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調雅子=輝く未来へ向かうヴァイオリニスト                <MYCL-00046 CDライナーノート>

2023年12月デビューアルバム「Shirabe -melodies-」をリリース ヴァイオリニストの調雅子

輝く未来へ向かうヴァイオリニスト

                              下田幸二

 調雅子さんのヴァイオリンを始めて聴いたのは、2020年の紀尾井ホールでの桐朋学園大学卒業演奏会であった。桐朋学園大学は日本の弦楽器界をリードする俊才を数多く輩出してきた。その卒業演奏会に選抜されて出演することはたいへんな名誉である。当日はコロナ禍の中で関係者のみの少人数に入場制限されていたが、彼女のラヴェル《ツィガーヌ》は、絶妙な音程取りと自在なデュナーミクで作品に求められる熱にうなされたような狂喜を見事に表現していった。歌は艶を帯びて輝き、リズムは躍動し、会場の人々はハンガリーのチャルーダ(酒場)へと導かれた。音楽の力はすべての席を満たしたのである。

 調さんはその後ベルギーへと留学した。熱望した彼女の演奏をふたたび聴くことができたのは2022年秋の帰国公演である。それは、フランク《ヴァイオリン・ソナタ》をメインとし、前半に素適な小品を配したリサイタルであった。彼女のヴァイオリニズムは、より確固たる構成力を手に入れ、美音がさらに磨かれ魅力的な倍音はどこまでも伸びていた。音楽家の留学というのは常にプラスに働く保証はないものなのだが、彼女に関してはそれが全くの杞憂であり、見事な凱旋公演であった。私はすぐさま関係者に彼女の今の「調べ」を記録に残すべきだと進言した。彼女はもちろん今後も成長を続けてくれるだろうけれど、まず一つのピークを創ることに成功した若者の記録はそのとき残さなければならない。

レコーディング風景1 (photo: Yoshito Omiya)
レコーディング風景2 (photo: Yoshito Omiya)

 これは調雅子さんのデビュー・ディスクである。あの《ツィガーヌ》をメインとしてさまざまな魅惑の小品がならぶ。彼女はバレエも本格的にするそうだが、舞踏性のある作品も多い。ピアノは凱旋公演を支えた名ピアニスト佐藤勝重である。

 期待にたがわぬ実に素晴らしいCDの仕上がりである。この才媛の演奏は多くの人の心に幸せをもたらすだろう。そのデビューを心から祝福したい。

※MYCL-00046 CDブックレットにて掲載

収録曲&録音

調雅子(ヴァイオリン) 佐藤勝重(ピアノ)

【1】クラスラ―:プレリュードとアレグロ
【2】エルガー:愛の挨拶
【3】マスネ:瞑想曲(歌劇「タイス」第2幕より)
【4】ファリャ:スペイン舞曲 第1番(歌劇「はかなき人生」第2幕より)
【5】チャイコフスキー:メロディ(「懐かしい土地の想い出」より)
【6】ドヴォルザーク:ユモレスク(「8つのユモレスク」より)
【7】イザイ:子供の夢
【8】ゲーゼ:タンゴ・ジェラシー
【9】ピアソラ:アディオス・ノニーノ
【10】モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス~愛のテーマ
【11】ラヴェル:ツィガーヌ
【12】ガーシュウィン:そんなことどうでもいいさ
                 (歌劇「ポギーとベス」第2幕より)
【13】ヴァヴィロフ:カッチーニのアヴェ・マリア
【14】パラディス:シシリエンヌ

2023年8月8ー10日 
神奈川県、相模湖交流センター ラックスマンホールにて収録
<DXD352.8kHz レコーディング>

2023年12月1日リリース MClassicsレーベル
品番:MYCL-00046 通常CD盤


「Shirabe -melodies」(MYCL-00046)

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Staff

Producer, Recording Director & Balance Engineer: Keiji Ono
Piano Tuner: Kohki Mizushima
Photographer: Yoshinori Kurosawa 
Hair-make: Chisato Takabe
Artwork Design: Shoko Okada

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