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どーでもえーだらーぼっちの 話

今は昔
あるところに
どーでもえーだらーぼっち という
山のように大きな 女の子がいました。

女の子は ひろい海の まんなかで生まれました。
あたりを見まわしても 陸地らしきものは何も見当たらなかったので
おひさまの出てくる方へ 歩いてみることにしました。

イルカの群れに会ったときは
一緒に行こうよ と誘われて ちょっと足を止めました。
イルカとうたうのは 楽しいですものね
だけど イルカのように上手には
泳げないので やめました。

足を止めて 休んでいると
うみねこたちが
島と間違えて群がってくるので
またすぐに 歩き出さなければ なりません。

女の子は 歩いて 歩いて 歩き続けました。

嵐の夜は 流されました。
海が荒れるのに 身をまかせて
流れに流され ただ漂い

波がしずまると 身をおこし
女の子は また 歩き続けました。

そしてあるとき
女の子は
ほとんど倒れそうないきおいで
陸地に たどり着き

重たいからだを はいつくばって
丘のひろいところまで 出ると

ごろんと横になったら 
あっという間に 眠りに落ちて
今度は ただひたすらに
眠りに 眠り続けました。

あるとき 目を覚ますと
あちらのかなたで 空が燃えているようでした。

女の子は おひさまが沈んでいくのを
ずっと 眺めていました。
胸が熱くなって 目から涙がこぼれ落ちました。
はじめてのことです。

しばしして また 眠りに落ちました。

あるとき 目を覚ますと
星たちが集まって ダンスパーティをしていました。

星たちが こんなにも自由に楽しく
うたったり おどったりしているのを見るのは
はじめてのことでした。

女の子は 空が明るくなって 
星たちが去ってゆくまで
飽きることなく 眺めていました。

そして また 眠りに落ちました。

そして あるとき 目を覚ますと
女の子の ふもとには 
小さな人びとたちが 村をつくり
あっちへこっちへ 
いそがしそうに 働いていました。

女の子は 
小さな人びとたちが あっちへこっちへ
いそがしそうに 働くのを
おもしろがって眺めていました。

どーでもえーだらーん
どーでもえーだらーだらーん

小さな人びとの やることなすこと
ほとんどが
女の子にとっては
どうでもいいことばかりでしたから
おもしろがって うたうのです。

どーでもえーだらーん
どーでもえーだらーだらーん

女の子がうたうと
小さな人びとは いそがしい足を止めて
その声に 耳を傾けました。

いつしか 女の子は 
小さな人びとたちから
どーでもえーだらーぼっち
と 呼ばれるようになりました。

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あるとき
村から ひとりの男がやってきて
女の子に登り始めました。

小さな人びとたちは 
大きな女の子を おそれてもいたので
そんなことは
はじめてのことでした。

男は 頂きに立つと 
飛んだり跳ねたりして よろこびました。

それから 持ってきた道具で
長さを測ったり しるしを付けたり
すみずみを調べていきました。

女の子は
はじめはおもしろがって
男のするのを眺めていたのが
そのうちいよいよ 
くすぐったくなって
大きな声をあげて笑いました。

これもまた はじめてのことです。

日が暮れると
男は 村へと帰っていきました。


夜がきて 
女の子は 星空の下 
ひとりぼっち。

星たちのダンスよりも
今日は 
村の灯りが 気になるぼっち。

どーでもえーだらーぼっちは
もう
どーでもえー こと
ばかりでは なくなりました。

夜が更けて
雲が月の光をさえぎり
あたりがまっくらになったとき

女の子のからだにつけられた
しるし の ひとつひとつ が 光り出し
あっという間に
あたりは 
まばゆい光に包まれました。

その光のかたまりが
一段と濃くなった
その瞬間 
それらは
無数のちいさな光の虫となって
あちらこちらへと ちりぢりになっていきました。

そして また
あたりはまっくらになりました。

まっくらやみの ただなかで
女の子のからだにつけられた
しるし の ひとつひとつ から
草の芽が 吹き出し 
蔓を 伸ばし
あっという間に
女の子のからだを 覆ってゆくのを
見ている者は 誰もいません。

夜が明けて
あかつきが あたりを照らし出すと
そこに 女の子の姿は ありませんでした。

かわりに 
からだ全体を緑に包まれた
どーでもえーだらー山 が ありました。

どーでもえーだらーん
どーでもえーだらーだらーん

小さな人びとたちは
今でも
あのうたが聴こえる気がして
そんなときは
いそがしい足を ふと 止めるのでした。

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そして あるとき
どーでもえーだらー山から
ひとりの女が降りてきて
あの男と出会うと たちまち恋をして
たくさんの子どもを産み落とした
と いうのは 
また別の話。

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