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Free As A Bird の噺

なんのアニバーサリーでもないけど、Free As A Birdの歌詞を読み解きたくので書いてみる。

Free As A Bird、言わずと知れた214曲目のビートルズ作品。1995年12月、ビートルズ史を描いたドキュメンタリー&音源「アンソロジー」プロジェクトの目玉企画としてリリースされた。1971年の解散から実に24年ぶり、ジョンレノン の没後15年後に発売されたこの曲は、UKチャートの2位を飾った。

その発売から既に26年の時が経過している。「解散〜アンソロジー」より「アンソロジー〜今日」のタイムラグの方が大きくなったわけだけど、まだ感覚としては「解散〜アンソロジー」のほうがギャップが大きいように感じる。この辺り、ビートルズやジョンレノン 現役世代の方々、あるいは「1」や2000年代ポール来日以降にファンになった方々はどのように感じていらっしゃるんだろう?
ぜひコメントのこしてください😊

さて本題に戻ろう。
Free As A Birdは、1977年にジョンが自宅で収録したピアノデモに、ポール・ジョージ・リンゴの「スリートルズ」がオーバーダブをして出来上がった作品だ。
ジョンのデモは、メロディこそ全て網羅しているものの、ブリッジの歌詞は中途半端で、未完の作品だった。
ジョンがハミングで誤魔化していたパートは、ポールとジョージが「良い具合の競争」をしながら書きたし、2人がそれぞれリードをとっている。

愛と平和に次ぐ、「自由」がタイトルテーマに入っており、いかにもビートリーなポップアレンジに、わかりやすい1曲かと思いつつ歌詞をよんでいくと、実はなんだかよくわからなくなったりするから読み解いてみたい。

まず構成をみてみよう。

[歌ジョン、歌詞ジョン]
Free as a bird
It's the next best thing to be
Free as a bird
Home, home and dry
Like a homing bird I’ll fly
As a bird on wings
鳥のように自由に
それが次に大切なこと
鳥のような自由
家へ、安住の地へ、
伝書鳩のように僕は飛ぶ
翼をもつ鳥のように

[歌ポール、歌詞ジョン、ポール&ジョージ]
Whatever happened to
The life that we once knew?
Can we really live without each other?
Where did we lose the touch
That seemed to mean so much?
It always made me feel so
僕らが親しんだ人生に何が起きたんだろう?
お互いがいなくても本当に生きていけた?
あんなに大事だったはずの感覚を
どこで失ってしまったんだろう?
僕を本当に、(自由にしてくれた)

[繰り返し]
Free as a bird
It's the next best thing to be
Free as a bird
Home, home and dry
Like a homing bird I’ll fly
As a bird on wings

[歌ジョージ、歌詞ジョン、ポール&ジョージ]
Whatever happened to
The life that we once knew?
Always made me feel so free
僕らが親しんだ人生に何が起きたんだろう?
僕を本当に、(自由にしてくれた)

[繰り返し]
Free as a bird
It's the next best thing to be
Free as a bird
Home, home and dry
Like a homing bird I’ll fly
As a bird on wings


ジョンのデモを聴いて歌詞を見てみよう。

まずAメロ。タイトルフレーズ「鳥のように自由に」の歌詞に「それが次に大切なこと」といきなり謎のフレーズが続く。「次」?じゃあ1番はなに?ラヴ?、ピース?、それともこのあとに続くホーム??いきなり曲のテーマを破壊しにかかるジョンの発想についていけない。

そしてこの後には「ホーム」をキーワードにしたフレーズが続く。
「家」「安住の地」「伝書鳩」いずれも帰る場所があることを伺わせる。
「自由であること」と「家があること」という、対立する2つが大切なことだと言いたかったのだろうか。まったくもって「鳥のような自由」をシンプルに称賛する歌詞ではないことがわかる。

ブリッジには、さらに意味のつながらない歌詞が続く。
「僕らが親しんだ人生に何が起きたんだろう?」
え?それは自由への問いかけ?ホームへの問いかけ?続きは?と考えていると、ジョンの歌詞はハミングへと終わる。

ビートルズ時代、ソロ時代、一貫して歌詞や思想先行で曲を書くことが多かったらしいジョンレノンだけど、この曲に関してはメロディー先行でデモを録った雰囲気が漂う。もしもジョンがこの曲を仕上げたなら、全くちがう歌詞になっていたのかもしれない。

けど、スリートルズは、残るジョンの歌詞を全て使うことにした。そしてポール・ジョージがジョンのハミング部分の歌詞を書き足した。ポールとジョージがそれぞれどの歌詞を書いたかは明かされていない。ただポールは「いい具合にコンペティティブになった」と語っている。
ビートルズの大原則に従って、「歌っている人=歌詞を書いた人」なのだとすれば、

「お互いがいなくても本当に生きていけた?
あんなに大事だったはずの感覚を
どこで失ってしまったんだろう?」
の部分がポール

「僕を本当に、(自由にしてくれた)」
の部分がジョージ、ということになる。

ジョージのフレーズが1つしかないのに「コンペティティブ」って言うのかなあ?と思うのだけど、天然ポールの発言なのでさもありなん。

さて、ポールが歌うフレーズを見てみよう。
「お互いがいなくても本当に生きていけた?
あんなに大事だったはずの感覚を
どこで失ってしまったんだろう?」
もはや「鳥のように自由に」というタイトルフレーズなんてどこ吹く風。
けど、「僕らが親しんだ人生に何が起きたんだろう?」というジョンの2行に続けるにはパーフェクトなフレーズだと思う。
ラブソングの体をなしながら、ふたりの関係になぞらえてきたレノンマッカートニー手法がかつてのままに使われている。
ソロ期、ジョンが亡くなってからの時間を、ビートルズあるいはデビュー前の時間と比較して

「僕らが親しんだ人生に何が起きたんだろう?
お互いがいなくても本当に生きていけた?
あんなに大事だったはずの感覚を
どこで失ってしまったんだろう?」

と表現したなら、涙なくしては聴けない。ジョンのフレーズがポール(と思われる)のフレーズを引き出していることも、あたかもかつてのレノンマッカートニー。すべてが疑問符で終わるこのフレーズに、彼ら自身は何と応えるのだろう?

もちろんこれらのフレーズがみんなのラブソングとして成立することも忘れてはいけない。

そして続くのが(おそらく)ジョージの
「その感覚が僕を本当に、(自由にしてくれた)」
というフレーズ。

ポールが書いた「かつての感覚」とジョンが書いた「鳥のように自由に」を見事に繋ぐ、楔のような、円滑油のような存在のフレーズ。ジョンのデモと少し違うメロディーをつかって、より美しくつなげているところも、ジョージらしさ満点。

やっぱりビートルズは4人がいて、「ビートルズ」の形になるんだなってことを思い返させてくれる新曲。1995年バージョンは、最後に逆回転させたジョンのフレーズで、ビートリーに終わっていた。


が、2015年に発売された「ビートルズ+1」にはジャイルズマーティンがリミックスした別バージョンが収録されている。
Youtubeにアップされている同バージョンをみてみよう。

そう、ジョージが歌う歌詞が

Whatever happened to
The love that we once knew?
Always made me feel so free

「かつての僕らの愛に何が起きたのだろう?」
に変わってる!

ジョンのデモでここが「Love」と歌われてることはない。
妄想だけど、ジョージはここをLoveに変えることを主張したけど、ポールがジョンの歌詞を変えることを嫌がってオリジナルバージョンでは「Life」を採用、ジョージが亡くなった後の2015年に、ジョージの意志もこめて「Love」のバージョンを採用したんじゃないかなぁと思う。そんなところも含めて、ポールは「コンペティティブだった」と表現したのかもしれない。

2015年バージョンは、ポールのボーカルがよりポールっぽくなってたり、最後の逆回転フレーズが正回転になってたりする。
ポールの声はジョンに溶け込んでる方がビートリーだし、ジョージのボーカルも「Life」の時の方が伸びてるし、1995年バージョンの方が好きだなあと思うけど、昔のものしか受け入れられない老化現象の一つかもしれない(苦笑)

YoutubeのMVでは2015年リミックス、Apple MusicやSpotifyの音楽配信では1995オリジナルが変わらず配信されているので、2つのバージョンをこれからも楽しめるありがたさ❣️


「鳥のような自由」なんてタイトルフレーズ以外全く表現されていない「Free As A Bird」の話、でした。

そういえばこのタイトル、頭文字とると「FAB」だよね。

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