透明なスギの木

そのスギの木は目に見えない

透明な樹液 透明な琥珀
透明な葉に 透明な樹皮
根までが透き通る
水晶より透明な木

聖夜に音もなく積もる雪だけが
その姿を見せてくれる たったひとつの薄衣
透明な針葉は夜に刺さり いつまでも抜けず
朝になっても凍ったまま 溶けず
胞子は大気を磨くように 鋭いまま風に乗り
海へと流れて ひっそりと雲にまぎれこむ

そしてあの白い薄衣に変わって
聖夜の森に帰ってくる
恐ろしく澄みきったスギの巨木に
きらめく雪が降り積もる

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