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『ファンダメンタルB2Bマーケティング〜B2Bマーケティングの原理原則とBuyer Enablement』 〜BACKSTAGE23での登壇より

2023年2月9日、「BACKSTAGE23」というイベントに登壇し、表題のテーマにて30分ほど話をしてきました。

登壇時に用いた資料は以下のとおりです。

今回話しをした内容は、『デジタル時代のB2Bマーケティング講座』で教えてることから抽出したものです。どういったコンセプトで行っている講座かはスライドの4pを御覧ください。

※ちなみに講座の募集は、以下のページから資料を申し込んだ方にだけお知らせしております。

話をした内容を箇条書きに書くと次のようになります。

  • B2CマーケティングとB2Bマーケティングの違い (p13-p16,p18-p20)

    • 色々と“違い”を挙げることはできるが、もっとも重要な点は、B2Cは「商品中心」の傾向があり、B2Bは「関係性中心」の傾向がある。

    • 買い手企業と売り手企業との間の協働性・共同性が、B2B取引の本質である。

    • しかし、単純にB2CとB2Bのマーケティング違いを、生活者(消費者)向けか、企業向けかで判断をしてはいけない。B2CでもB2Bマーケティングの考え方が適用できるものものある。例えば、購買の意思決定期間が長く、意思決定に関わる人が多数となる住宅の売買などは、B2Cだけれども、B2Bのマーケティングの方法論が効果あり。一方で、B2Bでも、カスタマイズ性の低い規格品(ねじなどの部品など)についてはB2Cのマーケティングの方法論が使える。

  • B2Bマーケティングに「定石」は成立しにくい (p17)

    • ひとくちに「B2B」といっても、商材の違いによって取引の頻度や形式が違う。

    • 例えば、「機械・設備」を他の製造業に売る事業の場合、購買頻度は低く、また顧客側の要望によるカスマイズ性は高く、受注生産の可能性が高い。

    • 一方で、「部品」や「原材料」(表にはないがオフィス用文具なども)などについては、購買頻度は高いが、カスタマイズ性は低い。

    • 概してカスタマイズ性の高い商材は、顧客からのインプットが多くなる。それがないと商材の納品はできない。

    • 「B2B」の取引は、扱っている商材によって様々な形態を取るため、簡単に「定石」や「法則」のようなもので語ることは不可能である。

  • B2Bにおける“需要”は、主に“derived demand 派生需要”(p21-26)

    • 一般的に、B2C=消費者市場においては、市場(ないしは消費者)を刺激することで“需要”が喚起されると信じられているきらいがある。そのため、マーケティングがプロモーションと同義に語られやすい。

    • 一方でB2Bの場合、その需要は“派生需要”と呼ばれるものが多くを占める。例えば、スマートフォンに使われている部品は、スマートフォンの需要が増加したことによって生まれてものではあるが、部品メーカーが自らそうした需要をおこしたわけではない。そのためB2B取引における需要は、取引先側の需要と密接に関係しているケースが多い。

      • ※この“需要”に対する考え方は、B2BとB2Cの違いの大きな部分であるため、B2CマーケターがB2Bマーケティングを行うときに躓きやすい部分である。

  • B2Bマーケティングの特徴と関連領域 (p27)

    • B2Bマーケティングは、B2B取引の「合目的性」、「継続性」、「相互依存性」、「組織性」という特徴のもとに行われる(→個人の購買ではないので、組織内での“失敗を恐れる”ために、合目的的で、(これまでの取引先との)継続的な取引が重視される。

    • また、B2Bマーケティングは、「サービスマーケティング」、「関係性マーケティング」、「営業研究」、「組織購買研究」といった領域が密接に関係している。

    • 今日は、特に「相互依存性」と「サービスマーケティング」の話に焦点を絞って話を続ける。

  • B2Bマーケティングは、「サービス」(無形財)の文脈でとらえるほうがよい (p29-p34)

    • 「サービス」という商材は、顧客側が商材の消費や活用に参加すること、知識を共有・提供することによって成立している。例えば、

      • 美容院・理容室に行った際、施術を受ける前に料金を払うことが決定している。

      • 座席に座ってふらふらすることなく、ちゃんと座って施術をしてもらいやすいようにしている(=消費・使用に参加している)

    • B2Bの取引の多くは、B2Cのように店頭にならんだ商品を顧客自ら手にとって選択をするわけではないし、またそこにB2B企業の担当者がその買い場にいるわけではない。B2Bの取引はお客さんのリクエストや知識の共有をしながらすすんでいく。これは「サービス」の交換・取引と同じものだと考えることができる。

  • B2Bマーケティングは、「サービス」(無形財)の文脈でとらえると、コンテンツや情報提供の重要性が理解できる (p35-p38)

    • 「無形財」のマーケティングについてセオドア・レヴィットは、有形財のように実際に手に取ることができないので、「代替品 surrogates」が必要となるとしている。

    • 「無形財」については、顧客がそれの購入を決定し、支払いをしたとしても、まだその財の入手はあとになる。

    • これは、旅行業の中で、旅行に実際に行く前に料金を払うということや、美容室で施術が終わる前、(実際に料金を払うのは店を出るときだとしても)すなわち店に入った時点で施術料を払うことが決定していることなどが例として挙げられる。旅行業では各種パンフレット、美容室ではヘアカタログや店の評判といったものが「代替品 surrogates」にあたり、それが「誓約」、「保証」や「信頼」として認識されるることで、「料金を支払うという約束」が成り立っている。

    • B2B取引においては、コンサルティングサービスのような無形財でなく有形財でもあっても、契約時(=支払いが決まった時期)には商材が実際に顧客の手のもとにないことが多い。「モノがないのに契約が成立する」というのは、取引の企業間での情報の共有や人的関係性が surrogates として機能しているからである。また、B2Bにおけるコンテンツマーケティングにおける「コンテンツ」とは、「自社は何を提供できるのか?」のナレッジや価値を示すためのものと位置づければ、それは surrogates と機能させるものとして考えるべきである。

  • Sales Enablement よりも、Buyer Enablement へ注目を (p39-p43)

    • “Sales Enablement”という言葉が一部で流行っているが、私はそれよりも、“Buyer Enablement"を重視すべきだと考えている。

    • “Sales Enablement”が、自社の営業組織・仕組みの改善によって、営業の効率化を図るというものなのに対し、“Buyer Enablement”とは、買い手に対して、購買に必要な重要な諸活動を支援するための情報を提供すること。つまり前者は“(多くの人員が)売れるようにする”という思考なのに対し、校舎は”お客さんが買いやすいように支援する”という思考である。

    • “Buyer Enablement"には、(1) 買い手(企業or担当者)の購買活動をスムーズにすることと、(2) 買い手企業の中の購買担当者を“Internal Sales”化すること(= 購買担当者に買い手企業の中で、代理的な“営業人材”となってもらうということ)という2つの側面がある。

    • 購買担当者(=contact)の Internal Sales 化は組織購買においては重要。担当者が買い手企業の社内で以下に他の社員に話をし、納得してもらうかといったプロセスが、組織購買の成否を決める。

    • そのために「顧客の理解」を行なうための作業が必要となる

  • 「顧客を理解」し、Buyer Enablement を実施可能にするためのツール群 (p44-p45)

    • 私の『デジタル時代のB2Bマーケティング講座』は、Buyer Enablement に焦点を当てているマーケティングと営業企画の講座である。その中で、実際の実務で課題として受講者に提供しているメソッド、ツール群がある。

    • 「B2B取引〜組織購買を前提としたペルソナの作成方法」、「カスタマージャーニーマップとアカウントジャーニーマップ」、「ディシジョンクライテリア分析」、「マーケティング〜営業をつなぐ数値管理表」など約10のメソッド、ツールを提供している。

    • 今日はこのうち、「B2B取引〜組織購買を前提としたペルソナの作成方法」、「カスタマージャーニーマップとアカウントジャーニーマップ」、「ディシジョンクライテリア分析」を簡単に紹介する。

  • 「B2B取引〜組織購買を前提としたペルソナの作成方法」(p46-p48)

    • 多くのペルソナ作成に関する記事などを読むと、B2BとB2Cとでの違いを明確にしていない。

    • B2Bにおいてペルソナを作成するのであれば、メインの購買担当者とその周辺のDMU (Decision Making Unit)も描く必要がある。

    • 次にそのDMUのそれぞれの想定される影響度を描く。

    • そして、影響度の高い順にカスタマージャーニーマップを描く候補とする。

  • 「カスタマージャーニーマップとアカウントジャーニーマップ」(p49-p52)

    • 私の寺子屋(講座)では、「カスタマージャーニーマップ」「アカウントジャーニーマップ」という二種類のジャーニーマップを描くことを教えている。

    • 「アカウントジャーニーマップ」とは、組織購買のプロセスをマップ化したものであり、「カスタマージャーニーマップ」は、その組織購買の中で重要度の高い複数のペルソナについてそれぞれ描いたものである。これらの組み合わせで、組織購買の全体構造を仮説だてることが可能となる。

    • また、たまに「カスタマージャーニーマップなどは役に立たない」という話が聞かれるが、それはジャーニーマップの意味するところを理解しておらず、それによって施策をすすめることができないためである。しかしジャーニーマップは、買い手側の購買プロセスをステージとして仮説立てるのに非常に有効なツールなのであり、マーケティングや営業の活動を【買い手のステージ移動を促すため】のものとして利用するためのものである。そのため私が推奨しているジャーニーマップには、最下部に【買い手が次のステージに移るために必要な要件はなにか?】という項目を設けており、その要件に対して各種施策を実施していくこととしている。

  • 「ディシジョンクライテリアの分析」(p53-p54)

    • 顧客はいったいどういう要素によって、購買を決定するのか?を明らかにするのが、ディシジョンクライテリア(DC)の分析である。

    • 購買決定の要因が一つであることはまずない。複数の購買決定要因が存在する。

    • またその複数の購買決定要因はそれぞれに“重み”がある。

    • “重み(重要度)”の低い要因をベネフィットして打ち出したところで、買い手企業にとっては価値を感じない。そうしたミスを防ぐためにもディシジョンクライテリア分析が必要となる。

    • また、競合他社と自社との比較においても、顧客の目線にたってディシジョンクライテリアを分析することは活用できる。

  • 「営業とマーケティングの確執問題」と、「日本のB2B企業はマーケティングに遅れている」「日本のB2B企業にマーケティング機能はなかった」という言説は本当か? (p55-p62)

    • 上記のような発言は、B2Bマーケティング業界でよく聞かれるが、実際のところはどうだろうか?

    • Kotler は 2006年に共著論文として、「マーケティングとセールスの戦争を終わらせよう」というものを書いている。この文章とそれに続く記事の中で、マーケティングとセールスの確執を乗り越えるためには分業化と役割分担以上に、両者の統合 integration が重要であると示唆している。

    • 一方で日本における「営業研究」において、日本における「営業」と英語における「sales」は違うものであるという分析がある。「sales」は「marketing」との分業がなされている職種であり、「営業」には顧客の関係性の維持etcといった(欧米のmarketingが行なうような)マーケティング的な機能をも含むとしている。

    • 確かに日本のB2B企業では、「営業」の部署の中に「営業企画」や「営業推進」という部署も存在し、そもそも欧米の sales と marketing のような別部署としての“分業”がなされていないケースも多々見られる。こういう事実を理解すると、Kotlerがいうところの「sales」と「marketing」の統合 integration というのは、日本企業では“そもそも”実現していると考えられる。ただし、「営業支援」という側面が強く、プロダクトのマーケティングetcといった、「marketing」がもっているマーケティングの機能は実現していない場合も多い。そう考えると、日本のB2B企業においては、営業部署における営業企画部署が、より拡いマーケティング領域まで手掛けるようになる方が、「日本のB2B企業にはマーケティングがない」という話のもとに「マーケティング部」を作るよりも、筋がいいかもしれない。

以上。

上記以上の話を聞いてもっと理解したい人、課題やメソッド・ツールをこなして実務に活かしたい方は、以下への登録をぜひ行って、ぜひ講座にご参加ください。



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