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流体力学 コーシー・リーマンの微分方程式

 皆様おはこんばんちは。そして,お疲れ様です。

 最近,流体力学を再度学び直してみようと思い,記事にしています。
 第6回目は,第5回目でネタにした「2次元ポテンシャル流れ」で取り扱ったコーシー・リーマンの微分方程式(Cauchy–Riemann equations:以下,C-R方程式と記載する。)について,かいていきたいと思います。かなり数学的な内容になるので,数式が羅列することになることを予めお伝えしておきます。


(1)C-R方程式は何がすごいのか?

 では,「2次元ポテンシャル流れ」で取り扱ったC-R方程式ですが,一体に何がすごいの簡単な復習です。詳しく知りたい方は,以下の記事を見てみてください。

 結論からいえば「連続な偏導関数ならば,とある領域で正則(せいそく)となること」です。言い換えれば,「微分可能であることを使って,流体粒子の運動の様子を複素関数で表現できること」です!
 でも,数学的には,「C-R方程式」が「正則」となることが証明できて,はじめて正しいことが証明でき,かつ利用できるのです。
 ここで,高校数学の「論理と命題」(現在の教育課程では,数学Ⅰ・Aの範囲)を思い出しましょう。先ほど書いたように,「C-R方程式」が「正則」となるためには,早い話「必要十分条件」が証明できればいいのです!図1に「C-R方程式」と「正則」の命題関係を示します。

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図1 「C-R方程式」と「正則」の命題関係

 なので,「正則」→「C-R方程式」の十分条件と「C-R方程式」→「正則」の必要条件の両方が成立すると,必要十分条件となり,「C-R方程式」が「正則」となることが成立し,「2次元ポテンシャル流れ」に利用できるということです!
 わざわざネタにするぐらいですから,必要十分条件が成立するのですが…。(そもそも,まだわかっていない問題を取り上げるのは,一流の研究者がやるはずですからね。)
 次項では,十分条件と必要条件をそれぞれ証明してみましょう!


(2)「正則」→「C-R方程式」の十分条件

 では,早速ではありますが,十分条件の証明をしてみましょう。タイトルにある「正則」とは,「とある領域で複素関数f(z)が正則である」の意味です。では,これを数式でかいてみると,式(1)のように表せます。

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 ここで,ポイントになるのは,複素関数の微分は,関数の傾きを求めることではなく,「とある領域のある任意の点zが点z0に近づく」ことです。図2に任意の点zが点z0に近づくパターンを示します。

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図2 任意の点zが点z0に近づくパターン

 図2を見ると明確にわかると思いますが,点zが点z0に近づくパターンは,2種類に分類できるのです。1つ目のパターンは,x方向から近づいていくパターンで,2つ目のパターンは,y方向から近づいていくパターンです。(複雑な動きも結局,この組み合わせで成立するので,本当に2種類だけ考えれば問題なしというわけです。)
 では,x方向から近づいていくパターンを考えてみましょう!

(2-1)x方向から近づいていくパターン

 では,タイトルに記載してあることを数式にしてみる準備をしましょう。複素関数は複素数x+iyで書き表せますが,x方向から近づいていくことを考慮すると,y=0かつx→0になります。でも,実際にはかなり小さい領域での議論なので,Δy=0かつΔx→0となります。
 これを式(1)に適用して書き換えると,式(2)のように表せます。

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 よって,x方向から近づいていく複素関数の微分は,複素数で書き表せることが示されました!では,次のステップとしてy方向から近づいていくパターンを考えてみましょう!

(2-2)y方向から近づいていくパターン

 同様に,タイトルに記載してあることを数式にしてみる準備をしましょう。y方向から近づいていくことを考慮すると,x=0かつy→0になります。これも先ほどと同様ですが,実際にはかなり小さい領域での議論なので,Δx=0かつΔy→0となります。
 これを式(1)に適用して書き換えると,式(3)のように表せます。

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 よって,y方向から近づいていく複素関数の微分は,複素数で書き表せることが示されました!では,式(2)と式(3)を比較すると,式(4)のように表せます。

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 式(4)こそ,まさにコーシー・リーマンの微分方程式(C-R方程式)です!
 よって,「とある領域で複素関数f(z)が正則である」→「C-R方程式」の十分条件が証明出来ました!
 次項では,「C-R方程式」→「正則」の必要条件を証明してみましょう!


(3)「C-R方程式」→「正則」の必要条件

 先ほどは図形的(いわゆる幾何学的)に「正則」→「C-R方程式」の十分条件を証明しましたが,今回は微分が使えることを利用します。
 まず,正則であるには,任意の複素関数が「連続」であることが必要です。そのためには,極限が微分したものと同様であることが必要なのです。そこで,微分できることを利用すると,高校数学の微分(現在の教育課程では,数学Ⅲの範囲)で扱う「平均値の定理」が使えます。では,微分可能な1変数関数f(x)の平均値の定理を式(5)に示します。

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 ここで,1変数関数f(x)が連続であると,式(6)のように表せます。

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 但し,Δx→0のとき,h→0となります。
 式(6)に示したように,1変数関数f(x)では,平均値の定理が成立することを確認できたため,実際に扱っている2変数関数u(x, y)の平均値の定理を式(7)に示すように考えてみましょう。

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 但し,Δx→0,Δy→0のとき,h1→0,h2→0となります。
 同様に,2変数関数v(x, y)の平均値の定理を式(8)に示すように考えてみましょう。

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 但し,Δx→0,Δy→0のとき,l1→0,l2→0となります。
 よって,複素関数f(z)と複素関数の微分f(z+Δz)をそれぞれ考えると,f(z+Δz)- f(z)は,式(9)のように表せます。

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 ここで,式(7)と式(8)を式(9)へ代入すると,式(10)が表せます。

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 式(10)の両辺をΔzで割って,Δz→0の極値を求めると,式(11)のように表せます。

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式(11)の下線部を考えると,Δz→0から,Δx→0かつΔy→0となるので,式(12)のように表せます。

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 したがって,「2変数関数u(x, y),v(x, y)が連続な偏導関数で,かつC-R方程式が成立する」とき,「複素関数f(z)はとある領域で正則」となり,必要条件が証明出来ました!


(4)まとめ

 今回の記事のまとめを以下に示します。
(1)「正則」→「C-R方程式」の十分条件と「C-R方程式」→「正則」の必要条件は,両方成立するため,「必要十分条件」となる。

 以上です。最後まで閲覧頂きありがとうございました。

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