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【代表×事業部長インタビュー】パシフィックメディカルが電子カルテに取り組む理由と次の一手

中小病院向け電子カルテ「MALL」を提供するパシフィックメディカルは、2021年にメドレーグループに参画した後、急成長を遂げており、次の一手として大病院(急性期)向け電子カルテの開発も発表しています。
今回は代表取締役の小松社長とMALL事業の責任者を務める久間田さんに、MALL事業の現状と魅力についてインタビューしました。


病院向け電子カルテ市場の抱える課題

――まずはじめに、現在のパシフィックメディカルの状況について教えてください
小松:1997年に高知県宿毛市で「パシフィックシステム」として創業し、2021年にメドレーグループに参画した後、会社名を「パシフィックメディカル」と改め、ミッションも「医療を支える人が将来にわたって使い続けられるシステムを提供する」に改定しました。

医療従事者が効率よく働けること、多重投薬などの医療ミス防止に繋がること、救急時に助けられる命を増やすこと、平時においてもより質の高い医療・介護の提供が行えることなど、ITシステムで支援できることが多くあります。同時に、医療機関がITシステムを導入することは、地域社会の医療サービス向上につながります。パシフィックメディカルは、医療機関が低コストでより多くのことを実現できるよう支援するため、日々改善や創意工夫を続けてきています。

メドレーグループに参加してから3年が経過し、年間導入件数は約3倍、東京営業所は人員数が10倍。大阪にも営業所を新設し、高知には3つ目の拠点が新設されるなど、目覚ましい成長を遂げることができました。ここからまた、一段会社のフェーズを変えていくタイミングに来ているのではないかと考えています。

――今回お話を伺う、電子カルテ「MALL」を取り巻く状況について教えてください
久間田:企業向けのSaaSが、大企業・SBM・ロングテール向けの3つの市場に分かれるのと同様に、電子カルテにおいても大病院・中小病院・診療所向けといった区分があります。診療所はクラウド型の電子カルテが主流であり、メドレーの電子カルテ「CLINICS」が主戦場としている領域です。大病院は電子カルテ化が進んでいますが、中小病院は様々な要因があって電子カルテ化が進んでおらず、私たちはまずはそちらをメインターゲットとしてサービス展開を進めています。

――中小病院での電子カルテ導入率が低いのはなぜでしょうか
久間田:主に、価格面が折り合わないことです。前提として、病院向けのカルテは多機能かつ高機能です。そうなると、この領域のプレイヤーは何年間か電子カルテに携わってきた体力のある大企業に限られてきます。彼らはもともと大病院向けに製品を開発しており、それを中小病院向けに切り出して販売しているのですが、これが中小病院の求める費用感に合わないのが一番の要因と考えています。

近年では、そういった企業が大病院向けカルテを切り出した製品ではなく、中小病院専用の製品をつくりはじめており、価格レンジも下がってきてはいる状況です。しかし、導入サポート体制を外部委託して一次請け、二次請けなどが進むことで人件費がかさんだり、開発においてもソースコードを複数管理する必要があり、デバッグや機能アップデートに費用も時間もかかってしまう構造がゆえに、我々の考える適正価格まで落とし込むことは、まだ難しいのではないかと推測しています。

MALL事業部長 久間田

小松:保険診療をメインとする病院における売上は診療報酬として国によって定められ、人員数についても専門職の配置基準が決まっているなかで、どのように予算を配分し、投資するのかは各病院が判断しなければなりません。多くの病院において、電子カルテの利用は初期費用だけでも数千万〜数億円規模になるかなり大きな投資です。

かつては費用対効果が見えないとされてきましたが、現在は、医療の安全性向上のため、業務効率化のため、患者サービス向上のために電子カルテが導入されていることは当たり前の世界になりつつあります。電子カルテがないことを企業に例えると、貸与スマホがない、貸与PCがないという状況に近いのです。

「MALL」は低コスト・高カスタマイズ性で導入を伸ばす

――この市場のなかで、なぜ「MALL」はいま中小病院向けカルテの導入数を伸ばしてこれているのでしょうか
久間田:「MALL」は柔軟性と拡張性に優れたリーズナブルな電子カルテで、医師・看護師等の職種やユーザーごとに約3,000の設定項目を自由に選択することができる電子カルテです。

「医療機関ごとにソースコードを分岐した上でのカスタマイズ」ではなく、「ソースコードを統一した上でのカスタマイズ」で各種機能を実装しているので、開発コストを抑えることができています。また、導入サポート部隊が内製化されており、余計なマージンがかかりません。これが価格優位性の源泉になっています。

小松:高機能ならばコストはかかるものですから、高機能なものを安価で提供することには矛盾があります。しかし、これをどうにか実現したかった。
「MALL」はバージョンアップを重ねて、現在「MALL4」が提供されていますが、「MALL2」では顧客ごとにカスタマイズした16個ものソースコードがありました。スパゲティコードにもなってしまっており、見てとれないコストがかなりかかっている状況だったのです。

また、せっかくお客さまに提案してもらったよいビジネスプロセスを迅速に他の施設にも提供できたら、とも考えました。これらの反省を活かして考案したのが、優れたビジネスプロセスが全て一つのシステムに内包され、それがフィットする場合は設定で切り替えて利用することができるというコンセプトです。

同時に、要望を吸い上げる仕組みを整備して「標準化に資するか、医療安全に資するか、スピードに資するか、意思決定に資するか」の4つのフィルターを通したものを開発計画に乗せ、お客さまに届けていきました。その結果、従来のプレイヤーが提供する価格の2/3程度で、お客さまに納得いただける製品をつくり出すことができたのです。

久間田:現在は日々の問い合わせを集約することはもちろんのこと、ユーザー支援グループという契約済みの顧客と伴走する組織が病院のシステム委員会に同席して、生の声を拾い、ニーズの裏にある本質を見極めて対応しています。
ひとえに「病院」といっても、スポーツ整形なのか療養中心なのかによって使い方が全く異なるため、設定で各医療機関の使いやすいようにカスタマイズできることは非常に重要です。しかし、それぞれの医療機関からの集約された要望は全体に適用されていきますので、「MALL」を使い続けることにメリットがある、製品の成長をしっかり顧客に還元できる構造になっているんです。
新興プレイヤーの参入もありますが、我々が20年かけて積み上げてきたものには、なかなか追いつくのが難しいでしょう。

――近年はクラウドサービスが主流のなかで、「MALL」はオンプレミスのサービスです。病院向けの電子カルテはクラウド化されていかないのでしょうか
久間田:ビジネス的な要因と技術的な要因があります。まず、ビジネス要因として、サーバーを用意する必要がないので初期費用は抑えられたとしても、クラウドサーバーのランニング費用が膨大になり、費用を抑えたいというクラウドの本来の採用理由が叶えられなくなってしまうことがあげられます。
技術的な要因としては、データ量の大きさから必要とされるパフォーマンスがクラウドでは発揮できないことです。大量のデータを扱うと、クラウドに置いたデータベースを叩いて患者さんのカルテをひとつ開くのに10秒かかってしまう、といった状況が発生すると想定されます。それならば紙カルテのほうが早いのです。

病院では患者さんの命に関わる度合いが非常に高いため、スピーディーに確実に情報を届ける必要がありますから、適切な技術を適切に活用することが重要だと考えています。

小松:オンプレにはWEBページと比べてお客さまにリッチな操作画面を提供でき、安定性も高いというメリットもあります。
また、昨今問題になっているセキュリティの課題はハードウェアやネットワークに起因するもののため、直接的な関係はありません。オンプレ・クラウドいずれを選択しても同様のリスクに対して対処していく必要があるだけなのです。

代表取締役社長 小松

日本の医療を維持するために、急性期カルテの開発へ

――「MALL」は中小病院向けの電子カルテとして成長を遂げてきています。今後「大病院(=急性期)向け」の電子カルテの開発を始めることになった背景を教えてください
小松:少子高齢化が急速に進む今、日本の医療は"ダウンサイジング"しています。外来患者数は2020年で既にピークを迎え、入院患者数は2025年に頭打ちになると言われています。そのような中で、病床を削減したり、統廃合したりする医療機関も増えていっているのです。このままでは、各医療機関は電子カルテの運用・更新のコストに耐えられないのではと考えました。そこで、私たちが中小病院向けの領域で培ってきた、適正価格で高機能なものを提供するビジネスモデルを大病院に向けても提供するべきだと考えたのです。

久間田:先日伺った病院では、7年ごとに発生する電子カルテの更新費用が高額で「まるで、電子カルテのために働いているみたいだ」と嘆いている方がいました。確かに、電子カルテへの投資額が適正水準になれば医師や看護師を採用することができ、地域医療も病院の売上も維持することができるのです。

人件費は年々増加していき、施設の移転や修繕の費用もインフレによって高騰しています。その一方で、医療費(≒診療報酬)は全体でみると削減する方向で、売上を増加させるのはなかなか難しい構造となっています。
こうした課題に対し、「MALL」の低コスト・高カスタマイズ性・高い連動性を武器に、病院が適切な投資ができるように支援したいと強く実感しました。

――「大病院(急性期)向け」のカルテを開発・提供するうえでの課題や乗り越えなければならないハードルはあるのでしょうか
久間田:体制の強化が急務です。ただ新しいプロダクトの開発をするだけの話ではありません。急性期向けカルテには24時間・365日対応が求められます。これを現在の人員だけで行なうことは困難なため、アライアンスも必要になってきますし、大病院に向けた導入支援を担当する人員の増強も必須となるため、マネジメントをより強化する必要もあります。
また、拠点が増えると組織設計も新たに検討する必要も出てきますから、メンバーレイヤーからハイレイヤーまで今までと全くことなるケイパビリティを獲得していかなければなりません。

小松:開発が決定してから様々な調査を行って計画を立ててきていますが、急性期のカルテはどうあるべきか、一から考えていく必要があります。価格柔軟性やお客さまへの価値提供、それに対して限りあるリソースとスケジュールでどのように対応していくか、判断の連続です。

急性期の市場における電子カルテの普及率は約90%です。つまり、それらに対してリプレイスをかけていくことになりますから、低コストで高機能なカルテを提供し、確実に実績を積み重ねていく必要があります。しかし、費用に悩みを抱える医療機関は確実に存在します。プロダクト開発もセールスもマーケティングも全方位で工夫を重ね、地域の要である一次医療を守ることに本気で取り組んでいきます。

だからこそ、業界経験に関係なく、一から次の時代のカルテを共につくっていく仲間を歓迎したいです。組織に新しい息吹を再度入れるタイミングだと感じています。

――パシフィックメディカルに興味を持っていただいた方にメッセージをお願いします
久間田:パシフィックメディカルは、会社として成長フェーズにあります。ここ2〜3年でさらに二段階くらい変わるはずです。まず一段回目は、大病院(急性期)カルテの走り出しに向けて、どう構えていくのか。次に、数年経つと今度は顧客数が増えていきますから、それに耐えうる組織設計や業務設計を整えていく必要があるでしょう。敷居を取っ払って、組織や事業戦略といった上流工程から現場のオペレーションにまで関わることのできる面白いフェーズにあるのではないかと考えています。

小松:ポジションも機会も豊富にある環境で専門性をさらに高めることで、自分の成長が社会を変えることに繋がる環境があると思います。
そうやって業界を変えていく経験は確実に個人の資産として、今後のキャリアにも活きてくるはずです。自分の実力や経験を大いに活かして、医療という日本の大きく難しい社会課題を私たちと一緒に解いていきましょう。

ーありがとうございました!

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