてもらっています。」
「そう、なら良かった。」と彼女は笑った。
「…それで、本日は何用でしょうか?」
「そうねぇ…なんて言えばいいかな。先に言うとあなたにとってはいいことではない。でも吉野くんのためなの。もちろん事務所のためでもあるんだけど、それ以上に彼の未来を奪いかねないことだから。」
そのように前置きされ、更にこんなことを通告してきた。
「吉野くんと別れなさい。」
それはあまりにも唐突だった。これを突きつけられて『はい、そうですか。』と受け入れられる人は相当薄情なんじゃないか。
「…随分と唐突ですね。」としか返しようがない私に、彼女は更に現実を突きつける。
「本当だったら付き合っていたらもっと早くこういう話をしなきゃいけないし、ゴシップ誌とかに載らないように交渉するの。でも私はわざと話はしなかった上にゴシップ誌に何も言わなかったの。なんでかわかる?」
これまた唐突の質問に私は答えることができなかった。
「まあ、わかんなくて当然か。ぶっちゃけた話、あなたを利用したの。ゴシップが賑わってくれれば吉野くんに注目が集まる━やってることは炎上商法に近いのかしら。」
「え、それって…」
「あなたたちは商売道具でしかないってこと。」
彼女は淡々と言った。この人に人の心があるとはとても思えない。
「でもこの売り出し方にも限界が来ているの。このまま続けて彼の未来を閉ざすか、彼のために別れるか、きめるのはるか、決めるのはあなたよ。」
どうしてこんなことになってしまうのか。
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