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13 中国による国家安全法制の香港適用および中国経済について

本題に入る前に香港とアメリカの対比

本題とは少しそれますが、面白い対比があったのでお届けします。

アメリカでは現在白人警察官により黒人市民が殺されたことについて、人種差別だと反対する抗議が起こっています。

これが暴動に発展し、市民は商店などで略奪を行っています。

一方、国家安全法制や国歌法に反対する市民の抗議活動が行われている香港では、市民排除のために出動した武装警察が商店へ押し入り略奪を働いています。


中国による国家安全法の香港への適用決定について

28日に全人代によって、国家安全法を香港に適用することが決定されました。

本事案をめぐる全体像は以前の記事でお読みください。

詳細な条文内容などは今後中国によって検討されることになります。

一説では香港内に中国警察の出先機関のような監視団を設置することが言われています。

こちらの中国組織が香港の法律に従って動くのか中国の法律に従って動くのか不透明ですが、究極的にはウイグル自治区などで行われているような監視社会が香港に訪れる前触れともいえるのではないでしょうか。

中国側は香港基本法付属文書3を突破口に香港に国家安全法を適用する流れですが、西欧型の法システムでは法を逸脱した行為です。

中国においては共産党が法であって、共産党の行為を助けたり正当化するために法が存在するので、異なる法システムの概念を持ち出しても仕方がないのですが、少なくとも現行の香港は一国二制度の元、西欧型法システムの中に入っています。

そもそも国家安全法を制定しなくとも、既に今週のデモで300人以上が逮捕されています。

この逮捕者数ですら過剰であり、強引な逮捕が多いと言われている中、それでも国家安全法を適用する必要性があるのでしょうか。

キャリー・ラム行政長官は中国側への支持表明を行い、香港市民も多くが国家安全法に賛意を示していると発言しています。

自らを香港の慈母としているキャリー・ラム氏ですが、およそ自宅の窓が曇っていて外の様子が見えないようです。

国家安全法で香港経済と中国経済はどうなるか、国際金融センター香港

国家安全法は香港経済はおろか中国経済をも瓦解させかねないのではないかと考えられます。

香港はイギリスから中国に返還される際、一国二制度により資本主義経済圏に残ることができました。

これにより国際金融センターとして発展するとともに、中国経済とグローバル経済の橋渡し役として大いに活躍します。

香港を国際金融センターたらしめている要因はいくつかあり、当然強大化する中国経済がすぐバックに控えているからなのですが、前提としてカーレンシーボード制により香港の通貨である香港ドルは完全兌換通貨であるとともに対米ドルレートが固定されていること、そしてイギリス時代からの自由主義的な法制度と経済制度が維持されている点があります。

これが取引額では香港を上回っている上海市場と決定的に異なることです。

この二つの前提がある限り、上海は香港を代替できず、香港の地位はゆるぎないものであり続けます。

しかし前提の二つ目が今まさに脅かされています。

この前提が崩れれば、グローバル資本が取引に躊躇または香港市場から撤退し、中国企業が資金調達に行き詰まる可能性もあるでしょう。

共産党の独断で為替レートが操作され、法の信用度が高くない(法の概念が異なる)中国型の市場だけでは、香港経済はおろか中国経済自体にも大きな影響があるのではないでしょうか。


今日も香港の状況は刻一刻と変わっています。そんな状況の深層を理解できるような基礎知識を得られる記事を目指しています。皆様からのサポートは執筆の励みになります。どうもありがとうございました