夜の鍵
夜のいちばん深いところにある
小さな小さな金の箱
こゆびほどの木の鍵で
懐かしい音をたてて開く
くりかえし見た夜明けの空
誰かが夜の底のどこかで
かすかな祈りを歌いながら
しずかに鍵をさしこんだ
夜の反対側では
誰かが秘密をそっととりだし
箱の中にきれいに詰めて
そっと鍵をかけている
鍵がどこかで開くたび
秘密は羽化して風になる
風は東の空へと翔ける
星のように見えなくなる
かすかな祈りに呼ばれるように
朝日がゆっくり昇ってくる
夜の底は暗いまま
金の箱が無数にきらめく
星空のような夜の底
秘密を守る深い闇
消えそうで消えない祈り
今日も誰かがひとりきり
夜の底へ潜ってゆく
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