私の空っぽを満たすもの
7月末。
精神的な病の診断を受けた。
心が無の状態で仕事をこなす自分と、共同生活で自分らしく人と関わり合う自分とが乖離していること
自分のキャリアを自分の判断軸やタイミングだけで好きなようには決められないこと
特別で大切な人との関係性が、私の全く意図しなかった要因とタイミングで変化したこと
そして、私が感じている気持ちを受け取られず、蔑ろにされていると感じたこと
このふたつが大きな要因だったと思う。
その直後、完全に免疫が下がっていたのだろう。
巷で流行りの感染症にかかった。
8月中旬までの2週間、隔離生活がはじまった。
発熱と咳が続く。
味と匂いがしない。食事がタスクになる。
もちろん、誰とも会えない、話せない。
ベッドで横になり、でろでろに溶けることしかできることはなくなった。
からっぽになった器を、私は何で満たすのだろう?
これは、私が私を取り戻すまでに過ごした「心の1週間日記」。
day0
「LINE返信する元気がない、調子悪い〜」と、
あくまで療養中の病人に電話をかけてきたあなた。
けっきょくいつもどおり盛り上がって、深夜まで話し込んでしまう。
元気があったらそれはそれで、なくても力になりたくなる。
私は、あなたの世界に触れていたい。海には、あなたのもつ可能性への期待と信頼がとめどなく流れているから。
またここから吹きたくなったらおいでね。
その時々の私たちを、つくっていこう。
day1
外に出る。
うだるような暑さ。視界が揺らぐ。蝉の声。空気を吸い込む。太陽を仰ぐ。
「外だ!私はやりとげた!!」
ほんの少しだけ、口角が上がった。
day2
「出所おめでとう!」
そう言って高らかにブーケを空に掲げ、笑顔で渡してくれたあなた。
「今はそう思えないかもしれないけど、必ずまた元気に過ごせる日が来るよ!調子がいいときのあなたは太陽だから。俺は知ってるよ」
その言葉に勇気が湧いたよ。
療養中に大量に差し入れてくれたプロテイン、グルタミン、粉飴。おかげさまで飲み切る前に元気になりました。
day3
「わー!おかえりなさい!!帰ってきてくれてうれしい、あなたがいるとホームってかんじがする」
とやわらかい笑顔で抱きしめてくれたあなた。
いつも自分の言葉で愛をまっすぐに表現するあなたを、私もまた愛していたよ。またねって手を振れてよかった。
day4
「出所記念飲み付き合って!!」と駄々をこねる私に、「やだよもう酔ってんだよねむいよ」と言いつつも付き合ってくれたあなた。
私のキャリア選択を知って、いつもひねくれているあなたが心から祝福してくれた瞬間、
「ああ、この人が笑顔で過ごせるホームをつくるのが私の仕事なんだな」
と改めて思った。
day5
旧友から、
「あの時人は変えられないと言ってあなたとの時間を否定したけど、僕は気づくのが遅かっただけでたしかにあなたに変えられていた」とメッセージが届いた。
あれだけ向き合うことから逃げてきたあなたが、経験から感じたことを振り返って言葉を紡いでくれたことに、心からの感謝とリスペクトを感じた。
day6
たくさんの、素晴らしい音楽を浴びた。
「信じてんぜ君を だからあなたに贈りたいんだ 花束」
「幸せのためなら いくらでもずる賢くいようよ いつまで一人でいる気だよ」
「胸の中渦巻いているlove また痛み出す前に 手を取り合おうよ」
「分かることなどいくつもない 分かりたくないこともいっぱい」
「過去を祝え 明日を担え 命揺らせ」
太陽、風、雨、音圧。
混沌とした状況の中、心を決めてステージに立つ人たちが奏でる音楽には、全身に確かに届いた。
立っていられないほどの、殴られるような、染み渡るような、大きなエネルギーがそこには流れていた。
day7
いつものお散歩。
お花とコーヒーを買いに行く。
今日は現金も持った、いちおうね。
左手にお世話になった人に贈る日本酒、右手に大好きなお店のコーヒー。手には溢れちゃうけど、小さなブーケも買っちゃった。
そして隣には、愛しい、大切な人。
あれ、もしかして私今、しあわせかも。
くるっと1回転、ダンスをする。
何かを好きでいられる健康な身体、心、そして私
これが土だ。
土を、愛がコーティングしている。
そこに、紡がれた言葉、手のぬくもり、たしかにつながっている感覚、ある人の人生の1ページに接点をもてること、覚悟、尊重、祝福。
たくさんの大切なことが、乾いた器にどっと流れ込んできた。
こんにちは、アップデートした私!
どんな目で世界を見るだろう。
見た世界を誰と共有できるだろう。
たまにはきっとまたヒビが入ってしまうけれど。
これからも、自分の器を好きなもので満たして、しなやかでつよい私であり続けたい。
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