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流体力学 2重わき出し

 皆様おはこんばんちは。そして,お疲れ様です。

 最近,流体力学を再度学び直してみようと思い,記事にしています。
 第21回目は,第20回目で予告した通り,「2重わき出し」について紹介していきます。


(1)対数関数のマクローリン展開

  では,以前に取り上げた「マクローリン展開」について,対数関数のマクローリン展開をやってみます。これを使う理由は,2重わき出しの複素関数は「対数関数」で構成されているからです。気になる方やここで扱う専門用語が分からない方は,以前の記事を参考にしてみて下さい。

 まず,マクローリン展開の一般式を式(1)に示します。次に,今回扱う「対数関数」の与式を以下に示します。
【与式】f(x)=log(1+x)

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 式(1)のf(x)に対数関数を適用したとき,n次関数(具体的な数値は4次関数まで)の係数を計算すると,以下のようになります。そして,ここで得られた係数を式(1)のマクローリン展開の一般式に代入すると,式(2)のように表せます。

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 式(2)の結果から,対数関数に対してマクローリン展開を適用した場合,最終的に式(3)のように表せます。

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 今回取り扱う2重わき出しには,式(3)をほぼそのまま適用する場面があります。そして,以前の記事で述べ忘れましたが,どの関数に対してもマクローリン展開を適用すると,「無限級数」の形式で表現されます。
 数学的に「無限級数」で表せる理由は,「テイラー展開からロルの定理を用いること」で分かり,「無限級数」の式で正しいことは,「ダランベールの収束判定法」で分かります。今のところ記事として取り上げる予定はないので,興味のある方は,以下の参考文献を確認してみて下さい。
(※筆者が最も納得できた文献です。)

※参考文献;スバラシク実力がつくと評判の微分積分キャンパス・ゼミ,マセマ出版社,馬場敬之,初版,2013


(2)2重わき出しの導出

 それでは,2重わき出しの導出をする前に「わき出しと吸込み」を知っていることが前提となります。まだ知らない方や忘れてしまった方は以下の記事を確認してみて下さい。

 ここで,2重わき出しを算出するための条件を必ずおさえる必要があります。それは,わき出しと吸込みのグラフから「座標の一定値εを限りなく原点0に近づけること」です。これで「2重わき出し」を表現するという強引な手法とります。図1に,わき出しと吸込みのグラフから2重わき出しへの変換の様子を示した概略を示します。

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図1 わき出しと吸込みのグラフから2重わき出しへの変換

 それは,図1に示すような条件を適用するためには数式的には,どのように処理するべきかを考えていきます。
 まず,わき出しと吸込みの複素関数を式(4)に示し,極座標を使った場合の複素関数と複素ポテンシャルφ及び流れ関数ψの関係を式(5)にそれぞれ示します。

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 次に,条件を適用するために便宜上,式(6)のように式(4)の右辺をzで割った結果を示します。

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 ここまで来たら,式(6)に条件を適用します。
 条件は「座標の一定値εを限りなく原点0に近づけること」です。以前のマクローリン展開の結論では,「関数を微分するとともに近似式を導出するためのツール」と表現しました。
 つまり,極限の考え方を適用することでn次近似式として書き表すことできることになり,マクローリン展開を適用することで「座標の一定値εを限りなく原点0に近づける」ことと同様の処理が可能になります。しかも,原点0に近づくことでわざわざ「テイラー展開(xが原点以外の任意の位置にあるときに利用する式)」を使わずに済むのです。
 数式的には,式(6)に括弧内にある「対数関数にマクローリン展開を適用」することで表現でき,最終結果は式(7)のように表せます。

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 ここで,m:2重わき出しの強さを示します。式(7)は複素関数で書き表しているので,複素ポテンシャルと流れ関数を示すことでできるので,次項で紹介します。


(3)2重わき出しのグラフを描くためには…

 前項の式(7)で2重わき出しの複素関数が分かりました。しかし,グラフを描くためには,複素ポテンシャルと流れ関数を把握している必要があります。式(8)に2重わき出しの複素ポテンシャルと流れ関数をそれぞれ示します。

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 式(8)を使って,グラフを描くためには,複素ポテンシャルφと流れ関数ψが一定値であることを利用できます。これを利用して,流れ関数ψ=const.とすると,式(9)のように円の方程式が書き表せます。

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 よって,半径は2重わき出しの強さmと流れ関数ψの値が必要になることが分かりました。つまり言い換えれば,2重わき出しの強さmと流れ関数ψの一定値を任意に決めたと仮定すれば,グラフを描くことが出来ます。図2に2重わき出しの概略図を示します。

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図2 2重わき出しの概略図

(4)まとめ

 今回の記事のまとめを以下に示します。
(1)マクローリン展開は対数関数のみならず,無限級数で表せる。
(2)2重わき出しを適用するための条件は,わき出しと吸込みから「座標の一定値εを限りなく原点0に近づける」ことを利用する。
(3)2重わき出しは,円の方程式をベースに2重わき出しの強さと流れ関数の値を任意に仮定すれば,グラフを描くことができる。

 以上です。最後まで閲覧頂きありがとうございました。

※次回は,2重わき出しのグラフについて扱う予定です。


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