8月16日(火)メディア日記

 例年のテレビの終戦特集が次々に放送されたが、残念ながら筆者はほとんど番組の視聴を見逃してしまった。民放出身で報道に長く携わったOBの友人がいくつかの番組の感想を送ってくれた。以下全文をそのまま転用する。

「終戦関連の報道番組は、NHKの孤軍奮闘ぶりが目に付きました。7月29日と8月5日の2回にわたり放送された、澤地久枝さんの戦争への変わらない向き合い。ミッドウエー海戦でなくなった日米両国の兵士の死とその周辺を、丁寧に描き出していました。間もなく93歳になる彼女の、ますます凛として、愚かな戦争と向き合っている眼力が眩しかったです。澤地さんとお話ししたのは、もう40年以上も前になります。打ち合わせでお邪魔した、渋谷にあるご自宅の佇まいを思い出していました。変わったのは、多少丸くなった背中だけ。あとは、何も違っていませんでした。
8月9日に放送された同じNHKの「歴史探偵」も重厚な作品でした。終戦後、GHQは原爆の被害や残虐性を報じないように管制を敷きました。朝日新聞が、「原爆は戦争犯罪だ」との鳩山一郎の発言を掲載し、それに危機感を覚えた米側がとった措置でした。そんな「press code」 の撤廃を訴えたのは、学生たちの果敢な運動でした。

このほか、14日放送の、「アナウンサーたちの戦争」。ラジオが担った戦意の高揚と、敵を欺く謀略。それらに駆り出される、NHKアナウンサーたちの葛藤。実話のドラマ化でした。単なる昔話ではない、近未来のいや、現実に起きていることへの警告でもありました。同じ14日は、「ファミリーヒストリー」が放送されました。草刈正雄、普段は見ませんが、終戦特集でもあったのでしょう。力作でした。単なるお涙頂戴ではありませんでした。日米両国の遺族の声を拾い上げる、そんな流れの中の一本だったような気がしました」。

 一方、長野市の民放地方局の現役幹部からも以下の感想が寄せられた。

「NHKスペシャル『新ドキュメント太平洋戦争1943国家総力戦・後編』を見ました。内容は、もちろん悪いわけがないんですが、最近のNHKは、AI使って言語や犠牲者の数をCG集計したり、ドラマ仕立てにしたり、カラー化したりと、いわゆる『見せる』工夫が過剰で、金と人の投入の仕方が違うのでは?と感じてしまいます。特にAIは「数字化」するだけで、使い始めたころは、「へー」と感心したんですが、最近醒めてしまうのは、私だけでしょうか。「死」とか「感情」の表現には、向かないなあ・・・と。フランスの局のナチス関係のドキュメンタリーもカラー化していますが、NHKと違う感じがするのは、NHKは「演出」的で、偉そうで自慢している印象なのは、貧乏な民放局のひがみですかね」。

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