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“世界がまだ見ぬボールパーク” エスコンフィールドHOKKAIDOのGood CX

最近は30℃を超える日も増えてきてもう夏ですね。高校野球が始まったり、プロ野球の優勝争いが激しくなったりと野球の世界が盛り上がる時期になってきました。

今回の【勝手に分析!Good CX】では、そんな野球の世界で、昨年開業して話題になったエスコンフィールドHOKKAIDO/Fビレッジにおける優れた顧客体験(CX)が生み出される仕組みについて分析してみます。



“これまでにない観戦体験” ができるスタジアム

2023年に誕生した北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」。"世界がまだ見ぬボールパーク" を掲げて作られたスタジアムは、天然芝、フィールドに近い座席…と野球観戦を楽しめるこだわりが詰まっているだけでなく、充実した飲食店や試合のない日も営業するグッズショップ、さらにはサウナやホテルまで併設されていて、野球ファンはもちろん、そうでない人でも楽しめる場になっています。
私自身も昨年訪れましたが、本当に良い体験でした。(写真のようにルーフオープンデーだったこともあり、普段以上に開放感がありました)

野球好きの方々のブログや多くのメディアでその魅力が語られていますが、このブログでは、CXデザイン・CXマネジメント(顧客体験デザイン・マネジメント)という観点から、特に面白いと感じた2つのポイントに焦点を当てて紹介したいと思います。

エスコンフィールドHOKKAIDO 球場の様子


試合が終わった後も楽しめる「アフターゲームショー」

スポーツ観戦やライブの帰り道、駅や車内が大混雑でぐったり疲れてしまった……そんな経験、一度はありませんか?
エスコンフィールドでも、試合終了直後は駅に向かうバスが混雑するようです。 しかし、他のスタジアムと少し違うのは、試合後もスタジアムに残って、混雑が落ち着くまでゆっくりと楽しめることです。

そのための仕掛けの1つに「アフターゲームショー」があります。アフターゲームショーとは解説者によるその日の試合振り返る企画で、その映像が大型ビジョンで流れるようになっています。

試合終了後に大型ビジョンに流れる「アフターゲームショー」

試合後もしばらく座席が開放されていて、飲食店も開いているので、お店で買ったお酒や食べ物を片手に、座席で振り返り映像を見ながら試合の余韻に浸る…といった過ごし方ができます。(イベント後に友人と居酒屋に行ってその日のことをああだこうだと話して過ごす…という感覚に近いと思います)

そうこうしているうちに混雑も落ち着いてくるので「楽しい1日を過ごせた」というポジティブな気持ちのまま、家路につくことができます。

この「アフターゲームショー」をCXデザインの観点で考えてみると、CXデザインにおいて重要な「ピーク・エンドの法則」をうまく取り入れた体験だと言えます。「ピーク・エンドの法則」とは、人はある体験の中で最も感情が高ぶったピーク時と、体験の終わり頃の印象に残りやすく、それが体験全体の評価に大きく影響するというものです。

ピーク・エンドの法則

混雑のピークを避けて穏やかな気持ちでスタジアムを後にすることができるため、来場者のエスコンフィールドにおける体験は「今日は楽しかった」という気持ちで締めくくられることになります。結果として、「また来たい」という肯定的な感情が強く印象付けられるのです。


SNSで要望を聞いてくれる「Fビレッジおじさん」

顧客体験向上の取り組みとしてもう1つユニークだと感じたのは、Fビレッジ(エスコンフィールドとその周辺施設を含む街のこと)の公式目安箱として運用されているXアカウント「Fビレッジおじさん」です。
プロフィールには、おじさん2人の背中の写真とともに「Fビレッジのことが誰よりも大好きなおじさんです。#聞いてよFビレッジおじさんであなたの困りごとを教えてください」と書かれていて、なんとなく親しみを持てて何でも聞いてくれそうな雰囲気を漂わせています。

Fビレッジおじさん

中を見てみると、エスコンフィールド/Fビレッジについて寄せられた要望に対して対応可否・予定についてコメントを添えて返事をしたり、実施された改善施策について投稿されたりしています。
最近だと、アプリの情報記載ミスに対するお詫び・対応や、多目的トイレへの子供用補助便座の設置完了報告などが投稿されていました。

組織全体として継続的なCX向上に取り組んでいくうえで、顧客の声を収集し、サービス改善に活かすプロセスを構築するということは重要な要素の1つです。一般的にはアンケート調査などを行うことが多いと思いますが、エスコンフィールドHOKKAIDO/FビレッジではSNSを活用して利用者の声を集め、改善の取り組みを進めていました。
また改善策を写真とともに投稿することで、改善をお客さんに報告することに加えて、その施策に対する反応も見ることができます。

他にも様々な取り組みがあると思いますが、FビレッジおじさんのSNS運用からは、エスコンフィールドHOKKAIDO/Fビレッジが顧客との対話を重視しながら、CX改善策の実施とその効果測定を効果的に行っている姿勢が伺えます。


今回は、開業以来高い評価を得ているエスコンフィールドHOKKAIDO/Fビレッジの優れた顧客体験が生み出される裏側について勝手に考察してみました。ここに紹介したことは、ほんの一握りの話だと思いますので、北海道に旅行される機会があれば、野球好きの方も、あまり好きでない方も実際にエスコンフィールドを訪れてみてください!

(執筆者:デザインストラテジスト 杦木 陽一)


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