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事業会社のデザイナーはどこまでデザインするの? を聞いてみた

こんにちは、メドレーで人材プラットフォーム本部を統括している石崎です。

メドレーのプロダクト開発チームは、基本的に少人数で1人ひとりの守備範囲が広いのですが、その中でもデザイナーは、1人ないしは数名でサービスやプロダクトのユーザー・カスタマー接点のほとんどを自ら手がけています。

インターネットサービスの事業会社において、デザイナーがもっとも希少というのはよくある状況だと思います。少人数であることは、サービス全体の統一感を保ちやすい反面、事業拡大によって目や手が行き届かなくなるリスクもあります。とくにサービスのデザインは、やろうと思えばどこまででも広さも深さも追求できてしまう。

そんな中、ジョブメドレーでは最近、公式 Instagram のデザインテンプレートを策定しました。その話を具体例として聞きつつ、「デザイナーの仕事ってなにをどこまでやってるの?そして、どこまでやるべきなんだろう?」という話をしたので紹介します。
話を聞いたのは、人材PF本部プロダクト開発室デザイナーGマネジャーの小山さんです。

制作会社と事業会社で異なる“デザインの視点”

──小山さんはメドレーに入社して何年目でしたっけ?

2017年に入社したので、今年で7年目ですね。
メドレーに来る前は制作会社で7年ほどUIデザインを担当していました。今のデザイン技術は大体その会社で学んだものです。

当時はイギリス人の上司からいろいろ教えを乞うていました

──制作会社からメドレーのような事業会社に転職したのはなぜ?

一つは、制作会社で同じような作業を繰り返している状態だったこと。手を動かす技術を高めるには適している環境なんですが、次のステップとして「自分の技術を違うフィールドで活かしたい」と思うようになったんです。

それに加えて、制作会社では納品がゴールだったので「納品物が世に出た先を追ってみたい」とも思いました。

──なるほど。メドレーに入社した当時のことは覚えてます?

印象に残っているのは「制作会社と事業会社ではデザインの視点が全然違う」と感じたことですね。制作会社では「このサイトのこの部分のデザインをお願いします」ってやり方だったのが、メドレーではサービスの全体感を見たうえでのデザインが求められるようになって。デザインの視点が短期から長期に変わったことを実感しました。

──制作会社だとデザインする対象範囲が依頼主から提示されることが一般的だけど、事業会社の中に入るとそれがないから最初は混乱しそうですね。

それは今でも難しさを感じますし、事業会社のデザイナーに求められることの特徴だなと思います。

例えばサイトの中の1ページだけ色を変えてみても、サイト全体で見たら違和感が出るようではダメなんですよね。見栄えが良いのはもちろん、その見栄えがロジックに沿っていて、先々のことを考えてユーザーが運用しやすいデザインであるべきなんです。

着想は薬局?インスタのテンプレができるまで

──ジョブメドレーのデザインGの最近の仕事の1つとして、Instagram のデザインテンプレートを作成していましたね。

はい、こんな感じのものを──。

ジョブメドレー公式Instagramのテンプレート

ジョブメドレーのアカウントでは、オウンドメディアである「なるほど!ジョブメドレー」に掲載されているノウハウや、介護に関するマンガを掲載しています。

例えばメーカーであれば、商材の写真を使って良い感じの投稿ができるんですが、ジョブメドレーはサービスの特性上、おしゃれな写真をあげにくいんですよね。なのでストック型の情報をメインに投稿しています。

──どんな経緯でこのテンプレを作ったんでしたっけ。

これまでは担当者ができる範囲で投稿画像を作っていたんですが、投稿する情報は転職に関することや医療福祉業界に関することなどさまざまで。バラエティが豊かなぶん、視覚的に統一感がないことが課題だったんです。

テンプレートができる前の投稿

フォロワーが7,000人を超え、多くの人の目に触れるようになったこともあり「ジョブメドレーらしいトーンで統一感を持たせたほうが良いのでは」ということで、テンプレート作成に至りました。

──どんなことを意識してデザインしたんですか?

第一に考えたのは、タイムラインや発見など、どの画面に出てきても「ジョブメドレーだ」とわかるようにすることです。「ジョブメドレーの」という文言を入れたり、ロゴを入れたりしました。

あとはコンテンツの自由度を下げないようにも配慮しました。テンプレを作ると、それに当てはめなきゃいけなくなるので自由度が下がってしまうことがありますが、今回は知識系と漫画それぞれにテンプレを設けることで、自由度を保ったまま視覚的な統一を図りました。

知識系のテンプレ(左)漫画のテンプレ(右)

──こういうデザインを作るときって、何かを参考にしたりするんですか?

いろんな物を見て参考にしますよ。どれを見てるのかって言われたら難しいんですが、日常で目に入る物を参考にすることが多いです。

今回のテンプレで言うと、薬局に行ったときに着想を得ました。

──薬局...? パッと見だとどこを参考にしたのかわからないですが……。

薬局にあるサプリメントとか漢方って、一つのメーカーで何十種類も展開してるじゃないですか。でもパッケージがシリーズ化されているので「このメーカーの商品だ」ってわかりますし、成分や薬名がタイトルのように訴求されていて分かりやすいですよね。なかには成分や薬名じゃなくて「〇〇が気になる方へ」って効能を大きく表示しているものもあって。

そんな感じでジョブメドレーの投稿であることを伝えつつ、用語解説やノウハウ紹介を表現できるテンプレを目指しました。

──テンプレの右上に数字があるので、ストック情報だということも一眼でわかりそうですね。

はい。あとは辞書も参考にしたんですよ。なので左下に少し解説するようなスペースがあったり、用語のルビを振る部分があったり。

「ジョブメドレーで投稿しているような豆知識って、日常の物に置き換えるとなんだろう」って考えて、辞書に辿り着いたんです。その“日常の物”が身近であればあるほど伝わりやすいデザインになると思っています。

現在ジョブメドレーの公式アカウントは毎週月曜日・水曜日・金曜日に更新しています。
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▶︎ジョブメドレー公式Instagram

マクロ・ミクロ全方位に取り組み、デザインガイドで補強する

──そうやっていろいろ考えた末に世の中に出したデザインに対して、影響・数字・意見が欲しくなりませんか?

なりますね。デザインを出してすぐに反応が返ってきたら嬉しいですけど、無いことがほとんどですし、数字が出るまでに時間がかかることが多いので悶々とすることはあります。

なので妻など身近な人に見せて感想をもらうこともありますし、自分で自分にフィードバックしています。最近なんかは、デザインを作ってる途中でもう一人の自分が「ここはこれで良いのか?」とか突っ込んでることが多いです(笑)。

作業中の小山さん
その横でツッコミを入れるもう一人の小山さん

──小山さんはこれまで、ジョブメドレーのデザインをたくさん担当されてきたと思いますが、とくに印象に残っている仕事って何でしょう。

どれかを取り上げるのは難しいですね。特定の仕事というより仕事の幅の広さが印象的です。例えば、昨日までUIデザインをしたかと思えば、今日は新聞広告をデザインしたり、明日は紙媒体の挨拶文の検討をしたり、ロゴのコンセプトを考えるなど。日毎にマクロとミクロの取り組みを交互に入れ替えたり、同時に対応することがあります。これは、両極端の仕事を同時期に行うことで、サービスのどんなタッチポイントでも同じ印象を作ることができると考えているからです。エネルギーを消費しがちですが必要なことかなと。

ただ一方で、こういうことを特定のメンバーが取り組み続けるのは属人化につながるため、継続的なサービス運用において好ましくありません。それを避ける方法の一つとして、ジョブメドレーにはデザインガイドがあります。デザインで目指す世界観や、目指すためのスキルやマインドセットを記したものです。得てしてこういうものは規則として運用されますが、ジョブメドレーではUIデザインやビジュアル表現で迷ったときの「ご案内」として位置付けています。ご案内には絶対避けてほしい表現も記載しており規則的で矛盾してますが、それ以外の縛りはなくて、関係者が納得できるものであれば、あるいは納得できなくとも他で補完できる状態にあれば自由としています。ですから、デザインガイドラインではなくデザインガイドなのです。

デザインガイドの方針の一部

まとめると、マクロとミクロのように全方位の取り組みをしつつ、中から壊れないようにデザインガイドで補強する仕組みを作りつつ……という、なんでもやるのが印象的であり、特徴でもあります。

品質へのこだわり方

──そういうマクロとミクロのように、サービス全体のデザインとなると、やろうと思えばどこまででもできてしまうじゃないですか。何でもやってしまうと「デザイナーじゃなくなっていく」とは思わない?

思わないですね……。事業を伸ばすためにデザインをやっていて、その事業のほとんどがデザインに関わるのであれば、所属しているデザイナーは全部やるべきじゃないかと理想の一つとして思っています。

──とはいえ、リソースのことも考えると一つひとつのデザインに全力を注ぎ続けるのは難しいですよね。

そうですね。偉そうに綺麗に作っている感をお話してしまいましたが、実情はまだまだ発展途上で、デザイナーとして課題に思うものもチラホラ残っています。でも、デザイナーが思う「外に出して良い品質」と、事業が思う「外に出して良い品質」って結構差があるというか──事業からすると「そこまで求めてない」ってことがあるじゃないですか。ですから、「サービスの価値が正しく届く品質か」を品質やリソースの線引きとしています。

例えばグラフィックを専門的にやっている人からすると、ジョブメドレーのグラフィックでもっと手を入れたほうが良いところってあると思うんです。でも「それはユーザーにとって必要なクオリティなのか」と言う基準で見極めている、そんな感じです。

一方で、目の前のユーザーばかり見るのではなく、その先を見据えて期待を超えるために品質重視の欲求も必要です。そこへの切り替えは今でも悩みます。

「つまらない」と思ったら、現状を自ら変える人でありたい

──デザインや仕事の考え方についていろいろ聞きましたが、小山さんはどんな人と一緒に働きたいと思いますか?

新しいことにアレルギーがない人ですかね。

何事にも好奇心を持ってやってみるとか、昨日やらなかったことを今日やってみるとか、現状がつまらないと思ったら自分で変えることができる人が良いですね。

──小山さん自身は、最近何か変えたんですか?

手を動かす時間を減らして、レビューやコンセプトメイキングの時間を増やしました。思考や技術の幅を広げたくて。手を動かす作業をつまらないと感じたことはありませんが、慣れた環境から離れることで違う表現が思い浮かぶようになるかなと。

あとは、ライトな取り組みとしては出社ルートを変えました。
今までは乃木坂駅で降りて会社まで歩いて来てたんですけど「つまらんな」と思って。一駅手前の表参道駅から歩くようにしたんです。

もちろん「へえ、今はこんなのあるんだ」って新しい発見もありましたけど、自分が上京したきっかけを思い出しました。

──小山さんは就職を機に上京したんでしたっけ。

そうなんです。大学の二回生くらいまでは「就職するのは地元の大阪でいいや」って思ってたんですけどね。あるとき、教授から表参道にある「プラダ・ビル」の存在を教えてもらったんです。そのとき空間デザインを専攻してまして、デザイナーになりたいなら表層的な意匠を志向するんじゃなくて、表層を支える構造体とそれらを作り出す文化の構造体に目を向けるべきだ! 東京にそれを綺麗なバランスでしかも商業建築として作り上げた珍しいビルがあるから見てこい! って言われて勧められたんです。「じゃあ一回見に行ってみるか!」ってなって。

プラダ・ビル

実際見に行って「確かに構造と意匠と文化がうまく融合した建築だなー、こういうのがあるんだったら、東京も良いな」って。それもあって上京を考えるようになったんですよ。出社ルートを変えたことによって、そのプラダ・ビルを10数年ぶりに見た訳です。

──じゃあプラダ・ビルがなかったら小山さんが東京に来ることも、メドレーに入社することもなかったかもしれないんですね。

他にも上京の大きな決め手はありましたが、そうですね。自分で現状を変えてみたことで、自分の初心を思い出しました。「ああ、自分はこういう、誰かの何かに繋がるものを作りたくて東京に来たんだったな」と。

好奇心を持って新しいことに取り組める方、私たちと一緒に働きませんか?メドレーでは各ポジションで新しいメンバーを募集しています。

小山さんが手がけたロゴリニューアルの記事も是非読んでみてください。

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