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第118回医師国家試験(感染症)

前回からの続きです。
その他の問題についても簡単に掘り下げてみましょう。


結核(118A-55、118B-29)

ポイントは1)罹患発症リスク、2)経過が亜急性であること、3)感染対策(空気感染)の3点でしょうか。
1)罹患発症リスク
曝露歴:濃厚接触(同居など) 医療従事者も感染ハイリスク
居住地:低所得者層の多い地区
基礎疾患:HIV、慢性腎不全、コントロール不良な糖尿病といった免疫不全状態はもちろん、胃切除後や珪肺患者でも注意が必要です。加齢に伴う細胞性免疫低下で過去の感染→再活性化するケースが多いです。
ステロイドを含む免疫抑制薬もリスクですが、特に生物学的製剤やJAK阻害薬は発症リスクが高いとされています。
2)経過
正直経過は様々です。肺結核であれば咳などの呼吸器症状を呈しますが、高齢者などで咳がほとんどないこともあります。また比較的急性の肺炎でやってくることもありますが、よく聞くと先行する症状があったりします。肺外結核だとその臓器の症状を呈するのに時間がかかります。たとえば結核性髄膜炎は発症してから典型的な髄膜炎としての症状を呈するのに数週間程度かかります。できればその前に診断をつけたいのですが。
3)感染対策
最終的に培養検査±PCR検査でM. tuberculosisが同定されることで診断されます。感染性の有無は喀痰塗沫に抗酸菌が存在するかどうか(=空気感染のリスク)に基づきます。IGRA(インターフェロンγ遊離試験)はあくまで結核が感染していたかどうかの検査です。ただ、特に肺外結核では結核菌の証明が困難でIGRAやADA(アデノシンデアミナーゼ)を参考所見として、治療を開始せざるを得ないこともあります。
3連痰(うち少なくとも一つは早朝喀痰)の塗沫中に抗酸菌がいないことが証明されて初めて隔離(陰圧、N95マスク)解除となります。

また今後想定される問題として、公費補助を受けられる潜在性結核感染症の治療レジメンが増えていること(従来のINH6ヶ月に加え、代替レジメンであるRFP4ヶ月だけでなくINH+RFP 3(4)ヶ月が選択できる)は抑えておく必要があります。

伝染性単核症(118A-74、118D-52)

これも頻出ですね。咽頭痛に加えて、両側上眼瞼浮腫(Hoagland徴候)や後頚部リンパ節が腫脹する(=ウイルス性)、肝脾腫が有名です。
EBV以外にもCMV、HIV、トキソプラズマ、HHV-6、アデノなどなど色々似た様な症候群を呈します。CMVはEBVと比べるとやや年齢高め、典型的症状が揃いにくいことが特徴です。
ペニシリン系抗菌薬による皮疹出現・増悪リスクや脾破裂のリスクとなるため発症3週間は運動を避けるようにといったところが問われやすいでしょうか。

その他、雑感

  • 標準予防策、経路別感染対策といった内容が増えている印象です
    pre-CC OSCEにも感染対策が追加されましたし、今後も定期的に出題されそうですね。

  • 感染性心内膜炎はやっぱり毎年出ますね。2023 Duke-ISCVID基準が新たに提案されていますが、出題傾向と内容への影響はほとんどないと思います。

  • 子宮頸癌はワクチンで予防可能!(常識!)

  • (複雑性)尿路感染症、急性腎盂腎炎のようなcommonな感染症のマネジメントが問われているのは非常に実践的。このような臨床に近い問題は今後も増えそう。

  • COVID-19関連は減りましたが、Common diseases化したわけで、インフルエンザと同じレベルで引き続き問われそう。

  • 輸入感染症や新興・再興感染症も引き続き問われそう。
    第117回の解説も是非チェックを。海外の感染症流行状況はもちろんWHOをチェックしてもいいですが、日本語ならまずFORTH(https://www.forth.go.jp/index.html)をチェック!


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