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【読書】門井慶喜(著)『家康、江戸を建てる』第四話:石垣を積む

門井慶喜(著)『家康、江戸を建てる』第四話「石垣を積む」を読んでいて、思い出したのは、今村翔吾(著)『塞王の盾』です。
日本全国、どこの城跡に行っても目に付くのは石垣です。
石垣を造るには、石を切り出してその石を運び、そして積むという、大きく分けて三つの仕事をしなければいけません。
その三つの仕事は役割分担され、其々に専門技師たちが存在しました。

コンクリートや鉄骨がない時代の建設資材は、主に石と木材でした。
巨大な重い石を運ぶためのトラックやクレーンなどの、重機が無い時代です。全ては人力で、それは命懸けでした。今でいう労災なんてものは、日常茶飯だったと思われます。

400年以上経った今でも、皇居に行けばその石垣を見ることができます。積まれている巨大な石の一つひとつが、伊豆半島周辺から人の手で切り出して運ばれて積まれたものだと考えると、見る目が違ってきます。

お城にとって石垣は、敵からの攻撃に対する最大の防御施設です。
その防御施設は、江戸時代が終わるまでの約250年間、一度も攻められることはありませんでした。
武力だけでは大坂城を攻略できなかった経験から、江戸城を完璧なものにすることによって、攻める意欲を失くさせることにも繋がったのです。

大阪で生まれ育った私にとっては、大坂城は自慢のお城でした。
和睦を反古にして内堀まで埋めてしまい、アルマダの海戦で使われたと言われるカルバリン砲を打ち込んだ徳川家康は、憎たらしい人物でした。

しかし大人になって東京に来て、はじめて皇居に行ったとき、「やっぱり負けたわ」と呟いたことを思い出しました。

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