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【第11回】Complex TKAに対する考え方-2

阪和第二泉北病院 阪和人工関節センター 総長
格谷義徳 かどや よしのり

Zonal Fixationの考え方

最初にインプラントの骨への固定性について考えてみよう。Zonal Fixationとは2015年に提唱された比較的新しい概念で,再置換術での固定部位を

 Zone 1:Joint Surface(Epiphysis);関節表面
 Zone 2:Metaphysis;骨幹端
 Zone 3:Diaphysis;骨幹

の3つのZoneに分け,そのうち少なくとも2つのZoneで固定性を獲得する事を推奨した¹⁾ ものである(図1)。

判りやすく実用的なので広く浸透してきているが,つきつめれば“骨幹端部で固定性を獲得する事が重要だ”というメッセージである。もともと骨表面(Zone 1)で固定力が得られなければ,ステムを使って骨幹部固定(Zone 3)を追加するのは常套手段であった。そこに固定部位として骨幹端部(Zone 2)を確保しておけば,複数箇所での固定が確実に得られるだろうという理屈である。骨幹端部固定のための方策(ConeやSleeve)の実用化が前提になっているので,ある意味後付けの理論だとも言える。とは言え,問題点を明確にした上で具体的な方策を示しているし,何よりメッセージが明確なので臨床的な価値は高い(名前もcatchyで格好良い)。

旧来のCCK,LCCKシリーズでは,

● ステムをプレスフィットするのかセメント固定するのかが曖昧
● 骨幹端部での固定性を得る有効な方策がない

等の問題点があった。だからステムを追加したとしても,全体としての固定力が十分ではなく,再々置換に至る症例が稀にではあるが存在した(症例写真1)。その他,再々置換には至らないものの,広範囲RLLが出現する症例もあった。これは筆者に限った経験ではなく,“LCCKでステムを使っても,弛んだりRLLが出たりする”とか“骨幹端部にドリリング等加えて,セメントを圧入しないとRLLが出やすい”というのは業界人? の間でよく知られた事実であった。

そんな中あまり注目されて来なかった(無視されてきた)骨幹端部(Zone 2)に着目して,複数Zoneで固定性を確実に得ようというのがZonal Fixationの肝だといえる。骨幹端部での固定には,関節面に近いのでjoint lineの維持や,回旋位置の決定が容易であると言う利点もある。もともとはRevision症例を念頭に提唱されたものだが,当然Complex Primary TKAでも応用可能である。

では、ここからPCCKで,Zonal Fixationの実現のためにどんな工夫,改良がされているかをZone別に順に見ていくことにしよう。

Zone 1:Joint Surface(Epiphysis);関節表面

難治症例や再置換では,最初のステップとして基準面となる脛骨関節面を再建することが必要(必須)となる。

PCCKの脛骨トレイの特徴としては,

● 解剖学的な非対称形状
● 二種類(3及び6mm)のステムオフセット

を持つ事により,高い被覆率と適正な回旋位置での設置の両立が可能となっている(図2)。また骨欠損に対しては、5/10/15mm­厚の金属ブロックも準備されている。

大体腿骨側についても3及び6mmのオフセットステムに加え,後顆の厚みを3 mm増加させたPlusサイズがラインアップされ(図3),再置換症例で大きくなりがちな屈曲ギャップの調整に対応している。


文献
1. R. Morgan-Jones, S. I. S. Oussedik, H. Graichen, F. S. Haddad. Zonal fixation in revision total knee arthroplasty. Bone Joint J 2015;97-B:147–9.

(つづく)


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