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元伊藤忠社長の教え「仕事と心との流儀」まとめてみた

名著から人生100年時代を生きるためのエッセンスを学ぶこのシリーズも今回で6冊目!前回の本セコム創業者、飯田亮さんの「正しさを貫く」に続き、今回は元伊藤忠社長、丹羽宇一郎さんの「仕事と心の流儀」を取り上げます。

丹羽さんの哲学はこれまでの名著に共通するように、仕事、成長、人生についての長期的で本質的なエッセンスが紹介されています。この記事ではそんな丹羽さんのメッセージを自分なりの解釈と実体験を踏まえつつまとめました。以下では本書の構成に沿って、5つの章に分けて丹羽さんのメッセージをご紹介します。

第1章:逆境が心を成長させる

逆境でも挫けず努力し続けることで、人は成長する

辛い仕事こそ人を成長させる、これが本書の一番ベースにあるメッセージです。

絶体絶命のピンチ、逆境は長い人生で必ず訪れるもの。逆境に立たされた時、努力し続けられるかどうかが問われます。「もうダメだ」と自らサジを投げてしまっては決して乗り越えられない、逆に努力し続けることで必ず報われると丹羽さんは断言します。

努力を続け、逆境を乗り越えることで、人間は鍛えられ強くなっていく。逆境は人生の転機になりうる天が与えてくれた機会だ、と考え努力し続けることが大事だと丹羽さんは言います。

努力し続けてDNAのランプを灯せ

「DNAのランプがポッと点く」自分の能力が一皮剥ける瞬間のことを丹羽さんはこう表現します。DNAのランプを灯す、一皮剥けるにはどうすればいいか。それは毎日努力を続けることしかないと丹羽さんは言います。

DNAのランプが灯ると、仕事への姿勢が変わり、仕事が面白くなる。そこで継続して努力を重ねると、さらに次のDNAのランプが灯る。こうして次々DNAのランプを灯していくうちに仕事がどんどん楽しくなり、社会人として、人として成長していくことができます。

実体験:お尻に火がついた卒論、気付いたらレベルアップ

逆境でも挫けず努力し続けることで、人は成長するということは、僕自身の体験からも実感しています。大学4年生の頃に卒論に取り組んだ際の経験なのですが、これが本当に苦しかった。締め切り一月前に提案手法に欠陥が見つかり絶望的な状況でした。それでも最後の1ヶ月間必死に取り組み、何とか卒業にこぎ着けました。

最後の1ヶ月は本当にしんどかったのですが、少し立つと自分がレベルアップしていることに気がつきました。以前は検討もつかなかったことが、少しわかるようになる。散らばっていた知識が繋がり、その意味がわかるようになる。逆境の1ヶ月間がなければきっとこのレベルアップはなかったと思います。(もう二度とあんな経験はしたくありませんが、、笑)

逆境において努力し続けることで一皮剥ける、DNAのランプが灯るということは、自分にとってとても腑に落ちるメッセージです。

第2章:仕事と人生

仕事は人生、だからこそ働く意味を意識する

仕事を通して、あらゆる感情を経験し、様々な経験を積み、人として成長することができる。仕事以上に人として成長できる機会はなく仕事は人生そのものだと丹羽さんは断言します。

仕事は人生、だからこそ働く意味を意識することが非常に重要になります。ある程度の金銭的報酬を超えた後は、人としての成長、人への深い理解と豊かな人間関係、社会への貢献といった精神的な部分を満たすことが働く意味なのではないでしょうか。

キミはアリになれるか、トンボになれるか、人間になれるか

丹羽さんは人の成長を「アリ」「トンボ」「人間」の三段階に分けて定義します。

「アリ」はがむしゃらに目の前の仕事に取り組み、社会人としての基礎力を身につける時期です。アリのように地を這い、がむしゃらに目の前の仕事に懸命に取り組むことで、少しずつ知識が増えていき、常識も身についてきます。

「トンボ」は複眼的な視点で物事を捉え、仕事に向き合う時期です。仕事の何たるかが徐々にわかり、アリの頃より高い視座で仕事に向き合うようになります。「これまでの仕事のやり方よりもっといい方法があるんじゃないか」と様々な可能性を探る姿勢、多角的に検証する視点を持つことが求められます。

「人間」は高い視座と「利他の精神」を持ち、リーダーとして会社を引っ張る時期です。担当する仕事や部署全体のことなどを、これまでよりさらに高い視座で判断できるようになり、会社のリーダーへ近づいていく。そこには血の通った温かさ、自分をコントロールできる力、部下や後輩を思いやる優しさ、リーダーシップなどが求められます。自分ではなく他者を思いやる「利他の精神」を持つ、これが「人間になる」ということです。

人の成長は努力次第

人によって成長のスピード、最終的に到達するステージは異なり、「人間」にたどり着ける人は一握りです。何がこの差を産むのか、それはどれだけ努力したかだと丹羽さんは考えます。元来人の能力や適性にはほとんど差はなく、開花するかどうかは努力次第。DNAのランプが灯るまで努力し続けることが人として成長できるかどうかを左右します。

実体験:研究室で「人間」を目指す

研究室での活動には丹羽さんのメッセージに通ずるものがあると感じています。

現在僕は修士二年生なのですが、学部生時代は右も左もわからず、目前のことに一生懸命で悪戦苦闘する「アリ」そのものでした。しかし卒論や学会発表を通して少しは知識がつき、今では学部生の指導にあたる立場にあります。一つのものの見方だけでなく、様々な要素を検討しながら研究指導にあたるようになった今は「トンボ」にあたると思います。

では研究室における「人間」とはどんな存在でしょうか。それはきっと10年後の後輩の役に立つライブラリや知見を残す人だと考えます。僕が今研究のベースにしている技術は10年以上前の先輩が築いたものです。後輩の役に立つようにと丁寧に書かれたコードやドキュメントがあるから、今僕は研究ができています。

10年先にも残るものを作るのはとても労力がかかります。「自分さえわかればいい」といった利己的な考えでは決して作ることができません。まだ見ぬ後輩のことを思う利他的な人だけが作ることができる、そういった人こそ「人間」なのだろうと考えています。丹羽さんのメッセージを受け、僕もまさに今ライブラリを制作している最中です。

第3章:上司と部下

人という資源を最大限生かすことで組織は強くなる

組織にとって最大の資産は人だ、と丹羽さんは断言します。ではこの人という資源を最大限活用するためにはどうすればいいか。「重要な要素は上司と部下の信頼関係」「部下を伸ばす上司」「謙虚でひたむきな部下」が重要だと丹羽さんは言います。

上司と部下の血の通った信頼関係

組織を強くするために不可欠なのは「この人のためなら」と部下が奮起するような上司と部下の血の通った信頼関係です。このような信頼関係は一朝一夕で築けるものではありません。上司が部下一人一人と向き合うことで徐々に築かれるものです。

人と向き合うとはどういうことか、それは仕事ぶりだけでなくプライベート込みの部下の「生活履歴」を把握し、労い、励まし、心を配ることです。時には酒を飲み交わしながら血の通った信頼関係を築くことが大事だ、と丹羽さんは言います。

部下を伸ばす上司

人という資源を活かすためには、一人一人を育てることが重要です。このため、上司は信頼関係を築くと同時に、部下一人一人が成長できるように心を配る必要があります。人の成長を促すには、認め、任せ、要所で褒めろと丹羽さんは言います。

謙虚でひたむきな部下

では部下に求められるものはなんでしょうか。それは謙虚でひたむきな姿勢です。謙虚であるためには、自己評価をしないことが重要です。そもそも自身の評価は他人がするものであり、自己評価は意味がありません。自己評価と周りの評価が乖離し不満を持つことなく、謙虚な姿勢が求められます。

人事を尽くして天命を待つ」という気構えで目の前のことに打ち込む謙虚でひたむきな姿勢が重要です。

実体験:距離を保つと快適、しかし信頼関係は生まれない

大学時代にダンスサークルで活動していた時のことですが、僕は後輩と一定の距離を置いていました。ボロが出てしまうのではと恐れる見栄っ張りな僕にとって、一定の距離がないと居心地が悪かったためです。

プライベートに踏み込まず、会話はサークルの活動に関してだけ。自分の保身ばかり考え、人と向き合い心を配ることを怠った結果、信頼関係を築くことができていませんでした

サークル時代の反省から、研究室では後輩一人一人と向きあい心を配るように意識しており、「何か僕にできることはありませんか?」と声をかけてもらえることが増えました。すぐ見栄を張り距離を取りたがる癖はまだまだ抜けませんが、後輩と少しずつ信頼関係を築けるようになったのかなと感じています。

第4章:組織と個人

事業には「清く、正しく、美しく」が不可欠

組織というものは人から成ります。人には誰しも私利私欲があり、私利私欲に身を任せると他者の利益を害する悪事へつながってしまいます。世のため人のためになる事業を行うことが企業の経済活動の本質であるとすれば、価値ある事業を行うためには「清く、正しく、美しく」を個人レベル、組織レベルで徹底し、私利私欲を抑えることが重要です。

個人レベルでの「清く、正しく、美しく」:良心に従う

自分の良心に忠実に生きること、これが私利私欲を制御し、個人レベルで「清く、正しく、美しく」生きるということです。

社会人として良心に忠実に生きることとは、TPOをわきまえ柔軟に対応しつつも、良心にのっとり忖度なく意見を主張することと言えるでしょう。「空気は読んでも顔色を読むな」と丹羽さんは言います。

組織レベルでの「清く、正しく、美しく」:ガバナンス

組織レベルで各個人の私利私欲を制御し、価値ある事業を行うために必要なものはガバナンス(企業の統治能力)と表現されます。そしてガバナンスの根幹をなすのはコンプライアンス三原則「TDR」です。「T」は経営の透明度(transparency)、「D」は適切な情報開示(disclosure)、「R」は説明責任をはたすこと(responsibility)を意味します。

トップに立つ人間がTDRをつねに意識し、「清く、正しく、美しく」を率先垂範することで、部下から信頼され、部下もその姿勢を見習うようになります。その意味でトップの役割は非常に大きいと言えるでしょう。

実体験:良心に従うことでパフォーマンスが上がる

個人レベルの話ですが、「七つの習慣」を読んでから良心に従うことを意識しています。私利私欲に支配されることがなくなる、かはわかりませんが、パフォーマンスが上がったと感じています。

見栄を張って少し誇張して報告したりすると、良心の呵責やバレる心配で精神面に負荷がかかり、結果パフォーマンスが下がります。良心に従い全て正直に報告することで、このような無用な精神面の負荷が減りパフォーマンスが上がったと感じています。

第5章:努力とチャンス

上述の通り、丹羽さんは努力の重要性を繰り返し問いています。情熱と気力をもって常に努力し続けることで、社会人として、人として成長するための道です。そして日々の努力の「当たり前」の基準を高めるために、海外のエリートと若いうちに接することが重要だと言います。

また努力はチャンスにつながります。誰だってチャンスはある、ただそのチャンスに気付くためには、日々努力し勉強することが不可欠だと丹羽さんは言います。日々の勉強から情報への感度を高め、「これは先々参考になるな」と気が付くか、見過ごしてしまうかが大きな分かれ目なのです。

僕自身日々の努力によってチャンスをモノにしたという経験はまだありませんが、読書やニュース触れることで情報への感度を高めるよう努めているところです。

まとめ

今回は元伊藤忠社長、丹羽宇一郎さんの「仕事と心の流儀」を取り上げました。今回ご紹介した仕事、成長、人生のエッセンスが詰まった丹羽さんのメッセージが皆様の気付きに繋がることを願っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました!

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