風にさらわれた置き手紙

風が吹いてきたのです
わたしの翼はゆっくりとひらきました

体が 大地をはなれてゆきました
見慣れた光景が 遠のいてゆきました
慣れ親しんできたものたちが
みんなが
こちらを見あげて 手を振っていました

体がほんとうに浮きあがって
風に乗るか反るかの刹那
心をよぎったのは
紙で薄く切ったような孤独でした

もう戻れない
そう思いました
風は決して 後ろに進みませんから
行き着くところまで
行ってみようと思います

さようなら
さようなら

決意にも覚悟にも
いまだ染まりきらない
やわらかな翼ですが

新たな愛を創り得たら
素晴らしいその世界から
きっと招待状を贈りますから

風の向こうで会いましょう

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