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第117回医師国家試験(感染症)①

さて、先日(2月4、5日)に今年の医師国家試験が行われました。学生教育への応用や、その年のトレンドが見えるので、毎年ざっと解いています。
今年の問題は例年と大きな傾向の違いはなく、そのまで悪問・奇問はなかったかなと思います。感染症分野も(多少異論のあるところはありますが)、正答に辿り着けない難しい問題は少なかったと思います。そんな中でも比較的回答が割れた問題について、できれば今後の臨床に活かせる形に昇華したいと思い、ご紹介します。

117A-63 輸入感染症の基本をおさえよう

問題は、東南アジアに渡航歴(潜伏期間<7日)のある方の発熱、倦怠感、点状出血症状で、最も考えられる疾患を選択するものでした。この問題を入り口に輸入感染症診療の基本的なところについておさらいしておきましょう。
(以下スライドは4年ほど前に輸入感染症の講演をした時のスライドから抜粋しています)

問題文を読むと「輸入感染症」だなと、本文、選択肢から想像するのは難しくないです。
ちなみに輸入感染症といっても、日本でまずお目にかからないようなものから、比較的commonなもの、輸入動植物や食料などに紛れ込んでくるもの、そして国内でも見かける病原体だけど耐性化傾向のあるものまで様々です。

内科医としては、特に日常診療で遭遇しうる下の2つが大事ですね

いわゆる輸入感染症を想定した場合、まずは標準+感染経路別感染対策(基本は飛沫、接触)が大事です。ヤバいやつ(空気感染対策が必要)かどうかという視点も必要です。まずは自分と周りを守ること!
診断を考える上では、渡航歴、暴露歴(行動歴、予防の有無)、潜伏期間に着目します。試験問題としては渡航歴+潜伏期間+症状でだいたい鑑別できるものが多いと思います。

標準予防策+経路別対策 基本は一緒

潜伏期間は大事


旅行先についてから(あるいは暴露から)、発症までの期間からざっくりと潜伏期間を推定するとある程度疾患が絞れます。
特に大事なのはvery short(<7日)ですかね。数も多いので。デングやインフルエンザ、あとは今ならCOVID-19がここに入ります。チフスやマラリアなどはこれらと比べるとやや発症までの期間が長く、たとえば帰ってきてから発症したりします。渡航歴があるからといって、一般的な感染症(肺炎や尿路感染症など)であることも多いです(very short)。

潜伏期間の推定!

デング熱とその類縁疾患


デングとその類縁疾患(チクングニア、ジカ)は、最終的に抗原検査や抗体検査で区別するしかないところもありますが、臨床症状である程度鑑別が可能です。とはいえ、圧倒的にデングが多いのですが。点状出血、皮疹にも注意ですね。

非常にcommonなのでデングらしさは知っておいて良いと思います

その他、急性肝炎(A型、E型)、チフス、マラリアについてもまとめました。
やはり潜伏期間と渡航地・暴露歴・予防策の有無が鑑別上重要です。

急性肝炎(A,E)

短期間でも滞在する場合は、A型肝炎などトラベラーズワクチンを!

サルモネラ感染症(チフス)

潜伏期間長め、下痢は必ずしもない 血液培養を!

マラリア

アフリカ帰りは、マラリア、マラリア、マラリア!!

今回は輸入感染症1問について掘り下げてみました。他の感染症関連の問題の解説は次回の記事で!

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