見出し画像

逆さまにすると何が見えてくるか~3匹のこぶたと成人学習~

本当に「知っている」?あの有名な児童文学

3匹のこぶた、誰でも知ってる有名な児童文学。

あるところに母さん豚とその三匹の子豚たちが住んでいました。母さん豚は子供たちを独り立ちさせるために、家を建てさせます。一番目の子豚はわらで家を建てますが、オオカミがやってきて家を吹き飛ばし、子豚は食べられてしまいます。二番目の子豚は木の枝で家を建てますが、こちらも同じように家を壊されて食べられてしまいます。三番目の子豚はレンガで家を建てます。オオカミは同じように吹き飛ばそうとしますが、レンガの家は丈夫なのでびくともしません。しびれを切らしたオオカミは、煙突から忍び込みますが、煮えたぎっていた鍋いっぱいの熱湯に飛び込んでしまい、オオカミはゆでられて、子豚に食べられてしまいます。

(あらすじ引用:http://kodansha-novels.jp/1908/mariyukiko/)

最後はなかなか残酷なのよね。

そして、Scieszkaが1996年に出版したこちらの本、The true story of the Three Little Pigs 

これは「3匹のこぶたの真実のお話」というタイトルで、実はオオカミ目線で書かれたもの。

Everyone knows the story of the Three Little Pigs. Or at least they think they do. But I'll let you in on a little secret. Nobody knows the real story, because no one has ever heard my side of the story. (誰もが知っている3匹のこぶたの話。少なくとも、知っていると思っているだろう。でも、ここで小さな秘密を教えてあげよう。誰も真実は知らない。だって、誰も私の話を聞いてことがないのだから)

実はオオカミは誕生日ケーキをつくりたくてお砂糖をこぶたたちから借りたいだけだった、風邪をひいていてくしゃみをしたはずみに誤って子豚たちの家が飛んでしまった みたいなお話。

なんて、不運。

オオカミ目線のお話をきくと、本当にオオカミの悲劇なだけ。そしてこぶたたちひどすぎ、って思っちゃう。

実はこの本は実際にとある成人学習の一貫で使われたケース。

この「真実の話」と読み比べたときに、どう意味付けを行うか。それぞれの感想を共有しあう、というもの。

(文献:Souto-manning,2010, Freire, teaching and learning: Culture circles across contexts. New York, Peter lang)

私の忘れられない広告

ある時、駅を歩いていたときに貼ってあった広告が今でも忘れられない。

しばらくその広告の前で立ち尽くしていたことを覚えている。

約7年前になるけど、今でも「忘れられない広告は?」と聞かれたらまっさきにそれを挙げるだろう


画像1

「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」一方的な「めでたし、めでたし」を、生まないために。広げよう、あなたがみている世界。

2013年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」の最優秀賞作品。

これを見たときの衝撃たるや。。

前述した、3匹のこぶたの話にしても、この桃太郎の鬼側の目線の広告にしても、わたしたちは物語や社会がつくりあげた「価値観」で多くの「思い込み」に取り囲まれている

これを「ideology: イデオロギー」と呼んで、集団的な思想や観念のこと。

オオカミはわるもの、鬼は倒さなければいけないもの、キツネはずるくて、亀は歩くのが遅くて、お姫様は綺麗であるべき。

じゃあその「逆さま」の世界を見ようとしたことはあるだろうか。

Happily ever after (めでたし、めでたし)を逆さまにみてみると、いつだってこちらに見えていなかった世界があるかもしれない。

これは文学の世界だけじゃなくて、あたりまえの日常に潜んでいるものだから余計に怖い。

影響力の大きい人の「めでたし、めでたし」は、すごく、気をつけなければいけない。

成人学習の奥深さって、「おとなが学ぶ」という知識を取り入れることにとどまるのではなくて、この自分の経験や価値観や信念を覆されるのを経験しながら気付きながら、人として発達していくことなのよね。

これを専門用語でCritical reflectionというのだけど、

今週末はこのCritical reflectionの神様的な、成人学習界のスターでもあるDr. Stephen Brookfieldの授業が控えていて、その事前リーディングにでてきたのでちょろっと書いてみました。

また授業受け終わったら続きを書きます!

こちらもも併せてご覧ください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?