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ソニック30周年記念シンフォニーを振り返る: コロナ禍に無料公開されたゲーム音楽の記念碑

ソニック・ザ・ヘッジホッグと言えば、誰もが知ってる音速の青いハリネズミ。最近ではハリウッドで映画化され、3作目の公開も近づいていることから分かる通り、日本だけでなく世界でも広く人気のあるキャラクターです。

そんな彼の誕生30周年を記念して、2021年の6月に記念シンフォニックオーケストラが開かれました。なんとYouTube上で全世界に向けて無料配信(しかも4k再生にも対応)。2024年現在でも視聴可能です。


第一部: オーケストラ

イントロまで含めると約2時間の長丁場ですが、ソニックの歴史を考えると決して長すぎないボリュームです。

最初はソニック初期作品の音楽から始まり、時代とともに進んで行きます。モニターではゲーム内の映像が流れており、そこでもソニックの歴史が移り変わって行く様子が観て取れます。
ソニック1、2、3&ナックルズと来て次はソニックマニア。グラフィックこそレトロですが実際は2017年発売の新作です。クラシック横スクロールへと原点回帰したこのタイトルは、非常に高い評価を受けています。

セガサターン時代の名作に進みつつ、Believe in Myselfの演奏が始まります。この曲が使われたソニックアドベンチャーはシリーズとしては初の本格的3Dアクションであり、ソニック以外のキャラクターからの視点を描いた群像劇仕立てのストーリーも特徴です。ソニックアドベンチャー1、2は25年近く経つ今でもソニック最高傑作として声が挙がる程人気の作品です。最近日本でもPC版の購入が可能になったとの嬉しい知らせも入りました。

次に流れるのがソニック・ザ・ヘッジホッグ(2006)。新ソニやソニック06とも呼ばれたりしますが、実はゲームとしての評価が非常に悪い作品でした。長すぎるロードやテンポの悪さ、人を選ぶストーリー等で反感を買ったタイトルですが、メインテーマのHis WorldやMy Destiny等の楽曲はとても人気です。ソニックシリーズの「ゲーム内容に波はあるけど、音楽はいつも最高」というよく聞く評判はこの時点で固まり始めていたのかもしれません。

ソニックワールドアドベンチャーやソニックフォースの演奏の後には、ソニックカラーズの楽曲です。2021年の後半にはソニックカラーズのリマスター版が発売されるため、他タイトルよりも長めに時間が取られています。

幕間: チャオガーデン

合間の10分間は休憩としてチャオガーデンの曲が流れます。
世界で一番可愛い生命体のチャオと交流できるミニゲームは、ソニックアドベンチャー1、2で遊べます。
また幕間にはソニック1、2の楽曲制作に携わったドリカムの中村さんが登場。英語であいさつを行っています。

第二部: バンド演奏

後半からはバンドでの演奏に切り替わります。ゲームのサウンドディレクターである大谷智也さん率いるバンドの生演奏にボーカルが足される形で楽曲が続きます。こうした編集も活用しているのは無観客ならではですね。

Endless Possibilityが終わると、Crush 40へとバトンが渡されます。ソニックシリーズとの付き合いは20年以上にも及び、メインテーマと言えば彼ら、
という時代は10年近く続きました。特に目を惹くパフォーマンスはシャドウ・ザ・ヘッジホッグの主題歌 I am… All of Me。
ソニックのライバルであるシャドウを主役に置いたタイトルは、ソニックでは表現できない過激さや社会への反抗、善悪への葛藤と選択を描いており、楽曲にもその方向性が色濃く反映されています。

アンコール&エンディング

Knight of the Windで終わりと思いきや、アンコールとばかりにEscape from the cityの演奏が始まります。ソニックアドベンチャー2の最初のステージテーマであるこの曲も、明るい街並みと疾走感を描き、物語の始まりを盛り上げる一曲です。ゲストボーカルのためTシャツを着替えているのも芸が細かいですね。

最後はCrush 40とオーケストラの同時演奏で披露されるLive & Learn。ソニックアドベンチャー2のメインテーマでありラスボス戦の曲でもあるこの曲が、オーケストラの伴奏も加わりコンサートの最後を飾ります。

エンディングのスタッフロールではソニックマニアのトレーラーに使用された曲がオーケストラ仕様で使われます。どれだけ多くの演奏者や関係者が携わっていたかが確認できます。

最後に

ソニック・ザ・ヘッジホッグは世界中で多くの熱狂的なファンに支持されていますが、こうしたイベントもファンの信頼を得る素晴らしい取り組みだと思います。

今でこそゼルダの伝説や原神、OmoriのコンサートがYouTubeで公開されていますが、オーケストラの演奏が無料で2時間も披露されたのはゲーム音楽においてソニックが初では無いでしょうか(調べてみたらUndertaleのオーケストラが2020年に公開されていました、しかも3時間近く)。

ゲーム音楽にはプレイヤーの体験した思い出を強く蘇らせる力があり、多くの人が一つの経験を共有できる切っ掛けにもなります。
ゲームは進歩し、昔の作品は時代遅れになるかもしれませんが、思い出はいつまであってもいいものです。

今回紹介したコンサートはアルバムとして各プラットフォームにも配信されています。再生数が伸びて35周年、40周年もオーケストラが開かれることに期待します。

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