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#2 エロ本


片耳が聞こえなくなる=音が無になる。
と俺は想像していたが
実際は、プラスアルファで耳鳴りが伴う。





しかもこの"耳鳴り"ってやつは、気圧や自身のコンディション、メンタルに直結している。

気にすれば強くなる一方で
何かに集中している時は全然気にならない。


勿論こんなことを描いていると、存在を思い出してしまうのでピーピー鳴り始めるから困ったもんだ。




そんな現象は三半規管にも影響が出て
事故から半月はフラフラで歩くことも大変だったが
時間とリハビリで少しずつ歩けるようになった。


今まで"音楽"が好きで生きてきたのに
片耳が聴こえなくなるのは相当ショッキング。いっそのこと音楽活動をやめてしまおう!
音楽から離れたい!
と思うまでダークゾーンに堕ちていた。


そんな絶望的な入院生活のなかでも、
可愛い看護師さんがいるってことはもしかして…みたいなことはずっと考えていたので、それなりに色々元気だったし
エロビデオの見過ぎだなぁなんて思っていたら
Fullmemberの五十嵐さんから付録でDVDがつくタイプのエロ本と
成城石井のフルーツ盛の差し入れがあった。
ちなみに成城石井にも"セイジョウイ"というスケベワードが隠されていることにも気づいた。


DVDは腐るほど面白味のない内容だった。

こんな何気ない一コマの笑いが徐々にメンタルの回復に繋がっていったのと同時に
"音楽"を通して知り合った人達が、その枠を超えた存在になっていることにも気づいた。






退院後、新しい肉体に慣れてきた頃
いつもの仲間が青梅の川に連れていってくれた。




川の音に耳を傾けると
耳鳴りのことを忘れられて、
久しぶりに心が軽くなった気がした。




仲間は釣りをしていたり、ポカーっとしているので
俺は少し仲間から離れたところまでいき
なんとなくラップしてみた。





"歌う"という久々のアクションは
もちろん感覚なんて全然違うのに
全然同じような感覚も残っていた。



仲間を振り返り一声

「きた!!!!」
とか言った。たしか


そうじゃなかったら
「へいへい!」でも「かもん!」でも
なんでも良いけど



この時は、とても喜んだわけです。



自然の中だったら、なんとかなるかも!



事故前からノリで始めた登山活動も、川に導かれるように本格化していった。

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