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『IVRのすべて』

 カレーライスと炒飯とカツ丼を注文し,カレーライスと炒飯とカツ丼が出てきて多すぎると怒る客はいません。客の望んだものだからです。ソースカツ丼派だった場合は考慮しないものとします。

 同様の論法で,IVRに関する現時点でのあれやこれを漏らさず全部盛った本をお願いしますと依頼申し上げ,注文通りに全部盛っていただいた本ができました。本書『IVRのすべて』誕生の縁起となります。

刊行に至るまで

 弊社では過去に『改訂版IVR 手技,合併症とその対策』という書籍を刊行し好評をいただいていました。

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 しかしいかんせん2005年発行の書籍です。治療法や器具はもとより,IVRの適応となる疾患や,どの科の医師が手技を行うのかも現在の状況とは大きく異なっていました。

 そこで『改訂版IVR 手技,合併症とその対策』を編集いただいた石橋忠司先生に「今,IVRの教科書を作るのであればどなたに差配を振るっていただくのがよいでしょうか」と相談させていただいたところ,「間違いない」とご推薦いただいたのが吉川公彦先生であり,その吉川先生より「志を共にしたい」と挙げていただいたのが荒井保明先生でした。2019年の2月のことです。世間ははやぶさ2のりゅうぐうタッチダウン成功を報じていました。うわ懐かしい。ちなみに本書刊行より先にはやぶさ2が帰還しています。オカエリナサイ。

必要なら全部載せる

 さて,吉川先生,荒井先生,そしてご協力をお願いすることとなった田中利洋先生,市橋成夫先生も快くお引き受けいただき,現時点でのIVRの知見を結集して 向こう10年戦える教科書を作るぞ と編集部ともども気炎を上げてのスタートではありましたが,この時点で厚さ3cmに迫るボリューム満点の仕上がりにまでなることを予見していたわけではありませんでした。 

 なにしろ「すべて」です。そう名乗ってしまった以上,可能な限りのIVRの情報をかき集め掲載したいとお願いし,先生方は応えてくださいました。しかし練れば練るほど,読み返せば読み返すほど「あれも載せたい」「これは載せねば」は増えていきます。

 打ち合わせのたびにどんどん縦に伸びゆく項目一覧,横に肥えゆく製作工程。しかし確かにそれは必要な増量でした。場所前の力士みたいな言葉が飛び出てきてしまいましたが,例えば出血に対する塞栓術は予定の倍以上に増えましたが,今現在IVRの主戦場ともいえるこのブロックは手厚くしてしすぎということはありません。研究報告も盛んな泌尿生殖器系の章も必要なものは全部載せていただきました。そう,この「必要なら全部載せる」が本書の根底にある精神なのです。余計な物など無いよね。

 「あ,これ入稿の前月に溺れるやつだな」と内心の確信を深めつつ(実際は入稿当月も溺れた),600ページ超のカロリーモンスターはこうしてすくすく育っていきました。

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 こちらをご覧ください↑。ふてぶてしくも放射線科用ロッカーの一角を専有するのは本書の初校ゲラと著者校です。初校と著者校でご覧の有様なのですが,本書は四校まで取りました。当然ロッカーは「ごはん大盛りを売りにしている弁当屋でもここまでは詰めない」といった具合になっており,収納スペースも狭ければ当職の肩身も狭いとなっております。だが当職は謝らない。いえ,すみません。年末までにはもう少しなんとかします。

監修作業

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 そしてこちら。深まりゆくこの秋に旅行の計画があるわけではもちろんなく,最終監修をいただくために奈良県立医科大学に乗り込んだ際にゲラ搬送用に使用されたスーツケースです。なんならこれに収まらない資料やPCが鞄1つぶんありました。

 ご用意いただいた部屋にスーツケースを持ち込んできた当職をみて,吉川先生や田中先生はなんでこいつは監修作業にスーツケースを引きずってきているんだと思われたことでしょうし,当職もなんで監修作業にスーツケースを引きずってくる必要があるんだと当惑していました。その節は本当にお世話になりました。日付け変わっても終わらないんじゃないかと思った。

厚盛!

 長々とボリュームについての話ばかりしてきてしまいましたが,こうした「必要なら全部載せる」「1つも手放さない」「大きいことはいいことだ」の精神によって本書に確固とした立ち姿が宿ったのではないかと思っております。

 昨今,書籍に限らないことですが,スリム,スマート,スタイリッシュ,より手軽で,使いやすく,かゆいところをピンポイントをかきにいくようなデザインが好まれています。当職もそうしたものを愛用していますし,同じメソッドの書籍を作ってもいます。しかし,その対極,万策尽きた際にも頼れる知見の砦,書架の最下段に堂々収まるオックスフォード英語辞典のような本があったらいい,あってほしい,という願いの先に本書は誕生しました。

 IVR版OEDを掲げられるほど当職の面の皮が厚いわけではありませんが,そのくらいの心意気で先生方にご編集・ご執筆いただいたことは間違いありません。IVRを始めるとき,迷ったとき,確かめたいとき,ぜひハイカロリー重量級の本書にどすこいと当たってみていただけましたら幸いです。

(本書編集中に腹の皮は厚くなった担当Kより)

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IVRのすべて


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