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マスメディアの役割

今日は、「マスメディアの役割」について書いていきたいと思います。

斉藤兵庫県知事、石丸伸二さん、トランプ次期大統領に共通する事は、何だと思いますか?

この三人に共通する事項とは、実は、「SNS」です。もっと、具体的に言うと、SNSの効力を最大限に使用したと言うことです。

ソーシャルメディアとSNSの違いとは?

日本では、この「ソーシャルメディア」と「SNS」を同義語として扱われていますが、この二つの定義は、全く違うものです。

「ソーシャルメディア」とは、インターネットを利用して誰でも手軽に情報を発信し、相互のやりとりができる双方向のメディアをいい、その種類として、ブログやSNS、動画共有サイト、メッセージングアプリ、情報共有サイト、ソーシャルブックマークと6つに分類されます。

一方、「SNS」とは、「Social Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス)」の略で、特定のプラットフォームを使用して社会的な繋がりを提供するサービスのことを表します。有料のサービスや無料のサービス、投稿する内容の形式がテキストや画像、動画など、プラットフォームにもさまざまな形がありますが、基本的にはこれらをまとめて「SNS」と呼びます。具体的には、InstagramやX、Facebookなどが挙げられます。

では、この「ソーシャルメディア」と「SNS」との違いは何かと言うと、SNSとは、発信者とユーザー又は、ユーザー同士が、コミュニケーションを行う場であるのに対して、ソーシャルメディアはSNSを含むものの、必ずしもコミュニケーションを取ることが重要ではないと言った点です。

つまり、SNSは「ユーザー間のつながり」という目的に焦点を当てた狭義なものであり、その上位に位置するのが「情報を双方向でやり取りできるメディア」と定義づけられたソーシャルメディアになります。

因みに、ソーシャルメディアには、「コミュニケーション(facebook,Line)」「レビュー・口コミ」「集合知(Wikipedia、Q&Aサイト、まとめサイト)」「情報発信(「X」「YouTube」「TikTok」などのSNS)」と言ったものがあります。

マスメディアには有って、SNSに無い物

次に、上記のSNSを最大限に使用した三者に共通して見られる現象が、「主敵」が既存のマスコミ(マスメディア)であることです。

マスメディアとは、不特定多数の大衆(マス)に情報を伝達する媒体(メディア)をいいます。

また、マスメディアは不特定多数の大衆を対象に、多様な情報を伝達する「マスコミュニケーション」の役割を担っており、その為に、マスコミと呼ばれることもあります。

これは、ソーシャルメディアが誕生する前から有った情報の伝達の媒体(メディア)であり、通常は、雑誌や新聞といった紙面やテレビ・ラジオ放送という形で行われます。

最近では、マスメディアが、従来の紙面や放送と言った形ではなく、インターネット上にディジタルといった形で情報が伝達される場合がありますが、基本的には紙面や放送が主体となります。この為に、これら紙面や放送で情報を伝達するマスコミの事を「オールド・メディア」と呼ぶことがあります。

では、マスメディアに有ってSNSには無いものとは、一体何か?

マスメディアが持つ機能が、「見張りの機能」「討論の機能」「教師の機能」です。

1つ目の「監視の機能」は、社会環境の現状や変化に対し、情報を伝えて警告を発する役割。2つ目の「討論の機能」は、社会環境に関して構成員間の意見を整理し、世論を形成させる役割。3つ目の「教師の役割」は、価値観や社会的規範、知識などを次の世代へとつなぐ役割です。

マスメディアは、以上の様な機能を持つために、立法・行政・司法の三権を監視し、国民に情報を提供することで民主主義社会を支える、大きな影響力を持つことから、国家権力である三権に次ぐ存在として、「第4の権力」と呼ばれるようになりました。

その為にも、マスメディア(マスコミ)が提供する情報は、正確性と客観性そして公共性が不可欠となります。

一方、SNSの特徴は、

1 交友関係を広げられる。
2 気軽に情報発信・拡散ができる。
3 情報収集にも活用できる。

がありますが、ソーシャルメディアの最大の特徴が、2番目の特徴である「気軽に」発信・拡散が可能であると言うことです。

一方、マスメディアでは、発信者とユーザーは分離されており、著作権等の民法や放送法などの何重もの厳格な法律や規制(コード)に縛られているということです。

つまり、SNSの最大の武器は、マスメディアには無い「気軽さ」「匿名性」そして「拡散」であると言えます。

つまり、SNSを使って選挙運動をすると言うことは、「気軽さ」や「拡散性」を利用して、自分にとって一方的に有利な情報のみを伝達しこれを拡散することを目的としています。

故に、「見張りの機能」「討論の機能」「教師の機能」を持つマスメディアが、この一方的な情報を拡散するのに邪魔になり、結果的にマスメディア批判へと繋がっていきます。

SNSと心理戦

SNSは、「気軽さ」「拡散性」を利用すれば、その気になれば、幾らでも悪用することが可能であるということです。その最たる例が、「情報心理戦」です。

「情報心理戦」とは、情報を操作して世論を作り上げる事を言います。言葉だけを聞くと、高度な心理学の知識が必要であると思われるかもしれませんが、実は、非常に簡単な方法によってこの「情報心理戦」を仕掛けて、自分に有利な世論を作ることができます。

そして、怖いことに、この情報心理戦とSNSの親和性が非常に高いという事実です。

具体例を示すと、2014年6月17日付けで『米国科学アカデミー紀要』という学術雑誌に、ある論文が掲載されました。タイトルは「ソーシャルネットワークを通じた大規模情動感染に関する実験的根拠」。著者はFacebook社のデータサイエンスチームのアダム・クレイマー氏とカーネル大学の研究者ら3人です。

この実験の主目的は、「ソーシャルネットワークを使って情動感染を起こすことができるのか?」と言う物です。

情動感染とは、他者が感情に動かされている姿を見て、自分もその感情が感染してしまう現象のことを言います。まるで風邪が空気感染するように感情も感染してしまう現象を言います。

つまり、簡単に言うと、人の感情をSNSを使って一般大衆の感情を操作できるかどうかと言うことです。

実験は、英語版のFacebookを訪問するユーザー68万9003人を対象に、2012年1月に1週間行われました。ニュースフィードで友達の投稿を表示するアルゴニズム(計算方法)を変更し、ポジティブワードが含まれる投稿が表示される回数を少なくしました。ただし表示されないのはニュースフィードのみであり、友達のページ(タイムライン)にいけば表示するようにしています。

この実験の結果は、驚愕すべきものでした。

実験の結果、ニュースフィードでポジティブな表示が減ると、ユーザー自身の投稿でもポジティブワードが減り、ネガティブワードが増えたことがわかりました。

この実験の結論として、SNSによって、他人の感情が、自分自身の感情に影響を与えうると。更に怖いことに、従来の情動感染で言われているような直接の対面は必須ではないと結論付けています。

これは、SNSの発信者が、情報操作を行うことにより、ユーザーの感情を操作できると言うことです。更に、これは、ユーザーが意識していない状態で行われると言うこと、つまり、「洗脳」が可能であることを示しています。

正当性の彼方に

よく選挙で勝利すると、多数決の原理により、自分は選ばれて当選した事に対して、選挙で勝利した陣営では、「民意により」というフレーズをよく使用します。

重要なことを決定するときに、大多数というスカートの影に隠れることができるのは、なんと幸福なことだろう。

上のフレーズは、近代史上、最も忌み嫌われた独裁者である、ヒットラーの言葉です。いみじくも、このフレーズは、民主主義の大原則である「多数決の原理」が、完全に善なるものではなく、使われ方によっては悪にもなるといった不完全性を表しています。

また、19世紀イギリス(大英帝国)の歴史家・評論家であるトーマス・カーライルは、

真理は喝采では作れない。是非は投票では決められない。

と「民主主義の限界」を明確に認めています。

いじめの例をとると、「多数」のいじめっ子やいじめの傍観者は、「少数」のいじめられっ子(いじめの被害者)よりも正しいのか?

この様に、量ではなく質が、民主主義の正当性を作り出すものです。

更に、明治から昭和にかけて、日本の政治家として、当選回数、議員勤続年数、最高齢議員等の複数の記録を保持している事から「憲政の神様」「議会政治の父」と呼ばれており、昭和の軍国主義に最後まで抵抗した尾崎行雄は、以下の様な言葉を残しています。

「近頃、民主主義をはきちがえて、自分の、または少数団体の欲望を満たすために、他の多数の迷惑を顧みず、わがまま勝手を振る舞う心得違いのものがだいぶ増えたようだ。こうゆう不心得ものに、正邪善悪の物差しを教え込むことが、民主主義教育の一大使命である」

この言葉は、当に、今の時代を表しています。

つまり、昭和初期の大衆の不満を拾い上げる形で、民主主義の名をかりて、日本を破滅の淵に追い詰めた「軍国主義」という全体主義の時代へ、今や、日本は、再び向かおうとしています。

マスコミは、最近、古いだの、中立ではなく左に偏向しているなど、また、取材の仕方に批判を浴びて「マスゴミ」などと揶揄されていますが、「第四の権力」としての矜持を今こそ示すときであると思います。

最後に、トランプ氏に敗れたハリス氏が敗北宣言で語った言葉を紹介します。

「戦いは時に時間を要する。だがそれは、勝てないという意味ではない」

日本が、再び、ポピュリズムという全体主義に向かうことがない様に願って。








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