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マイバイブルその1 | 妖界ナビ・ルナ

この前人に自分の好きな作品について話すことがあったのだが、言語化ができずにただ「めっちゃイイよこれ」みたいな説明しかできなかった。
なんと情けないことか。
なので、せめてマイバイブルとする程にのめり込んだもの達についてはこうして言語化しておこうと思う。
※若干ネタバレあり

マイバイブルとはつまり座右の書だが、その第1号となるものは趣味嗜好や性癖に多大な影響を与える。
そして、自分にとってのそれは「妖界ナビ・ルナ」なのだと思う。

小2の夏休みのこと。
図書室の「かいけつゾロリ」を全部読み終えた僕は次に読む本を探していた。
しかし、ほぼ絵本のゾロリばかり読んでいたためか、文字ばかりの本はすぐに飽きてしまっていた。
そんな時、表紙がどことなくマンガっぽい「妖界ナビ・ルナ」シリーズを見つけて読み始めたのがきっかけだった。
この手の児童文学はライトノベルのようにところどころ挿絵が入っている。
僕はこれが楽しみとなり、するすると読み進めていった。

こう言ってしまうとアレだが、「挿絵が気になる」というなら本をパラパラめくって挿絵のページだけ見るなんて方法もある。
しかし、当時の僕にはそんな考えは微塵も無かった。
理由は当然、「妖界ナビ・ルナ」の世界にドハマりしてしまったからである。

何が自分に刺さったのか?
これは恐らく主人公ルナへの共感と、「そこにあるかもしれない非日常」という感覚だと思う。

主人公、竜堂ルナはもうすぐ小学4年生になる女の子。両親はどちらもおらず施設で暮らしていたが、同年代の子たちと平凡な日々を送っていた。
しかし、「妖怪」による事件をきっかけにルナは施設を離れ、自分を助けてくれた妖怪と共に、人を襲う妖怪との闘いの旅に出る。

ざっくりとしたあらすじ

当時の自分は今よりもずっと気が弱く、周囲の人に合わせてばかりだった。
主人公ルナも少し気が弱い性格で、もしかしたらルナと自分自身を重ねていたのかもしれない。
それ故に抵抗が少なく読みやすかったのだろう、と今になって思う。

また、話の展開の良さも作用してより自分を引き込んだのだと考えている。
「妖界ナビ・ルナ」は1冊の前半に日常パートと捜索パートがあり、後半で戦闘を経て真相が明かされる、というパターンが多い。
特に日常パートは必ずと言っていいほど入っている。これによって読み手を共感させ、物語の世界に引き込むことができる。

そこから徐々にファンタジー色を増していくことで、日常パートで得た共感をそのままに非日常パートを読むことができる。
これによって「ルナの戦いはどこかで本当にあったのかもしれない」という感覚が生まれるのだ。

さらに「妖界ナビ・ルナ」はそれなりにヘビーな描写を含んでおり、壮絶という印象を読み手に植え付ける。
「鮮血」だとか「喉に指を入れて掻き出す」だとか、本当に児童文学か?と今でも思う。
だが実際のところ、それほどルナの戦いは凄惨なのだ。

主人公への深い共感とともに、苛烈な戦いが「そこにあるかもしれない非日常」として感じられる物語。
これが当時の僕にとっての「妖界ナビ・ルナ」であり、初めて物語の世界に夢中になった経験だった。

それからは図書室に入り浸って「妖界ナビ・ルナ」だけを読み、休み時間が終われば頭の中でストーリーを思い返すことを繰り返していた。
本屋に行けば真っ先に児童書コーナーへ走り、続編であるⅡ期の新刊が出ていないかを確認していた。
新刊を買うことができたその日はもう「妖界ナビ・ルナ」に入り浸りで、読後感に浸ってはまた読み返してを繰り返していた。

まさしくオタク誕生の瞬間だったと思う。


かくして僕は「妖界ナビ・ルナ」で「共感できること」と「そこにあるかもしれない非日常」がもたらす面白さを知った。

これはファンタジーを楽しむにあたって大切な感覚だと思う。
作品の世界観に共感できれば大きな没入感が得られるからだ。
ゆえに、それを教えてくれた「妖界ナビ・ルナ」は僕のマイバイブル第1号なのである。




それと、マイバイブルである理由はもう1つある。

下の画像はⅠ期最終巻の表紙で、絵柄は当時の少女漫画っぽい感じ。

で、その次に出たⅡ期の1, 2巻の表紙が下の画像なのだが……



突然絵柄がかわいくなり、銀髪になってしっぽが生えた。

髪の色としっぽについての説明はされるのでまぁ問題ないが、絵柄(というか挿絵担当の交代)については今になって考えるとかなりデリケートな話だったと思う。
が、当時の自分はほぼ「かわいい!!!」としか思っていなかった。
そして、この可憐で優しそうなイメージが主人公ルナの印象にぴったりだと思ったのである。
いわゆる解釈一致というヤツだった。


少し想像してみて欲しい。

自分が生まれて初めて熱狂するほどのめり込んだ世界の絵柄が変わってしまった。
しかし印象は完全に解釈一致なうえ、断然自分好みなかわいい絵柄だった。

するとどうなるか?



性癖が決まってしまった。

これを見て以来、僕は銀色で長髪のキャラクターに理由のない好感を持つようになってしまった。



だってかわいいじゃん、仕方ないよ。
しっぽとかモフモフで気持ちよさそうじゃん。
だから銀色モフモフのしっぽがあるキャラも好きになっちゃったよ。


この前のGWで実家帰って久しぶりに実物の表紙見たけど、未だに好みド直球だと感じた。
今も続いている銀色長髪好きのルーツはこれで間違いない。
初恋か?

というわけで、これがマイバイブルの理由その2である。
性癖は、だいじ。



ここからは余談。

当時夏休みの宿題として読書感想文が課されたが、さすがに表紙に2次元の女の子が書いてある本で感想文は書けなかった。
もし書いていたらクラスメイト総出で「きもw」と叩かれそうだったし、そうなったらもっと拗らせたオタクになっていただろう。
ある意味この記事は約15年越しの読書感想文でもあるのだ。

また、小学校の図書室にはハードカバーの「妖界ナビ・ルナ 愛蔵版」が置いてあった。
実は学校はもう数年前に閉校してしまったのだが、その時にもしかしたら蔵書をもらえたりしたんじゃないかと今になって思う。
別に自分で買って揃えてもいいのだけど、やっぱり思い出の本は実物が欲しい。
でももう別の公共施設の本棚に収まっているか、廃棄されてしまったかのどちらかだろう。
願わくば前者であって欲しい。

あのとき何度も手に取った「妖界ナビ・ルナ」、今はどうしているのかな。


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