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ジストニアとジスキネジアって何が違うの?

神経内科の勉強をしているとジストニアジスキネジアが出てきますよね。どちらも似た名前・錐体外路障害なのでこんがらがっている人も多いのではないでしょうか。そこで、今回は違いをご紹介します。


ジストニアとは?

ジストニア(dystonia)とは筋緊張(tonia≒トーヌスのほうが馴染み深いですね)の障害です。「反復性であることが多い異常な運動,姿勢,またはその両者を生じさせる持続的あるいは間欠的な筋収縮を特徴とする運動障害である」と定義されています。要するに運動障害の中の1つ、筋緊張の障害なんですね。

四肢遠位部優位にみられる持続時間の長い、 肢をねじる運動で、一つの肢位がしばらく持続した後、次の肢位にゆっくりと変化するようにみえる、随意的には真似しがたい不規則な運動です。

たとえば、Parkinson病の鉛管現象(腕が緊張して鉛のようになる)や書痙(書字の際に手が緊張して書けない)、痙性斜頸(頸部の筋肉が緊張して首が傾く)などが代表的ですね。

ジスキネジアとは?

ジスキネジア(dyskinesia)とは、舞踏運動,ジストニア,振戦,バリズム,ア テトーゼ,チック,ミオクローヌスなどが一つあるいは複数の組み合わせで起こる運動の総称です。実は、ジストニアはジスキネジアの構成要素の1つなんですね。

文字通り運動(kinesia≒キネティクスの障害です。自分では止めらない・または止めてもすぐに出現する定型的なパターンを認めない異常運動を示します。

たとえば、口をもぐもぐ動かす、舌を左右に揺らす、歯を食いしばる、目が閉じられない、手足が勝手に小刻みに動く、手に力が入るなど、本人に動かそうという意思がないにもかかわらず筋肉の収縮が生じて不自然で不規則な運動がみられます。

ジストニア・ジスキネジアの病態-基底核ネットワーク

突然ですが、普通の人は常に動き続けませんよね(寝ていても動き続ける人は居ません)。でも動こうとすれば、すんなり動けます。不思議ですよね。

これらは大脳基底核が、通常状態で運動野を抑制して動かないようにしているからです。デフォルトが抑制状態なんですね。

また、運動をなめらかに行うのに、筋緊張を上手く入れたり抜いたりしますよね。テニスやゴルフをやっている人では、インパクトの瞬間に緊張、その後脱力して振り抜くなどイメージしやすいと思います。実は、これらは大脳基底核が動きをなめらかになるように設計してくれているんです。

運動の”なめらかさ”は大脳基底核(黒質・被殻・淡蒼球・視床下核)と視床が調節しています。運動前野・補足野から「運動したい!(ex.歩きたい!)」という情報を大脳基底核が受け取り、「ここと筋肉は力は入れてor抜いて!」となめらかさを調節して、計画案を視床に提出します。

視床が計画をチェックして、問題なければ再び運動前野・補足野に教えてあげます。要するに、どこに力をいれればいいか細かく指示してくれるのですね。

どこに力を入れればいいか教えてくれる経路は大脳基底核直接路といいます。
逆に、「この筋肉は力を抜いて!」と抑制をかけるのは大脳基底核間接路です。

もう少し細かく話をすると、予め「歩く」際には足の筋肉を主に使えばいいと頭ではわかりますが、なぜ「歩く」際に足以外の筋肉は大きく動かないように指示できているのでしょう

実は、大脳基底核ハイパー直接路という経路がこの作業を一番初めにしてくれています。明らかに動きに要らない部分の筋肉については「指示出し不要で抑制しときまーす!」と仕分けしてくれているんです!

まとめると、

「歩きたい!」→ハイパー直接路で明らかに要らない筋肉は大まかに抑制→直接路と間接路で力を入れるところ・入れないところに指示→計画を視床に提出→運動

という流れになっています。この大脳基底核が障害されるとジスキネジアやジストニアなど運動異常が生じるわけです。



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