見出し画像

オーストラリアのスーパーで発見!ユニークな施策と驚きの光景

こんにちは。
mct の荒井です。
今回のCulture Safariでは、昨年休暇でオーストラリアのケアンズを訪問した際に、現地のスーパーマーケットにおいて日本人として目新しさを感じた施策・サービスや光景を紹介し、そしてそれらについて考えてみたことをご紹介します。

入り口に置かれた無料のフルーツ

入店した際にまず目に入ったものは、”Free fruit for kids” と書かれた看板と、その下のかごに置かれたバナナでした。これらのバナナは、親が買い物をする際に子供に果物を食べさせることを想定されています。

「無料」なのでこっそりとっていく大人もいないのだろうか?と思ったり

2015年11月からWoolworthsの店舗内で始まったこの取り組みには、2つの背景があります。
一つは、オーストラリア政府も推奨する「2&5(1日に2つの果物と5つの野菜を食べよう)」という取り組みをサポートするもので、スナックやジャンクフードの代わりにフルーツと野菜を食べさせて子どもたちの健康な食生活を推進しているそうです。実はオーストラリアの肥満率は高く、国民の3人に1人という調査データがあります。この理由から、政府は子供たちへの「食育」を通して、最終的にオーストラリア全体の健康を増進することを目指しています。
そしてもう一つは、保護者の買い物中に子どもたちは暇を持て余してしまうので、バナナを食べさせることで大人しくしてもらおう、という狙いです。スーパーにとっては保護者だけでなく子供たちもある意味での利用客なので、顧客ごとのニーズに沿ったもてなしが提供されていると言えます。

では、仮にこのサービスが日本のスーパーにあったらどのようなことが起きるでしょうか。日本人にとっては店内で商品を食べ歩くこと自体が新鮮なことなので、もしかしたら周りの目を気にしてなかなか手を出せない人が多いかもしれません。でも「店内で召し上がって構いません」「お一人様一つまで」と細かく説明をしながら配っているスタッフがいたら、子連れのお客が列を作りながらバナナをもらっていく光景を容易に想像できます。

一方で、実際の日本のスーパーでは、子供向けのもてなしとして「お子様専用の買い物かご」が用意されているのを時折見かけます。これを使うことで、子供は周りの大人と同じように、買い物かごを持って店内を回ることができます。子供を楽しませるという同じ課題に対する、アプローチの仕方の違いが興味深いです。

日本のスーパーにて、お子様用に用意された買い物かご


パッケージについた星マーク

オーストラリアで販売されているお菓子や加工食品のパッケージを観察していると、商品ごとに、星(☆)の数で点数付けがされたマークを見かけることがあります。これは “Health Star Rating”と呼ばれ、パッケージ食品の全体的な栄養を評価し、星0.5から星5 つまでの評価を割り当てるシステムです。星の数は、食品中の栄養素を評価するように設計されたシステム ( The Health Star Rating Calculator ) によって決定され、星の数が多いほど、より健康的であることを意味しています。

Tim Tamは日本でも人気があるお菓子ですが、
「星0.5」と言われるとなんだか選ぶのを躊躇してしまいます。。
(画像出典:dailymail.co.uk)

”Heath Star Rating ”の表示が導入されている理由は、先ほどのバナナの施策と同様に、高い肥満率に悩むオーストラリア国民の健康意識を向上させるためとされています。ちなみに、この表示は義務ではなく、任意であり製造業者と小売業者はシステムの採用・削除がいつでも可能であり、ヘルススターレーティングのシステムに費用を払う必要もないそうです。

日本にも食品の栄養や機能性の評価に使用される認証のようなものはいくつかありますが、ここまで分かりやすいものはあまり存在しないような気がします。自分で栄養成分表示を見て、判断している人が多いのではないでしょうか。一見、仕組みとしてはオーストラリアの方が進んでいるように見えますが、逆に言えば日本の消費者はこのような指標に頼らなくても、より健康的な食品を自然に選ぶことができていると言えるのかもしれません。

オーストラリアで星のマークを商品の性能評価に使用した例は、他にもありました。
ホテルの冷蔵庫に、エネルギー消費効率を表す「Energy Rating」のマークが貼りつけられているのを目にしました。このシステムはオーストラリア政府によって30 年以上前に制定され、さまざまな家電製品のエネルギー効率とランニングコストを比較し、より環境負荷の少ない製品を選ぶ手助けとなることを目的にしています。

こちらは滞在先のホテルで見つけたものです。
国旗にしかり、「星」に何か特別な思い入れがある国民性なのかもしれません。


はぐれしまった商品たち

現地のスーパーで買い物をしていて、「無料のバナナ」、そして「星のマーク」以上に、私に強いインパクトをもたらしてくれた光景がありました。
これらの「迷子の商品」は、私が実際に目撃したもののほんの一部です。

整然と並ぶオレンジジュースの中に無造作に置かれたソーセージ
オーツミルクの売り場にゲリラ的に出現するブロッコリー
酒類の棚に遠慮なく横たわる子供用の色鉛筆

日本の小売店でもこのよう現象をたまに見ることがありますが、特に顕著だったのはその頻度の高さ、そして、おそらく店側もあまり気にしていないのでは?と思わせる点でした。それも、ある日の朝に見た、誤った場所に置かれた商品が、その日の夕方にも正しい場所に戻されていなかったからです。また、誰かに開封されてしまった商品が、そのまま棚に放置されていることもありました。

このような現象が起きてしまう理由の一つとして、一部の利用者のマナーの低さによるところもあるかもしれませんが、オーストラリアのスーパーマーケットの敷地は日本のものと比べて非常に大きいため、間違えて取ってしまった商品をわざわざ元の場所へ戻しに行くことは面倒と感じる人が多いからと考えられます。
もう一つの理由は、店舗スタッフ側がそもそも「(客によって)間違った場所に置かれてしまった商品を戻すこと」を仕事の一部と見なしていないからという可能性もあるからです。
Business Insider によるこの記事によれば、海外のスーパーの従業員たちの間では、「動かしたものを戻すのは客の責任」であり、「自分たちは、買い物客の後始末をするために雇われているわけではない 」という考え方が、暗黙のものとして根付いているようです。

画像出典:Joe Raedle/Getty Images

日本人の価値観からすると少々驚くような考え方ですが、海外の企業ではスタッフの業務内容が契約によって明確に定められており、それを超える仕事についてはあまりやりたがらないことが一般的に見られます。つまり、たとえ顧客にとって不便なことがあっても(スタッフ側に原因がない限り)必ずしも解決しなくても問題ないと思われている可能性があります。この考え方自体が正しいか間違っているかということではなく、根本的な文化・価値観の違いによるものなのでしょう。その点で、一般大衆向けの小売店であっても、顧客が心地よく買い物できる環境づくりのためにスタッフの配慮が驚くほど行き届いている日本は、世界的に見ても稀なのかもしれません。

今回、オーストラリアのスーパーマーケットでの興味深い体験を3つ紹介させていただきました。個人的には、顧客側の主体性や責任に重きが置かれている点や、健康促進のための明瞭かつ透明なコミュニケーションがされている点が日本とは異なり、欧米文化らしいと感じました。
このように、海外で日本人として意外性を感じる体験をした際には、その背景となる価値観について考えてみることで、その国の人々を理解するための示唆を得ることができます。

参考記事

最新エビデンス反映、肥満管理の診療ガイドラインを改訂 オーストラリア(科学技術復興機構)
https://spap.jst.go.jp/oceania/news/230203/topic_no_05.html#:~:text=%E8%B1%AA%E5%B7%9E%E3%81%AE%E8%82%A5%E6%BA%80%E7%8E%87%E3%81%AF,%E8%82%A5%E6%BA%80%E3%81%AE%E7%8A%B6%E6%85%8B%E3%81%AB%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82%EF%BC%89

子どものための無料フルーツ「Free Fruit for Kids」(JAMS.TV)
https://www.jams.tv/gourmet/69172

オーストラリアの食品についてる星マーク★ヘルススターレーティング★とは(マフィントップと唐辛子)
https://www.muffintop-days.com/archives/21553

スーパー従業員、買い物客に言いたくても言えないこと(Áine Cain, Business Insider)
https://www.businessinsider.jp/post-186619


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?