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映画「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第71回

最高な私たち!
2019年公開映画「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(Booksmart)」
文:〝美根〟

私、はしゃぐの下手なんです。楽しくないわけじゃないんです。でもキャー!って上手くはしゃげないんです子供の頃から。

先日、体験型の展示を見に行ったんだけど、周りの人たちは「キャー! あはは!」ってめちゃ盛り上がってたのに、私はどう頑張っても「えへ・・・」くらいしか声を発せられなくて、心の中は“楽しい!”ってなってるのに、上手く発散できないもどかしいぐにゃぐにゃした感じで・・・。

そういえば昔も「楽しくないの?」って言われたり「つまんなそうな顔してんな」って言われたりしたな、クラスや部活の集まりで私が話すと急に会話のテンションが下がる感覚がして申し訳ない気持ちになって私が話し出したばっかりにもっと同じテンションで会話したいのにうぉおお・・・って、色々思い出してトラウマ自ら甦らしてました。

はしゃげる人たちを見てると、「羨ましいなぁ」って気持ちと「ふん! はしゃいじゃってやんの!」って気持ちが入り混じって、自分が嫌いになって余計固まっちまう。もっと明るくはしゃげる人間だったら・・・いいや、それだと今の私がいなくなっちゃうので、はしゃげない私でオッケーです。うん。

今回はそんな私が共感・・・というか痛いところをつかれてしまった映画をご紹介!

誰よりも勉強一筋だったのになんで!?

季節は卒業シーズン。生徒会長のモリーは、誰よりも勉強一筋、名門大学への進学も決まった自分をとても誇りに思っていた。親友のエイミーと共に過ごす学生生活ももうすぐ終わり。卒業を控えても、モリーとエイミーは同級生たちとは馬が合わず、モリーは偶然自分の悪口を言うクラスメイトと鉢合わせてしまう。

「私はあんたたちと違ってイェール大学に行く」と最後の切り札を出すモリーだったが、遊び呆けていたと思っていたクラスメイトたちも名門大学への進学や大企業への就職が決まっていたことを知る。めちゃくちゃにショックを受けたモリーは、高校卒業の前日、パーティーに参加して遊びまくって高校生活を取り戻そう!と決意。エイミーを誘っておめかししていざ出発する二人。だがしかし、この二人、パーティー会場の場所を知らないのだった・・・。続きは観てのお楽しみ。

憧れと軽蔑は表裏一体?

楽しそうにしてる一軍を心の中でちょっと馬鹿にしちゃう気持ち、わかるなぁ…。本当は羨ましいんだけど、どうしても混ざれないんだよ…。私は途中から諦めちゃってたな。傷つきたくないから参加しようともしなかったし、かといって、「嫌われてもいいや!」って割り切ることもできなかった。えへ…て笑ってる真面目なふりしたつまらない奴でいいや…って思ってたし、実際そうだったと思う。

そんな自分の中に実は、音楽を作ったり歌ったりして、映画とか舞台が好きで、おしゃべりな自分がいるってことが、支えだったりした。内なるオレ…って感じで厨二病感漂いまくってるけど、本当に思ってたことだから仕方ない。なので、虚栄を張りつつ、頑張ってきて、でもクラスメイトにコンプレックス感じてるモリーやエイミーの気持ちがわかるし、“最後に遊びまくってやる!!!”っていう気持ちをすごく応援しちゃう。

二人の友情も良いんだよね。お互いにめちゃくちゃ褒めまくるシーンが時々出てくるんだけど、これが最高。これ自分にやってみるのも自己肯定感ぶち上げで良いかも。「ちょっと! ゴージャスすぎて目が開けられないんですけど! 一体誰? 私か!」みたいな。

一方でびっくりしたのが、海外の高校生文化って、本当にこんななの?って思う描写が多かったこと。ドラッグやお酒普通に出てくるし、なぜかトイレで男女が会話してるし。あとかなりどぎつい下ネタもたくさん出てくるので、この映画は一人で観るんだぞ。

サクッと見れるジェットコースター!

陰キャが陽キャのパーティーにいって空回りで見てらんない!みたいな、ベタな展開ではありません! みんなが何を思って高校生活を送っていたのか、最後にモリーとエイミーはどんな気持ちで卒業式を迎えるのか? 本当に展開が目まぐるしくて目が離せない!

そして登場人物みんなが魅力的。単なるキャラクターじゃなくて、その瞬間を生きている人間として登場するから、間延びしないのに、描き込みが丁寧で面白い。神出鬼没なジジがわけわかんなくて好きだったな(笑)。

あと突然ダンスシーンになったり、ストップモーションが登場してびっくり楽しい!(笑) とにかく予測不可能だから、身を任せて楽しんでほしい映画です!

今回の指輪はそんな突拍子もないイメージをもとに、主人公モリーの頭に、ジジがくれたイチゴと、ジャレッドの派手すぎる車、エイミーのパンダのぬいぐるみを乗っけました! 特にイチゴの再現力に驚くが良い…皆の者!

敵はいなかったのかも
この映画には、ものすごい超意地悪なザ・敵は登場しなかったな、ということに書きながら気がついた。コンプレックスとか卑屈な気持ちとか羨ましさから、いろんな人のことを“敵だ!”って認識していても、話してみると、意外と似たような考え方だったり、やっぱりソリは合わないけどそんな風に考えてたんだねってわかったりして、敵はいなかったんだなって気が付く時ってあるよね。ああ、もっと早くたくさん話しとけばよかったなってさえ思ったり。

私は疑心暗鬼なとこがあるし、“みんな私のこと馬鹿にしてるんだ…畜生! みんな敵だ!”っていう妄想に取り憑かれたこともあったけど(今も時々なるけど)、それって自分を守るのに必死こいてるだけで、自分のことも嫌いになっちゃう考え方なんだよね。自分を大切にしながらも、自分を知って、勇気を出して、知らない世界にまずは飛び込んでみるのも良いかもね。

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モチーフ:モリーの頭、博士帽、ジジがくれたイチゴ、ジャレッドの愛車、エイミーのパンダのぬいぐるみ
音楽:BGM「Unchained Melody」Lykke Li
カバー「Slip Away」Perfume Genius

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