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メリークリスマス!!!!

ではない。こんにちは目箒です。

毎度おなじみ教育によろしくないML、「#氷点の水底」について語る記事です。

最後まで書きました。

お話し聞いてくださる方がいたのでぐちぐちこぼしてたらなんか最後まで書けました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

やっぱりフィードバックある方が書けるな。

ということで昨日書き終わってざっと見直してアップ始めています(第16話第17話)。

クリスマスが来るぞ

季節感がバグっているのですが、これは2019年11月~12月の話なので作中ではクリスマスシーズンに入りました。

 世間はすっかりクリスマスムードだった。まだ12月に入ったばかりじゃないか、と中堂は毒づいているが、アドベントカレンダーとやらは11月の終わりくらいから窓を開けるらしい。死んでもそんなもん買うか、と中堂は思っていた。天邪鬼なのである。
(大体、クリスマスなんてキリスト教徒にしか意味ないでしょ。無宗教と言う名の世間様信仰の日本でクリスマスを祝う意味、あります?)
 その一方で、クリスマスを独りで過ごしたくない気持ちもあった。時流に乗りたくもないが取り残されたくもない。
 神谷はクリスマスシーズンには必ず来た。ケーキとチキンを持って。その後はお定まりなのだけれど。けれど、クリスマス当日に来たことはなかった。家族と過ごしたのだろう。

天邪鬼中堂。

こうやって書くと神谷さんもほんと意味わかんねぇよな。

ということで中堂さんはクリスマスシーズンに苛立ちを感じています。

「この家って、クリスマスは何か飾るんですか?」
 だから、帰宅してからいつものように手洗いうがいを済ませた小田桐が、唐突にそんなことを言い出して、中堂は「は?」を具現化したよう表情をして相手の顔をまじまじと見つめてしまった。
「は?」
 もう一度言った。
「クリスマスは何か飾るんですか?」
 聞こえなかったと思ったのか、小田桐は律儀に問い直した。
「飾りませんけど」
「あ、そうなんですね。何か買ってきても良いですか?」
「何を買ってくるって言うんですか? もみの木?」
「なんでですか。リースですよ。玄関に飾りませんか? 取り外し簡単だし」
「リース」
 ツリーを買うとか言ったら散々馬鹿にしてやるつもりだったのに、意外と慎ましい……いや、意外でもない。小田桐は割と堅実で現実的だ。
 いや、自分に性関係を強いた男の同居提案を受け入れるのが現実的か?
「まあ、良いでしょう。リースくらいなら、来年までどっかしまっておけば良いですし」
「来年も飾ってくれるんですか?」
 小田桐の顔が輝いた。

アメリカのご家庭とかもみの木買ってくるよね(ド偏見)。

小田桐くんは毎年片付けが楽だからと言う理由でお母さんがリース飾ってたんだろうなって思いますね。

ていうかほんと小田桐この生活に馴染んでるね……。

中堂の欠点

たくさんあるじゃん。

そう言うことではなく……。

「それはそうと、君、クリスマスはご実家ですか?」
「いや、仕事です。あ、予定入れるの忘れてた。後で入れときますね」
「仕事」
「平日ですよ」
「ああ……」
 そう言うことではない。誰とクリスマスを祝うのかが聞きたかった。いや、日本人だから祝うとかじゃないです、とかそう言うことを聞きたいわけではなくて、要するに……。
(クリスマスにどこで夕食を食べるのかと言う事をですね)
 友人とクリスマス会でもするのかとか、それとも中堂には内緒で他に女がいるのかとか、そう言うことを聞きたいのだ!
 翌日、昼休みの時間帯にカレンダーに小田桐の予定が入った。「忘年会@薬局」、「忘年会@サークル」、「忘年会@学部」という文字が見える。
(薬局の忘年会明後日か。早いな。サークルって、何のサークル入ってたんだろう。テニス?)
 あまり運動をするようには見えなかったが。聞いてみよう。
(それにしても未だに大学の同級生と親しいんだな)
 薬学部は確か6年制になった筈なので、24歳まで通う。中堂が学生の時、薬学部に進学した当時の友人たちはやはり4年で卒業していたが。いつからだっただろうか。
(ああ、卒業してからまだ3年かその程度か)
 もっとも、自分は卒業してから割とすぐに大学の友人とも疎遠になったような気がするが。
 思えば、他人に対してあんまり関係を維持する努力をしてこなかったかもしれない。
 だからこそ、小田桐ともいずれ自然に関係が切れる未来が想像できる。そう遠くない未来に、自分たちの関係は終わるだろう。
 維持する努力をするべきか? どうやって? この関係を続けてくれと小田桐に頼む?
 あまりにも馬鹿馬鹿しい想像だった。首を横に振る。
 早く終わって欲しいと思う一方で、いつか来る終わりはまだ先だからと自分を安心させた。
 安心?
 この関係が続くと思えることが自分には安心なのだろうか。
「……嫌だなぁ」
 小田桐が帰って来なくなる日が来ると思うと、なんだか嫌な気分になって、そのことに中堂は驚いた。
「……」
 自分の望んでいることがわからなくなって、カレンダーを閉じる。スマートフォンを伏せて置いた。

何かが嫌だなって思った時にこいつすぐ思考停止するんですよ。

とは言え変な所でずる賢いから考えないための理屈だけは延々と考え続けるって言う。嫌なことに直面する勇気がない。

リース買ってきました

そんなことを言ってたら行動力の人・小田桐(布団買いに行ったりする)がリースを買ってきました。

「どこに飾りますか? 靴箱の上にしますか?」
「任せます。よく見せて」
 小田桐が渡してくれるのを受け取る。よくある緑のリースだ。赤い実が飾ってある。「クリスマスリース」と聞いて万人が思い出すものだ。もちろん本物ではなくて作り物なのだろうけど。加工がされていて、全体的にきらきらしている。てっぺんにはベルとリボンが飾ってあった。
「良いじゃないですか」
 自然に頬が緩んだ。クリスマスのものを見て、楽しい気持ちになったのはいつ依頼だろう。純粋にクリスマスを楽しんでいた頃がもう思い出せない。天邪鬼を発揮してあれこれ理由を付けていたけれど。
 12月に浮かれる口実としてのクリスマスがこんなに楽しくなるものだったなんて。
「中堂さん? 大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
 自分でもわかってる。泣いていることが。袖で涙を拭うと、リースを小田桐に返した。
「ありがとう。クリスマス終わるまで、飾っておきましょうね」
 珍しく素直な中堂を、小田桐は茶化したりしなかった。涙が止まるまで黙って傍にいた。玄関は寒かったけど、不思議と嫌ではなかった。
「君は優しいですね」

そう言うことを繰り返してるからすぐ感情が一杯一杯になって捨て鉢になったり怒ったり泣いたりするんだけどこれってわがまま上司の特徴みたいだな(ド暴言)。

「そう言えば、サークルの忘年会予定入ってましたけど、君ってサークルは何に入ってたんですか?」
 夕食を食べながら、中堂は何気なく尋ねた。
「漢方です」
 小田桐は学部を答えるような気軽さでさらっと答える。中堂の箸が止まった。
「は?」
「漢方ってほら、中国の……」
「いや、そんなことを聞いてるんじゃないんです。え? 漢方サークル? なにそれ」
「漢方について色々調べるんですよ」
「えええええ?」
「面白そうだったから入って、結構面白かったですよ。今も仕事に結構生きてます」
「へええええ……?」
 未知の生物を見るような目で見てしまった。小田桐は少し照れた様な顔をする。
「よく驚かれるんですけど、漢方面白いですよ」

そんな小田桐は漢方サークル出身です。

歩み寄りの兆し(フラグ)

 小田桐が、乱暴に言えばそこまでの薬学オタクだと思っていなかった中堂は、ある種のショックを受けながら風呂に入った。洗い物は俺やりますよ、と小田桐が引き受けてくれたおかげだ。
(私の知らない小田桐くん……)
 当たり前である。出会ってまだ1ヶ月かそこらだ。自分が彼について知っていることと言えば、忍耐強いこと、豚汁が得意料理であること、中堂のハンバーグが好きなこと、そして、優しいこと。それだけ知っていれば充分とも言える。
 クリスマスを毎年楽しみにしていたのだろう。毎年きっと何か飾っていたのだろう。これまでの彼の人生で。
 どんな風に暮らしてたんだろう。授業を終えてから、漢方サークルに行って、家に帰って、何をして過ごしていたんだろう。

20話予定の17話でこれだから「お、ついに中堂も歩み寄りか?」と思うでしょ? 18話でまたわがまま言い出すから見てな。

とは言え中堂さんはどんどん小田桐くんが好きになっちゃう(無自覚)から小田桐くんのことが知りたくて仕方なくなっちゃう……。

「寝る前に抱きしめてくれませんか」
「へ?」
「少しだけで良いので。お風呂出たらすぐ部屋に戻ってください」
「え? は、はい……わかりました……?」
 頭に大量の疑問符を浮かべながら、小田桐は了承した。首を傾げながら風呂へ向かう。中堂は部屋に寝室に入った。
 性的なものを一切排した小田桐に触りたい。それで彼の人生が知れるわけでは決してないのだけれど。自分はあまりにも小田桐の表面的なものにしか触れていなかった。どうしてそんなことを欲しているのか。終わりが予定されている自分たちの関係に、互いの人生の情報は必要なのか。
(馬鹿馬鹿しい)
 馬鹿馬鹿しいのは自分の望みだ。
(そんなもの要らないのに)
 神谷の時と同じ失敗をするのか。そう思うと猛烈に不快だった。そんなことを問うてくる自分の理性が邪魔だった。
「どうしたんですか、そんな虫歯を我慢するみたいな顔をして」
 気が付くと、スウェットを着た小田桐が部屋に戻ってきていた。時計を見ると、結構な時間が経っている。
「歯が痛いんですか?」
「身体はどこも痛くありません」
 話は終わりだと言わんばかりに両腕を広げる。小田桐は少し照れ臭そうに笑うと、ベッドに入って中堂を抱きしめた。
「どうしたんですか? 突然」
 甘やかすような声で尋ねられて、じんわりと温かさが広がった。
「別に……たまには良いかなって思っただけです。嫌でしたか」
「いえ、俺もたまにはこういうの良いかなって思いますよ」
 何も疑わず何も躊躇わず背中に回される腕。胸にくっつく小田桐の顔。
「おやすみなさい」
 小田桐のその声が呪文か何かであったかのように、それを聞いた瞬間、中堂はすとんと眠りに落ちてしまった。

これはまた18話で小田桐が解説するんですが、何だかんだずっと緊張していたのが、徐々に小田桐に受け入れられて、そのことを受け入れて、疲れがどっと出たのでころんと寝てしまったと。

頭痛持ちがあとで頭痛するやつです(頭痛持ちからのド偏見)。

これあと3話で畳める? 大丈夫? とお思いの向きもあるとは思いますが、畳みます。

それではまた。ごきげんよう。


これはとても真面目な話ですが生活費と実績になります。