目的別 システム構築のポイント④

今回は「患者満足度の向上」にポイントを置いたシステム構築のポイントです。

■入退院支援業務における患者満足度向上のポイント

先日、知人のご家族が入院したエピソードを聞く機会がありました。
その方は入院した病院で「あなたは○日までしか入院できません。次の病院はご家族に探してもらってください。」と言われて、転院先を探すのが大変だったとのことです。
このようなエピソードの流布が、その医療機関への満足度低下や地域全体における信頼度低下につながることは想像に難くありません。

現在の診療報酬の仕組み上、急性期病院はどんどん平均在院日数を減らしていかなければ生き残れません。なので、そのようなエピソードを聞いても、むべなるかなと思ってしまいますが、もちろん個別の患者さんには関係のないことです。

多くの場合、入院加療の一番の目的は、治療を受けて症状を改善させることですが、その根底には必ず「安心したい」「不安になりたくない」という気持ちがあります。この気持ちをきちんと汲み取らなければ、患者満足度は低下してしまいます。

入退院支援業務は、まさしくその「安心したい」「不安感をできるだけ取り除いてほしい」という感情に直接アプローチし、安心感を与えることができる業務ではないかと感じています。

例えば、入院前の説明。算定要件には以下のことが記されています。


(20) 「注7」に規定する入院時支援加算を算定するに当たっては、入院の決まった患者に 対し、入院中の治療や入院生活に係る計画に備え、入院前に以下のアからクまで(イについては、患者が要介護又は要支援状態の場合のみ)を実施し、その内容を踏まえ、入院中の看護や栄養管理等に係る療養支援の計画を立て、患者及び入院予定先の病棟職員 と共有した場合に算定する。入院前にアからク(イについては、患者が要介護又は要支 援状態の場合のみ)までを全て実施して療養支援の計画書(以下「療養支援計画書」という。)を作成した場合は入院時支援加算1を、患者の病態等によりアからクまでの全 ては実施できず、ア、イ及びク(イについては、患者が要介護又は要支援状態の場合のみ)を含む一部の項目を実施して療養支援計画書を作成した場合は、入院時支援加算2 を算定する。
ア  身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握
イ  入院前に利用していた介護サービス又は福祉サービスの把握
ウ  褥瘡に関する危険因子の評価
エ  栄養状態の評価
オ  服薬中の薬剤の確認
カ  退院困難な要因の有無の評価
キ  入院中に行われる治療・検査の説明
ク  入院生活の説明
(21) 「注7」に規定する入院時支援加算を算定するに当たって、作成した療養支援計画書 を、患者の入院前に入院予定先の病棟職員に共有すること。また、当該計画書について は、入院前又は入院日に患者又はその家族等に説明を行い交付するとともに、診療録に添付又は記載すること。なお、第1章第2部の通則7の規定に基づき作成する入院診療 計画書等をもって、当該計画書としても差し支えない。

上記は、入退院支援業務において、入院前の説明を行ったときに算定できる「入院時支援加算」の算定要件です。入院前の患者の状況や、本人・家族がそれぞれ不安に思っていることをヒアリングし、入院後にどのような支援を行うか予め文書により説明するとともに、入院を予定している病棟職員と共有すること、と記載されています。
もし、これがきちんと行われていれば、患者さん本人やご家族は安心感を持って入院してもらえるのではないでしょうか?

また、入院後は退院支援計画書を作成し、退院についてや退院後に見通しについて早期に患者さんおよびそのご家族に説明することになっています。

(6) 退院支援計画については、文書で患者又は家族に説明を行い、交付するとともに、そ の内容を診療録等に添付又は記載する。また、当該計画に基づき、患者又は家族に退院後の療養上必要な事項について説明するとともに、必要に応じて退院・転院後の療養生 活を担う保険医療機関等との連絡や調整、介護サービス又は障害福祉サービス、地域相談支援若しくは障害児通所支援の導入に係る支援を行う。なお、当該計画を患者又は家族に交付した後、計画内容が変更となった場合は、患者又は家族に説明を行い、必要時、 変更となった計画を交付する。

入退院支援業務の運用構築を行う際は、どの病院も上記の要件を忠実に守っていると思われます。しかし、必要な要件を満たそうとするあまり、本当に必要な患者さん本人または家族への説明や面談の時間をとることが困難になってしまっている状況がしばしば見受けられます。

入退院支援業務において、どのようなタイミングで患者さんやそのご家族と面談するか、面談ができない場合はどうするか、誰がその業務をするのか、やったかどうかをどのように確認するか、ということを最初にしっかり決めておくことで、患者さんやご家族の信頼を維持できるのではないかと考えます。

もちろん、「理想はそうだけど、現実は他の業務に忙殺されて、気が付いたら一日が終わってしまっている。」ということもあるでしょう。
その場合は「目的別 システム構築のポイント③」で説明したような、システム化なども取り入れるべきです。せっかく素晴らしい退院調整を行っていても、それをきちんと患者さんやご家族に説明できていなければ、患者満足度には繋がりません。文書を作成する手間やカルテに記録する手間などはできるだけ減らし、患者さんやご家族と言葉を交わす時間を増やすようにしましょう。

■不安解消のための運用事例

私が担当した医療機関の中で、患者満足度の向上につながっていそうだなと感じる運用を二つご紹介します。

①退院後のフォロー業務
入退院支援を行った患者さんを、退院後もフォローし続けている病院があります。退院後フォローの内容は病院により様々ですが、外来看護師等と共同して下記のような業務に取り組んでおられました。
・退院後訪問
・患者及び家族の面談
・医療処置の手順等に関するフォロー
・訪問看護ステーションへの引継ぎ
自宅退院となった後の、医療処置の手順確認や、家族介護の相談などに丁寧に対応することで、患者さんやご家族は「追い出された」と感じることなく療養をできるのではと感じました。

②退院調整結果の文書作成と説明
退院先が決定した場合に、決定した退院先と、退院予定日、誰が何時に迎えにくるか、移動の際に必要な処置(点滴や酸素吸入など)を患者向けに記載した紙を患者に渡したり、忘れないようにベッドサイドに貼ってあげている病院がありました。高齢の患者さんなど、記憶に不安がある場合はこのような文書があると患者さんもご家族も安心できそうです。

他にも、介護支援等連携指導や退院時共同指導を推進し、地域医療全体で患者を見守っていることをしっかり認識してもらうことが、患者さんやご家族の不安を解消するための大事な取り組みだと思います。

■まとめ

患者満足度向上のための入退院支援業務構築は、以下のポイントをおさえましょう。

・入退院支援業務担当者が患者や患者家族と会話できる時間を多く設けられるよう、業務の優先度を見直す。
・退院調整の進捗等はきちんと患者や患者家族に報告する。
・患者や患者家族が安心して療養生活を続けられるよう、不安感を払しょくする工夫をする。


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