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神奈川県の医師会休日診療所を拠点としたコロナ患者向けオンライン診療の紹介

ツインデミックによる医療逼迫の懸念とオンライン診療の広がり

こんにちは。事業連携推進室の稲生です。私の主な経歴は内科医で、現在も非常勤で診療を継続しています。メドレーではオンライン診療についての情報を医療現場や行政から集めながら、その適切な普及について、講演やセミナーを通して伝えてきました。今回は、神奈川県で実施されている新型コロナウイルス流行に伴うオンライン診療の取組みについて、ご紹介したいと思います。

新型コロナウイルスに加えたインフルエンザウイルスの流行、いわゆるツインデミックが懸念されるこの冬に向けて、昨年の秋口には厚生労働省から、重症化リスク等に応じた外来受診・療養への協力依頼が出されていました(※1)。メドレーのnoteでも、広報室から同時流行時のオンライン診療について紹介しています(※2)。

2023年1月25日現在、新型コロナウイルスの新規感染者や病床使用率は減少傾向にあるものの、死亡者数・救急搬送困難事案数は高い水準が続き、医療提供体制の確保は引き続き注視すべき状況となっています(※3)

2020年に始まった新型コロナウイルスの流行以降、発熱患者をまずオンラインで診療するという考え方は少しずつ広まっています。
メドレーのCLINICSオンライン診療で「発熱外来」を取り扱う医療機関数を見ても、2019年12月は0件、2020年12月と2022年12月を比較すると約9倍に増えています。個々の医療機関が、発熱患者に対してオンライン診療を実施することの必要性を感じていることが示唆されます。
しかし、発熱時のオンライン診療に対応する医療機関の数は、流行期の需要をカバーできるほど十分にあるとまでは言い難い状況でした。

参照:
※1 厚生労働省 新型コロナウイルス・季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応
※2 メドレー note コロナ×インフルの同時流行への準備~オンライン診療の発熱外来をうまく活用しよう~
※3 令和5年1月25日新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード「資料1」

神奈川県で行われている取り組みと診療の実際

神奈川県は、今冬のツインデミックを視野に外来の診療枠を確保するため、重症化リスクの低い発熱患者に対しては、積極的にオンライン診療の活用を勧めています。また、対応できる医療機関を増やすため、新型コロナウイルス感染症オンライン診療等環境整備費補助事業として、これからオンライン診療を始める医療機関へ補助金による支援も行っています。(※4)

さらに神奈川県と神奈川県医師会と同県郡市医師会の連携協力事業として、休日急患診療所を拠点とした「かながわコロナオンライン診療センター」を設置しました。
神奈川県で実施されたコンペの結果、メドレーは契約事業者として採択いただき、かながわコロナオンライン診療センターでは「CLINICSオンライン診療」が活用されています(※5)。

この取り組みの特徴は、地域の医師会所属医師が交代で休日診療所に行き、休日診療所からオンライン診療を実施することにあります。この仕組みにより、自院でオンライン診療をしていない医師も、新型コロナウイルス陽性者に対するオンライン診療を行うことができます。

本取り組みは、川崎から始まり、2023年1月30日現在、相模原、藤沢、横浜と4つの休日診療所で開設されており、新型コロナウイルス陽性と確定した患者さん向けにオンライン診療が実施されています。

※かながわコロナオンライン診療センターについてはこちらhttps://www.pref.kanagawa.jp/docs/ga4/covid19/telemed/search.html#link2

(2023.4.3.追記)
かながわコロナオンライン診療センターの取組は2023年3月31日を持って終了しています。

自宅で検査をして、新型コロナウイルス陽性となった場合、重症化リスクがない方は、陽性者登録のみ行い、診察を受けずに自宅で療養という選択を取る方もいると思います。
まだ明確なデータは出ていませんが、自宅での検査が可能となった今冬、診断確定時は様子をみていた方が、数日経っても改善せず、心配になってオンライン診療を希望するというパターンも比較的多いようです。オンライン診療による受診手段を持つことは、自宅療養中の不安を軽減する一つの要素になると思います。

また、本センター設置の趣旨には、今冬の診療体制の確保はもちろんのこと、今後、神奈川県で恒常的にオンライン診療を行う医療機関の拡大に繋げることもかかげられています。ここで初めてオンライン診療を経験した医師にとっては、自院で運用を始める一つのきっかけになるかもしれません。
実際にかながわコロナオンライン診療センターで初めてオンライン診療した医師からは「初めは緊張したが、やってみれば慣れるということが分かった。」「操作は思ったより簡単だった。」などの前向きなお言葉をいただいています。

神奈川県の取り組み以外にも、発熱患者さんに対してオンライン診療に取り組む医師複数名とお話しさせていただきましたが、「オンライン診療の一段階を踏むことで、結果的に来院いただくことになっても、クリニック側で感染対策のための準備ができる」「経過に心配がある人も、オンライン診療で再度診察できると分かると安心される」といった声はよく聞かれます。対面による検査と組み合わせて使ったり、診断確定後のフォローに使ったり、患者さんの状況や症状の強さにより、工夫しながら活用されています。

参照:
※4 新型コロナウイルス感染症対策ポータル
※5 2022.12.16 MEDLEY プレスリリース

新型コロナウイルス流行の先にあるオンライン診療

新型コロナウイルス流行下における医療逼迫回避のため、今や社会にとってオンライン診療は必要不可欠な選択肢となりました。ビデオ通話を用いた診療は、音声のみではわからない顔色や呼吸の状態も分かるので、電話診療と比較すると格段に情報量が増えます。
もちろん、情報が不十分で判断ができないとジャッジした場合は、速やかに対面診療を促すこともオンライン診療においては重要です。この点は診療を受ける患者さん側も、理解していただく必要があるところだと思います。

また、オンライン診療の活用場面は、今回取り上げた発熱患者への診療に限るものではありません。長期の通院が必要な慢性疾患の患者さんの負担軽減になったり、病院と診療所の連携、医療リソース不足が深刻化するへき地での診療など、これからさらに医療の質を改善させる可能性のあるものです。

今回の神奈川での取り組みが、他の地域やこれからの医療の選択肢としてつながっていくよう、メドレーとしても引き続き協力していきたいと考えています。