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最強の人が持つ武器

祖母は、恐れていました。

「ウチの娘は、変な風に育ってしまったから、お嫁に行けないかも知れない…」

「売れ残ってしまったら、どうしよう…」

コレに対し、母は、思いました。

「なんや、失礼な婆さんやな!」

「そもそも、親戚中に『この子は育てにくい!』などと吹聴したんやさかい、余計に縁談の話なんか来んわ!」

「結婚だけが、人生か?」

「売れ残って、何が悪いんかー」

「頭の古い婆さんやな~」

一旦、両親から捨てられてしまった母。

おしとやかで、穏やかな女性とは程遠いものが…。

心には常に嵐が吹き荒れ、怒りに満ちていました…。

祖母からすれば、親を困らせる、大変自我の強いワルガキなのでした。

しかし、祖母の心配を他所に、成長した母に縁談の話は来るのです(笑)。

それも、全く見ず知らずの人から。

道端で偶然、母を見た人から。

「是非、ウチの息子の嫁に!」と。

なんと、母の後をつけて、家を特定。

(恐すぎる…)

この現象は、1度だけではありませんでした。

共通していたのは、皆、商売人の息子の母親だったこと。

意外なことに、祖母は、この事をちっとも喜んでいませんでした。

そして、全ての申し出をお断り。

「『(母が)綺麗だから下さい!』と言うのが、アカンねん!」

「端から、あの子を看板娘として働かせるつもりやろー?」

「それも、気に入らんねん!」

一応、誰彼無しに嫁がせようとしていた訳ではなかった祖母に安堵した私(笑)。

母がこの事を知ったのは、結婚後何年も経ってからでした。

「あの婆さんは、秘密主義やさかいな!」

「そんなに、縁談の話が来とったんかいな?」

驚く母。

母自身も、自分の性格が難儀なのは、百も承知でした(笑)。

ただ、母は、恐ろしく美しい。

それ故、近寄りがたいものがあるのでした。

過酷な幼少期を経たせいもあって、まるで、殺人鬼の様なオーラを放つ母。

ところが…。

この難儀な母に、のっそりと近づいた人物が…。

ソレ、私の父(笑)。

(どんだけ、恐いもの知らずなんだ?)

何とも言い難い様なムードを持つ父。

大変な人間嫌いであるハズの母が、フラフラと父に騙されて(?)、結婚(笑)。

「まっ、いいか!」

誰かに、そう思わせる父。

まさに、警戒されない男。

最強なのでした(笑)。

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