11月26日(日)メディア日記

 TBSは、26日午前5時25分から35分間、ジャニーズ事務所の性加害問題で、局と事務所の関係を検証する番組を放送した。TBSはすでに同局の「報道特集」で検証番組を放送しているが、今回はTBSホールデイングが検事出身の弁護士らで構成する「特別調査委員会」が、139人にアンケートを行い、125人に個別のヒアリングをした。この結果を44ページの報告書にまとめ、同局のHPで公表、検証番組はこの報告書をもとに構成された。これまでNHKを含め全キー局が検証番組を放送したが、今回のTBSもっと番組は内容に具体性があり、もっとも説得力があった。とくに報道と編成との確執事例は具体的で興味深い。報告書の事例の一部を参考まで列記する。
 2012年に故ジャニー喜多川の車が信号待ちの軽乗用車に追突し軽傷を追わせた事故の情報を社会部が翌日に独自に入手。昼のニュースで放送する予定だったが、最終的に放送されなかった。昼のニュース前に、編成局員が報道局を訪れていたことや、報道幹部がニュースを報じないよう指示していたことが明らかになった。
 また、2009年4月に泥酔し公然わいせつの疑いで警視庁赤坂署に現行犯逮捕された当時SMAPのメンバーの草彅剛をTBS局内に匿った際の編成部門の担当者と報道部門のやりとりも忠実に記述された。報告書では草彅剛をアイドルグループB氏と表現。逮捕翌日B氏は、処分保留のまま釈放され、報道陣のヘリやバイクに追跡されながら、なぜかTBS放送センター内の地下駐車場に入った。報道局員がカメラを持って地下駐車場に急行したところ、編成局員が「撮るな!」などと制止。記者とカメラマンが制止を振り切って車を囲んだが、車は走り去った。調査報告では「車両を招き入れた目的は、報道陣の取材から逃れるためだったことは明白であり、報道局の取材を妨害してしまったことになる。いわば報道機関が報道機関としての責務を自ら放棄させうる行為だった」と厳しく断罪している。
 また2001年、SMAP(当時)の稲垣吾郎が乗用車を違法駐車し、警察官から免許の提示を求められたが、無視して車を発進させ、女性巡査に軽いケガを負わせた事件が発生。稲垣は道路交通法違反や公務執行妨害で逮捕された。稲垣は送検されたが、裁判所は勾留請求を認めず、同26日に釈放され、同年9月21日に起訴猶予となった。 TBSは、逮捕直後は「稲垣吾郎容疑者」と報じていたが、釈放後には「稲垣メンバー」との呼称に変更。起訴猶予となってからは、「稲垣さん」と報じた。  
 TBSホールデイングの佐々木卓社長は番組の最後に、性加害を今年まで報道しなかったことなどに触れ「猛省する」と言及。「報道部門でも会社の事情を気にして逡巡するようになった様子がうかがえた」とし、「会社の取引関係の事情でペンを鈍らせてはならない、ニュース編集の独立性をさらに高める」などと語った。
 ジャニーズの検証番組はテレビ朝日が1時間を費やして11月12日に放送した。両局の番組を比較すると、決定的な違いは、TBSは外部委員の調査委員会が44ページにわたってまとめた報告書をもとに制作したことだ。テレビ朝日は、とくに「ジャニーズの温床」といわれた「ミュージックステーション」など個々の番組には何も触れず、「忖度が7回あった」などの証言も具体性はまったくなかった。テレビ朝日の監修のもとに関連会社のテレビ朝日映像が番組を作ったが、「番組は平板」と総じて評判が悪いのは、テレビ朝日自体に「覚悟」が無かったからだ。何よりすべてを知っている最高責任者の代表取締役会長の早河洋の「覚悟」のコメントが欲しかった。
 テレビ朝日は11月15日、東京有明に2026年完成を目指し、複合型エンタテインメント施設「東京ドリームパーク」を着工すると公表した。当初は旧ジャニーズと手を組みジャニーズ劇場構想もあった。3年後に旧ジャニーズが現有勢力である保証はないが、検証番組が生ぬるかったのは「東京ドリームパーク」建設が背景にあったのではないか。

 共産党の小池晃書記局長は26日のNHK「日曜討論」で、自民党内5派閥のパーティー収入過少報告問題について「主要5派閥なので、自民党ぐるみの疑惑と言わなければならない」と指摘した。小池は、「今回の問題は、共産党の機関紙『しんぶん赤旗』が昨年11月に報じたことがきっかけになった」と語り、「赤旗が報じたところだけ、その都度訂正しているだけだ。結局、24日に発表された2022年分でまた不記載が出てくるわけで、表に出ない分は隠しておこうという姿勢だからこういうことになるのではないか」と指摘した。 
 自民党の5派閥の政治団体をめぐっては、2021年までの4年間に派閥主催の政治資金パーティーの収入に関して計約4000万円分の過小記載があったとして告発され、担当者が東京地検特捜部に任意聴取を受けた。また24日に総務省が公表した2022年の政治資金収支報告書に関しても同様に、政治資金パーティーの収入の過小記載が疑われるケースがあることが表面化している。

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