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流体力学 渦流れと渦無し流れ 例題と渦の分類

 皆様おはこんばんちは。そして,お疲れ様です。

 最近,流体力学を再度学び直してみようと思い,記事にしています。
 第3回目は,第1回目でネタにした「渦流れと渦無し流れ」の追加記事をかいていきたいと思います。


(1)渦流れと渦無し流れの決定とは

 はじめに,今回の記事の内容は「渦流れと渦無し流れ」の追加記事になります。よって,まだ最初の記事を見ていない方は下記のURLを参照してみてください。

 今回は,例題を2題取り上げます。


【例題1】次に示す流れは,渦流れか,渦無し流れか。

渦2q2

 さて,渦流れの条件式を思い出すと,式(1)が出てくるはずです。

渦2q1

 ここで,与式をx,yについてそれぞれ微分し,式(1)を与式に代入して計算すると,以下のように書き表せます

渦2q3

渦2q4

 これにより,例題1は,ζ/2の角速度をもつ「渦流れ」であることが分かりました。前回の記事でも2次元グラフをかきましたが,同心円状を加えることで図1に示すように,よりわかりやすくなると思います。

渦2-1

図1 渦流れの2次元グラフ(半径と速度の関係)

【例題2】次に示す流れは,渦流れか,渦無し流れか。

渦2q5

 ここで,kは任意定数として考えてください。さて,先ほどの例題1と同様に解いて見ましょう。与式をx,yについてそれぞれ微分し,式(1)を与式に代入して計算すると,以下のように書き表せます。

渦2q6

渦2q7

渦2q8

 これにより,例題2は,ζ=0となるので「渦無し流れ」であることが分かりました。2次元グラフは,非常にイメージしづらいですが,図2に同心円状を加えたグラフを示します。

渦2-2

図2 渦無し流れの2次元グラフ(半径と速度の関係)


(2)渦流れと渦無し流れの違いって,結局何?

 さて,ここまでの内容は一般的な流体力学の教科書に書いてあることです。渦流れの条件式からは,渦度ζが零になるか,否かで,渦流れか,否かを判別するだけです。問題を解くだけなら,高校数学(いわゆる数学Ⅲの範囲)で商の微分法ができれば,特に難解ではありません。でも,ここで疑問に思いませんか?

「渦度ζって,結局何?」
「そもそも,一度も渦度の話に触れてないような気が…」

 
 私自身もそうでした。でもせっかく学び直せるということは,時間があるということなので,過去の資料や教科書を探してみた結果,私なりの渦度ζの答えを以下にかきます。

それは,「渦度ζは,流体要素の回転運動をどの程度回転させるかの度合い」を示すパラメータです。

 ざっくりした説明ですが,これを聞くと,驚かれる人もいるかと思います。なぜなら,渦流れは角速度によって回転運動をしていることはわかるかと思いますが,渦無し流れは,本当に何も回転していないのかと疑問をもつでしょう。

 ここで,あえて混乱させるように書きますが,コーヒーにミルクを入れてかき混ぜるときにできる渦が「渦流れ」であるのに対して,お風呂の栓を抜いたときにできる渦が「渦無し流れ」と言われています。

 でも,そうなると渦無し流れの見た目は,渦のように回転しているはずです。このように見えるポイントは流体要素にあります。

 結論から言うと,流体要素のみを考えた場合,回転運動はしていないけれど,別の変形をしていることが知られています。ここでは,数学的な記述には触れませんが,物理的にイメージしてみましょう。


(3)渦流れと渦無し流れの流体要素はどうなっているのか

 ここでは,渦流れと渦無し流れの流体要素を考える前に,図3に示すように,先ほどの渦流れと渦無し流れの2次元グラフについて,再度見てみましょう。

渦2-3

図3 渦流れと渦無し流れの速度分布の比較

 では,図3に示した2次元グラフから渦の特徴をそれぞれ見てみましょう。

 渦流れの速度分布は,原点0を通過する直線になっていることが分かります。つまり,半径が大きくなるほど,速度も同様に大きくなるため,比例関係となります。
 一方,渦無し流れの速度分布は,原点0では限りなく速度が大きくなるが,半径が大きくなるほど速度が小さくなるため,反比例関係となります。

 それでは,それぞれの渦流れと渦無し流れの半径と速度の関係性を覚えたまま,図4に示すように流体要素の様子を見てみましょう。

渦2-4

図4 流体要素の回転運動及びせん断変形の様子(左:渦流れ,右:渦無し流れ)

 実は,この図が結論です。

 渦流れの場合は,渦度ζが零ではないため,流体要素は角速度で自転している状態となります。つまり,主体となる運動は,流体要素の「回転運動」となります!
 一方,渦無し流れの場合は,渦度ζが零であるため,流体要素は全く回転運動しません。但し,あたかも回転しているように見えるのは,流体要素が「せん断変形」をしているからです!
 これは,原点付近の速度が大きくなることで,流体要素に働くせん断力が大きくなるためと考えられているのです。

 同じように見えるはずの渦でもこれだけ違うのは,驚きですよね。今回は物理的なイメージをお伝えしましたが,最後に実際の渦の分類を知って,より渦をイメージできるようにしてみましょう。


(4)実際の渦の分類

 図5に示すように,今回取り扱っていた視点から別の視点で渦を見てみましょう。

渦2-5

図5 渦の視点について

 では,図5に示したように,別の視点で渦を見たとき,どれが渦流れ,渦無し流れであるかを考えてみましょう。図6には,3つの渦をそれぞれ示します。

渦2-6

図6 渦のイメージ図


 皆様はわかりましたでしょうか?


 (a)は,「渦流れ」です。図6に示したイメージ図は,遠心分離機や撹拌作業をしたときの渦のでき方になります。ポイントは,外側に行くほど(半径が大きいほど),速度が大きくなるため,水面が高くなるところでした。

 (b)は,「渦無し流れ」です。図6に示したものは,風呂の栓を抜いた時にできたものです。この記事の例示でもかなり使っていましたね,ポイントは,原点である渦の軸の中心付近(半径が小さいとき)で,速度が大きくなるため,限りなく渦が縦に長くなっているように見えることでした。

 (c)は,正解したらかなりすごいです!
 正解は,「渦流れ」と「渦無し流れ」の両方です。
 このような両方の渦を組合せてできた渦を「ランキン渦」と言います。例示としては,台風や竜巻など実際にできる渦のほとんどは,ランキン渦で構成させていると言われています。しかし,結局は「渦流れ」と「渦無し流れ」で構成され,とある境界において切り替わると言われています。


(5)まとめ

 今回の記事のまとめを以下に示します。
(1)渦流れと渦無し流れは,渦度ζが零になるか,否かで判別する。
(2)渦度ζは,流体要素の回転運動の度合いを示している。
(3)渦流れは,流体要素の回転運動が支配的になるのに対し,渦無し流れは,流体要素のせん断変形が支配的になる。
(4)渦流れと渦無し流れ以外に,この2つを組合せた「ランキン渦」も存在する。

 以上です。最後まで閲覧頂きありがとうございました。

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