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非日常の中の日常

こんにちは目箒です。

このメンズラブについての進捗記事となります(進捗記事シリーズは「#氷点の水底」でどうぞ)。

導入の公開完了と前回までのあらすじ

起承転結の起に当たる部分の投稿が今日で終わりました。実は承は今書いている途中なので(笑)いつになるかわからないんですが、あんまり間を空けるとよろしくないので頑張って書きます。

ということでいつもの進捗晒し記事となります。

前回は「やっべー、第二部の簡易プロット二行しかないし豚汁とハンバーグの話しかしてなかったやてへぺろ☆」というところで終わりました。

蘇東坡と同居メンズ

書きました。

書いたんだよ、豚汁とハンバーグの話を

「よくよく考えると、他人がずっと家にいるって初めてなんですよね」
 奇妙な同居生活が始まってしばらく経ったある日、夕食を食べながら、中堂はぽつりとそんなことを呟いた。今日の夕食は豚の生姜焼き。小田桐は目を瞬かせてから、納得した顔になる。
「ああ」
 愛人業をしていた中堂は、彼をここに置いていた神谷が来なければただの無職である。小田桐はそのことを思い出した様に、
「そうですよね」
「君は実家だからこの面倒くささがわからないでしょうけど」
「その実家だから実家だからって、やめてもらえませんか。中堂さんだって元はご実家でしょう」
「そうとも言いますね」
「休みの日は作りますよ」
「ゆくゆくはしていただけるとありがたいですが、君、料理できるんですか?」
 中堂も最初は料理があまり得意ではなかったが、外食や中食をしていると、あまりにも金が掛かるので自炊した。神谷は食費が掛かることについては何も言わなかった。多分、どうでも良かったんだと思う。そう言うことで、ついこの前まで実家で暮らしていた27歳の男に料理ができるとはとても思えなかった。
「一応」
「どれくらい? 得意料理は?」
「豚汁得意ですよ」
 それを聞いて、中堂は鼻で笑った。
「切って煮込むだけじゃないですか」
「そうかもしれませんけど、具だくさんだから切るのが大変なんですよ……中堂さんの得意料理はなんなんですか?」
「ハンバーグです」
「丸めて焼くだけじゃないですか」
「生で食べるんですか? 失礼ですね、焼くんですよ。それに、玉ねぎを刻むんですから。目に染みるじゃないですか」
「こっちだって長ねぎ切るんですよ」
「長ねぎって、別に玉ねぎほど染みないでしょ。どうせ斜めに切るだけだし」

何の話してんだよお前ら。

ということで、徐々に慣れた(諦めたとも言う)小田桐くんは中堂さんのお宅での生活に馴染んでいきます。二人分の飯作らないといけない中堂さんがぽつりとそんなことを言うシーンです。言うなれば、小説という非日常を描いたお話の中に入ってくる日常のシーンです。

 生姜焼きをおかずに、白米を食べ続ける小田桐。市販の生姜焼き調味料を使った今日の夕飯は、ご飯にとても合う。困ったら豚肉さえあればとりあえずどうにかなるので、常備している調味料の一つだった。
 豚肉は良い。まあまあ安い、美味い、大抵の調味料に合う。最悪焼いて塩を振っても良いのだ。こんがり焼いた豚肉に塩を振って白米に乗せたものの、なんと美味いものか。豚バラの脂身を、焼き目が付くまで焼いて塩を振る。炊きたての白米を巻いて食べる。脂身の甘味に塩が溶け込んで、白米のささやかな炭水化物特有の甘さが引き立てられる。
 まずい、食べたくなってきた。塩分と脂質の取り過ぎが気になる年齢であると言うのに。話題を変えよう。
「中国の詩人、蘇東坡は安い豚バラを美味しく調理したと詩に書いたそうで、それが中華料理のトンポーローです。つまり豚は万能の肉です」
 豚の角煮が食べたくなっただけだった。
「はあ……」
「君は何肉が好きですか?」
「牛ですかね」
「それじゃ、今度ハンバーグ食べさせてあげますよ。楽しみに待っていなさい」

だから何の話してんだよお前ら。

これは私が知っていたためにトンポーローの由来に詳しくなってしまった中堂さんです。

国語の資料集に載ってたんですよ。

中堂さんは顔の良い庶民なので割とお得情報に敏感です。鶏胸肉はぱさぱさしててイヤ、もも肉はベタベタしててイヤ、ということで豚肉を使うんだそうです。

でもハンバーグには牛肉を使います。たまの贅沢です。小田桐くんが存外にお金を入れてくれるのでハンバーグを結構頻繁に作れちゃったりします。

小田桐くんの愉快な同僚たち

小田桐くんは務め人なんでちょっと勤め先の描写もしました。

 翌日、小田桐は中堂に詰めてもらったお弁当を持って出勤した。職場には冷蔵庫があるので、お弁当を持参した職員はそこで昼間で置いておく。
「あれ、小田桐さんお弁当? 珍しいじゃん」
 同僚の五月女が目を瞬かせた。小田桐も大概無表情と言われるが、五月女の鉄面皮っぷりはなかなかのものだ。
「下宿先の人が持たせてくれました。今日お弁当箱買って帰ります」
 今朝、ハンカチで包んだお弁当を小田桐に渡し、
「君には元気でいてくれないと困りますから」
 と、ベッドで事に及ぶ直前のような顔をした。つまりそう言うことである。
「近くなって、どう? チャリ通勤になったんだっけ?」
「そうなんですよ。チャリで20分くらいになったからすげぇ楽です」

ずっとアラフォーとアラサーのベッドの話をしているとワンパターンになるのでテコ入れです。

「小田桐さん、良いよ上がって。下宿先の人待ってない?」
 その日、定時になっても調剤している小田桐を見て、五月女が尋ねた。引っ越してそんなにすぐに残業で帰りが遅くなったら心配するのではないか、と言う気遣いだったが、このやりとりは今日が初めてではない。
「待ってないと思います」
 小田桐も毎度の返事をする。中堂は待ってない。だって今日はベッドに誘える日じゃないから。明日も出勤だ。朝、早起きをしなくて良くなった小田桐は、多少の残業なら利くようになっていた。もっとも、残業しないのが一番良いのだが、病気は病院の勤務規定に慮って発症してくれない。処方の変更や追加がバンバン指示される。
「ダブルチェックお願いします。五月女さんこそ、おうち遠いんじゃないですか?」
「こいつ、距離で気遣うようになったな」
 薄く笑う。本当に記号のような表情だ。「これは冗談ですよ」というプレート代わりの笑顔。単に表情を変えるタイミングを逸する小田桐と違って、五月女は完全に表情をコントロールしていた。
「これ調剤して、カルテ書いたら帰りますよ」
「そうして。あとは百瀬さんがやってくれるから。お弁当箱買って帰りな」
「おう、やるから帰れ」
 夜勤の薬剤師が手を振った。
「五月女くんも良いよ。前田さんに電話しとくから」
「前田さんに電話したいだけでしょ」
「うっせ!」
 この薬剤師は病棟の看護師と仲が良いらしかった。

百瀬と前田はこの二人です(小説家になろうとfujossyは退会しました)。

ついつい自分の中の世界を繋げたくなっちゃう……。

まあ同僚たちは本筋に絡まないし、仮に絡むとしても五月女くんだけです。

飯食うだけか?

そんなわけはなく、このパートでは、中堂が実は内心で神谷に対して慕情があったことを描いてゆきたいと思います。

つまり失恋の自覚を持たせるわけです。恋なのかって言われると微妙だけどさ。

で、転のアレに繋がるんですね。ハンバーグ解凍しちゃったのに小田桐くんが外食のことをギリギリまで言わないアレ。失恋をした自分の傍にいる小田桐くんに気持ちが向いちゃうんですね……。

百瀬じゃん(上のBLに出てくる薬剤師)。

私は酷い目に遭わされた男に新しい恋を提供するのが好きなのかもしれない。

書いたらまた見てくれよな!


これはとても真面目な話ですが生活費と実績になります。