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平田泰之さん「アスペルガー症候群、ステルス虐待の後遺症を抱えながらも光を信じて」

🎤ー平田泰之さん、宜しくお願い致します。平田さんのこれまでをお聞かせ願えますでしょうか?


(平田泰之さん)

 僕は23歳の時に発達障害のアスペルガー症候群の診断を受けました。困っていることはマルチタスクが出来なかったり、細かい指示がわからなかったり、空気を読むこと、暗黙の了解を理解することが苦手なところです。


また、僕は精神的虐待の経験者でもあります。精神的虐待でよくある「お前の事なんか生まなきゃよかった」「馬鹿」「阿保」等の直接的な言葉を言われるかわりに、他の人と比較されたり、いじめを受けた時に味方になってくれなかったなどといったつらい経験をしました。また、僕が怖がる・不快に思う冗談を言われ、アスペルガー特有の「冗談が通じない」という特性等もあいまって、僕の自尊心は著しく低下していきました。


結果、僕は人の心も、世界の温かさや素晴らしさも大事にできない精神状態になっていきました。僕は、人間にとって一番つらい・悲しいことの一つは、美しいものや素晴らしいものを、その通りに感じることができなくなる(orできなくさせられる)ことだと思っています。



虐待を受けたことによって、自尊心の低さや、人として幸せに生きる土台をつくれなかった、「真っ当な人や世界との繋がりがほぼ絶え果てるようになってしまった」と、気づけたのは、大学卒業後間もない頃です。

大学卒業後の一人暮らしでは虐待の後遺症が影響し、フラッシュバックが起き、あまりの悲しみから毎晩叫び声をあげてしまうなど、とても苦労しました。「僕は永遠に、絶対に、人として幸せに生きてはいけないのではないか」そんな絶望感に何度襲われたか、もう分かりません。



2011年に発達障害の診断を受け、2012年12月からは障害者雇用の事務職等をしていましたが、感覚過敏等が災いし、5年半でとうとう限界がきて辞めました。以降は、プログラマーを目指したものの再就職ができず経済的自立が困難な状態が今も続いています。

🎤ー子供の頃に言われた言葉や体験は深く記憶に残りますし、深く傷つきますよね。その傷が原因で社会生活や人間関係に支障をきたしてしまう。これといった病気なわけでもないから周りからも理解されない。とてもしんどいですよね…。

🎤ー今何か取り組んでいることがありましたら、教えてください。


(平田泰之さん)

 2020年の1月から「ステルス虐待の啓発」をインスタグラムやツイッターで発信するようになりました。この活動は結果としては、カミングアウトも兼ねた自分の癒しにも、後述するカフェバー活動を始めるに当たっても、大いに役立ったことは間違いありません。


「ステルス虐待」とは「限りなく虐待に見えない虐待」と定義しております。僕の虐待啓発用に立ち上げたインスタグラムに「ステルス虐待」を定義した表がありますので、ご参考になればと思います。

ステルス虐待についての初めてのインスタ投稿:https://www.instagram.com/p/B7qluFVDZHG/

ステルス虐待の「定義表」を書いたインスタ投稿:https://www.instagram.com/p/B70BCrQJ1VH/



ステルス虐待は、誰が見ても明確な暴力表現があるなどわかりやすいものではなく、認知するのが難しい虐待です。が、これを可視化することで現在苦しんでいる人達に更に温かく人間らしい社会を創っていく原動力になればと願っています。これからも発信を継続していきます。



また、プログラマーとしての勉強と就職活動を2年間続けたものの失敗した後に、フリーランスで「にじのわ コーヒー&ビアスタンド」という活動を開始しました。喫茶店の店頭やイベントスペースなどをお借りし、コーヒーや自家製レモネード、クラフトビール等を販売しています。
昨年9月には「食品安全衛生責任者」の資格も取得し、様々な店舗で活動できるまでになりました。僕のアスペルガーの特性として、「味覚・嗅覚の過敏さ」がコーヒーのクオリティに生かされているのだと感じています。美味しいという声も多く頂き感謝です。


最初は対人の職業なんて、僕の障害特性や性格上、僕には難しいと考えていましたが、喫茶店や豆の卸売り業者の方まで、僕の障害や活動を理解してくださっていて、色々な方に支えられながら活動が継続できています。また、都心のチェーン店のようにひっきりなしにお客さんを捌くスタイルではなく、お客さんと会話をしながら1杯1杯丁寧にコーヒーやお料理などをお届けするスタイルは、特性上から見ても合っていました。


この「にじのわ」の由来は、僕のアスペルガー症候群も含めた「自閉症スペクトラム」の象徴である七色のグラデーションや、人と人との多様性と可能性が芽生えるための希望の光を人々と共に体現したい、という意味をこめています。


僕自身、そんな安心して自分を明かせて、二次的虐待からも護られる「第三の場所」はなかなか見つけられなかった身です。ようやく見つけた場所で更にいじめや嫌がらせを受けるといった辛い思いをしたこともあります。だからこそ、虐待の後遺症に苦しんでいる人や障害のある方が安心できる憩いの場を、虐げられてきた人達の可能性が再び芽生えることができる場を創造し、提供したいと願います。僕自身が就労する、そして賃金を得ることにものすごく苦労したこともあり、障害のある方も安心して働き続けられる場所としても「にじのわ」の固定店をぜひ開きたいと思います。支援施設でないという所も重要なポイントでしょうか。

このにじのわの活動を大阪だけにとどまらず、色々なところに展開していきたいと考えています。交通費等は相談させて頂きたいのですが、是非全国・全世界の皆様のお声がけをお待ちしております。

🎤ー平田さんの活動で、虐待の後遺症に苦しむ人や障害のある人が安心できる憩いの場が少しでも増えればなと思います。「にじのわ」のように優しい輪が広がっていくことを祈っております。

↑「にじのわ」店頭でコーヒーを作る平田さん
🎤ー最後に当事者の皆さんへのメッセージを宜しくお願い致します。


(平田泰之さん)

僕は「感謝の気持ち・謙虚さ・リスペクト(敬意)」人生を取り戻す糧になると思っています。この3つを示す対象も、すべての人・モノに対して持つ必要はないのですが、いつでも・どこでも意識できるものですし、そのために何千円、何万円とお金がかかるものでもありません。


かくいう僕も、正常な「感謝の気持ち・謙虚さ・リスペクト(敬意)」が長い間できなかった身です。なのでその反省もあります。虐待されてきた経験がある人はなかなか人を信用できない・信用するのが怖いことも往々にしてあります。悲しいことに、自らを守るために傲慢・暴力的・独裁的になってしまう人もいることです。虐待の「連鎖」に呑まれてしまう人も多いのです。もちろん僕も再びそうならないように、気を付けたいことです。


それでも、それら3つが自分から欠如している、そしてそれらを獲得して温かい人の輪の中で幸せに生きたいと思ったなら、それらを獲得する努力をするのに遅すぎることはないし、そのために孤軍奮闘する必要はありません。これも、虐待と向き合う中で悟ったことですが…。


今も、長年のステルス虐待の後遺症と言いますか…虐待によってどれほど自分の人生が歪まされ、いらない回り道をさせられてきたかと、圧倒されてしまう、後悔や無念に沈むことも、しばしばあります…。


情けない話で恐縮ですが、今(2021年)もまだ、僕は人々の助けや理解、共感が、ともすれば僕が感じている以上にたくさん必要な状態だと、認めざるを得ない部分もあります。それでも何とか回復の一途をたどれているのは、やはり先の三つの『感謝の気持ち・謙虚さ・リスペクト(敬意)』を意識しつつ、虐待で汚れて壊れた人としての心を取り戻そうとしてきたから、かもしれません…。



先に述べた僕のカフェバー活動の話になりますが、僕の背景を明かした先に、今の僕に共感してくださる珈琲屋さんや常連さんたちのような方々がいてくださるのは、とても大きな自信になっています。心から人を信じ感謝するまでの過程を見守っていてくださる方を大切に、少しずつ自分と向き合っていければ良いのでは、と思います。



スーザン・フォワ―ド著「毒になる親」には子供のころに適切な感情や心の境界線の獲得ができなくても、たとえどんなに虐げられた人でも、大人になってから正しく取り戻そうとすれば、手に入れられるとあります。その通りだと思います。
TPOや相手を考慮する必要は若干ありますが、時には毒を吐いたっていいとも思います。嫌な過去を忘れられないのもおかしいことではありません。「当たり前に守られているという平穏な心を取り戻すまで、当たり前に人に感謝できるまでの過程」の中にいる人も、きっと希望が見えるはずです。



たとえ、僕の体や心が、この記事を読んで下さっている貴方のそばにいれなくても、今ここに僕が残した文字や声が、貴方の心の「灯火(ともしび)」となれば、幸いに思います。皆さんがどんなに虐げられてきた人であったとしても、人にはやり直せる力があると僕は信じていたいですし、僕自身も人々に救われてきた身としても、人がやり直せる安全基地を、人々と共に創りたいと思っています。ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

🎤ー平田泰之さん、ありがとうございました!

平田泰之さんの虐待啓発用Instagram: @stealthabuse_yasujp


平田泰之さんの個人用Instagram: @yasu_ypsirom


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平田泰之さんの虐待啓発用Twitter: @AbusedAspeeYasu (※時々苛烈な表現もあります)


にじのわコーヒー&ビアスタンドTwitter: @nijinowacafebar


平田泰之さんの虐待啓発用ブログ(※現在工事中):


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