見出し画像

ぼくのたび

文・絵 みやこし あきこ

主人公は街の小さなホテルを営むホテルマン。
フロント業務から給仕、ベッドメイキングまでこなす忙しい日々を送っている。そんな彼の楽しみはお客さんが教えてくれる異国の話。
毎日、いろんな場所から来て、そしていろんな場所に出発するお客さんとの会話は彼の夢を大きく膨らます。
「いつか鞄ひとつ抱えて、いろいろな国を自由気ままに旅行したい。」
彼のデスクの壁に貼ってある、世界中から届いたお客さんからの絵ハガキやステッカーがさらに彼の空想を膨らませる。
「今までホテルに訪れてくれたお客さんに会いに行きたい。」

彼は近いうちに夢を叶えるだろうか。
私はそう思わない。
彼は旅行に行けないことを嘆いてはいない。
小さくとも居心地の良いホテルのホテルマンであることを彼は誇りに思っている。日々コツコツと仕事をこなし、ここで出会うお客さんからみやげ話を聞いたり、彼の熟知しているこの町の情報を案内したりすることが彼にとってこの上ない静かな幸せではないだろうか。
仕事の休憩中に、世界中から届くお客さんからの手紙を読んで旅行に掻き立てられ空想にふけることも、その幸せの一部なのだ。

絵は情緒豊かで、色彩も白昼夢のような世界観にうっとり。カラフルなページとモノクロのページがストーリーに奥行きを与え、読後は美しいショートムービーを見たような気持ちになった。

この絵本を読んだとき、子どもよりオトナが読んだ方がより味わい深い内容なんだろうなと感じました。なんだかんだ文句を言いながらも、結局自分はこの仕事が好きなんだなぁと思いながらコツコツ仕事を頑張っている方におススメです。


よろしければサポートよろしくお願いします! いただいたサポートは活動費として大切に使わせていただきます。