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「近所のコンビニでのトラブル ~ 抗がん剤治療を受けていた頃の日記より」

 5年前、がん手術を受けた後、半年以上に亙る抗がん剤治療を受けました。その間、「体がだるい」「手足が痺れる」などの、比較的軽度の副作用が表れました。
 その頃の日記です。

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 2019年8月20日

『信じられない出来事』

 数日前、近所のコンビニに通販の支払いに行ったときのこと。

 奥から店長が出てきて、こちらに向かって怒鳴り始めた。

 何を怒っていたか・・・、僕の感覚では、完全に逆切れ。

 具体的には、大体こんなこと。

 一旦時間を遡る。

 レジ担当の店員が、ポイントカードを返す際、いつもこちらの状態を見ようとしない。まだ財布から現金を取り出そうとしている最中、その動作を遮るように、

 「ポイントカードをお返しします」

 そう言いながら、両手を差し出してくる。

 ― 何でそう急かすの? ―

 差し出されても、こちらは受け取れる体制に無いのは、見ればわかるはず。体がだるい状態で、そんなことが度重なると、それだけでストレスになる。
 受け取れる状態であることを確認してからにしてほしい旨、店員に伝えた。

 大声で元気よく対応するのが、その店のモットーらしいが、具合の悪いときは、こういう対応は、ただうるさいだけで不快に感じられるものである。
 それは、まあ、たまたまこちらが具合悪いだけで、皆がそうだというわけじゃないから我慢するとしても、カードの受け渡しぐらいは、むやみに急かすようなことはせず、こちらの様子を見て動いてもらいたい。
 マニュアルどおりの対応に終始するのでなく、客との呼吸、コミュニケーションを、もっと大事にしてほしい。
 客を待たせないのがモットーなのだろうが、客の状態を見もせず、マニュアルだけに忠実に動いているだけだと、肝心の客を置き去りにすることになる。

 体調の良いときならば、そんなことを丁寧に伝えるだろうが、ただでさえ体がだるい状態で、多くの言葉を発するのも大儀だった。

 「今、受け取れるような状態じゃないでしょ。ちゃんと見て!」

 どうやら、その若い店長(たぶん40前後)は、こともあろうに、その進言を受け止めるどころか、逆に根に持っていたらしい。
 今日それが爆発して、こともあろうに、客の僕に説教を始めた。

「世の中は、あなたを中心に回っているわけじゃないんですよ」

 え? 無理難題を押し付けたわけじゃないんだけど・・・
 店の方針で一方的に客を振り回すような対応が不快だと伝えただけだ。

 ― 中略 ―

「ポイントカードがどうこ言うのなら、もう来ないでください!」

 なんだこいつ? 

「私はここの店長ですよ! あなたは店長をやったことないでしょう? 大変なんですよ!」

 ※心の声(知ったことじゃない。それがお前の仕事だろうが)

 挙句の果てに、

「あなたみたいな人は(云云かんぬん)」

 ― 何をえらそうに ―

 話の通じない頭の悪い男の相手をするのが面倒になってきて、

 「本部の連絡先教えて」

 「なんで僕が教えなきゃならないんですか? 教えなきゃ何にもできないんですか?」

 完全に頭が壊れている。こちらを不当に貶め始めた

 ここに書くことは憚られるが、実際には、次から次へとこちらを愚弄するような言葉を連発している。

 相談センターの電話対応時間帯を過ぎていたので、翌日、本部に電話すると、数時間後に営業担当者から侘びの電話があった。

 「防犯ビデオを確認しましたが、店長のほうが言い過ぎていたようで、申し訳ありません」

 言い過ぎも何も、端っから言っちゃいかんことを並べ立てている。

 その若い営業マンは対話のできる人で(それが当たり前なのだが)、ご指摘していただくことは、こちらにとっても有難いことです。などと30分くらい話し込んだ。

 「わざわざこちらに謝らせるなんてことは、面倒なのでしないでください。でも、自分がやったことの意味を解らせてあげてくださいね」

 そういって通話を終えた。

 いつもマニュアルを読み上げるかのような挨拶を繰り返し、それを従業員全員に徹底させることを「優良店長」だと思い込んでいる頭の固い真面目人間。
 さわやか青年風を演じているが、見ているこちらは、なんか出来の悪い素人芝居を見せられているようで疲れるだけだ。

 ― お前さんの心の中は、一所懸命真面目に仕事をしている様を見せることによって、客に褒められたい一心なんだろう? ―

 そういう「褒められたい一心の真面目人間」が、褒められずに咎められると、堪え性もなく逆切れする。
 一旦切れると、論理もクソもない。無礼千万極限状態を爆走するトンデモ状態と化す。
 自分が絶対に正しいと思い込んでいるから始末に負えない。

 まったく、いろんな人がいるもんだね。
 
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 この頃は、前述のとおり、抗がん剤治療を受けていて、体がしんどかったので、このような事態を招きましたが、今だったら、もう少し違う展開になっていたかとも思います。

 この店長、その後しばらくして、店から姿を消しました。

 新店長曰く、

  「いろいろありまして・・・」

 その時は、それ以上、何も聞かなかったのですが、昨夜、そのコンビニを訪れた際、ひょんなことから、馴染みの店員さんと、この「懐かしの」元店長が話題になりました。

 あの元店長の「声出し元気対応」は、レジで並んで仕事していると、肝心のお客さんの声が聞きとりにくく困ったそうです。

 「あの店長は、店員にいろんなことを押し付けてました。お客さんとのトラブルも結構多かったんですよ」

 ― なるほどね ―

 「あれ、雰囲気の押し付けだよね。居酒屋じゃ、あるまいし、こっちは普通に買い物が出来ればいいのであって、疲れてるときなんかしんどかったよ」

 「そうですよね」

 「あ、ごめんね。こんな変な話。でも、今となってはそれも懐かしいよね」

 店員さんは、笑顔で頷いていました。

 あの元店長さん、今頃どうしてるかな? 失敗を教訓として活かしていると良いんだけど・・・。

 

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