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手鏡 おひや
2022年3月30日 11:04
仕事から帰ると、その女はいた。 居室の真ん中に座り込み、胸元まである髪を耳にかけ一心不乱にスマホを触っている。画面に触れている親指だけが忙しなく動いていた。 俺が何も言えずに立ち尽くしていると、そいつは立ち上がり、「おかえり、まってたよ」と言った。薄暗くて顔はよく見えなかったが、声のトーンから満面の笑みを浮かべているのがわかる。 (なんで?確かに鍵は閉めていたはずなのに) 俺の困惑を