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しょうもない

(中略)…過ちに学ぶところなく、あるいは、学んでもすぐに忘れてしまい、また同じ過ちを繰り返す。そういった人々が抱え込む「しょうもなさ」も、残念なことに認めざるをえない私たちの世界の一面である。

菊池暁『民俗学入門』

またしても、しょうもないことをしでかしてしまった……。

2023年4月18日に、ブータンへ移住することが決まっている。夫の海外赴任を機に、中学生の長女と小学生の長男を連れ、およそ3年間の海外生活を楽しんでくる予定だ。めったに訪れる機会がない国だし、ましてや住んでいいとなったらこれはもう家族全員で行くしかない!と即決した。

最初は不承不承だった子どもたちも、ブータン関連の書籍をめくり、一足先に首都・ティンプーへ単身赴任している夫から届く近況報告に触れるたびに自然と好奇心が湧いてきたようで、今ではとても前向きに捉えてくれているのはありがたい。

家族帯同だと手続きが煩雑

T.Y.氏撮影

さて、家族でブータンへお引越しともなれば、避けて通れないのが諸手続きだ。

まずはパスポートとビザの申請から始まり、仕事の整理、荷物の整理、断捨離、ワクチン接種、健康診断、歯科検診、運転免許の更新と自家用車の処分、加入保険の確認と手続き、お金の手続き、学校探し、現地で頼れる人探し……などなど、数多ある煩雑な作業のひとつでも抜けたり欠けたりしてしまったら、現地に行ってから苦労するのは自分自身なので手を抜けない。

しかも、わたしは元来抜けているというか、ズレているというか、思考と行動がうまく連動していないために、マルチタスキングを大の苦手とするタイプだ。だからよく忘れたり、遅刻したりするし、過去の失敗に懲りずにしょうもないミスをやらかしてしまう。一言でいえば「しょうもない」のだ。

トラベルクリニックでの過ち

T. Y.氏撮影。ブータンでは仏教の不殺生(ふせっしょう)の教えに従い、動物の殺処分が行われない。そのため野犬が多く、噛まれると狂犬病を発症する恐れがあるのでワクチン接種は必須だそうだ

たとえば先日、ワクチン接種のために新宿区内の病院を訪れた時のこと。

以前インドネシアへ家族で赴任した際にお世話になったのが、国立国際医療研究センター病院内にあるトラベルクリニックだった。先生の説明がとても丁寧で、注射も上手かったので、今回もお世話になろうと思いネットで「新宿+トラベルクリニック」とキーワード検索し、家族分の予約を取った。

いざ、予約当日。Googleマップを頼りにたどり着いたそこは……なんだろう、記憶していた外観とはだいぶ違うような。気を取り直して受付をしようとするや否や、カルテが存在しないことを告げられる。さらに、1989年に旧姓で耳鼻科を受診されていたようですが…、とびっくりするぐらい古い記録を探し出してきてくれた。
謎に思いながらも受診し、先生の説明にはたと気づいた。

ここは、国際医療センターではなく、東京医科大学病院内の渡航者医療センターだという真実に。

ほんとうにしょうもない

病院違いであることをそれとなく指摘してくださった先生は、「おとなりですからね〜。間違う人もよくいらっしゃいますよ」と取り繕ってくださったのだが、本当にこんなにしょうもない過ちをしでかす人間がそう多くいるだろうか?

さらに、そこで初めて思い出したのだが、わたしは確かに1989年に東京医科大学病院でお世話になった。それは12歳の頃、勢いよく鼻血を出し続けたあげく、救急搬送された病院に違いなかったのだ。その時東京医科大で鼻の中の神経を焼き切ってもらうことで、ようやく流血は止まった。それだけでも十分に痛かったのだが、トドメにテニスボール大の脱脂綿を鼻の穴に詰っこまれて猛烈に辛かった記憶がある。

こんなことは今まですっかり忘れていたのだけれど、おばさんにからなってまた同じ病院に流れ着くとは。これもご縁なのだろうか?

ちなみに東京医科大学病院の渡航者医療センターの先生は非常に丁寧にワクチン接種のスケジュールを説明してくださり、注射の技術も素晴らしかった。結局その日はA型肝炎・B型肝炎・破傷風・狂犬病の計4本を矢継ぎ早に注射してもらい、無事終了。病院を間違えたこと自体はしょうもなかったが、結果オーライ!

次の日に調子に乗って水泳教室へ行き、その後自主練で1200mほど泳ぎ込んだところで体力を消耗しすぎてしまい、後悔のボロ雑巾のようになったのは言うまでもない。

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