自分の言葉を自分のために使う_3
Vol.3 母のお守り
「人との関係」に思い悩むことは多い。
家族、仕事、恋人…。人が人として生きる限り、大なり小なりの“人間関係”問題はつきまといます。
特に、「母」という存在がその人の根幹になることが、私の個人的な所見ですが、多いように思います。
松本さんの取材の中でも、「母」は多く登場しました。
生まれた時に斜頸だった松本さん。
その治療にと、お母さまは1年間、1日も欠かさず針治療に通われたそうです。
当時お母さまはリウマチだったのですが、時代が時代。
大家族を支える嫁が自分のためだけに1年、1日も欠かさず治療に通うのも困難でした。
そんな中、娘が治療を要する姿で生まれたのです。
娘の治療のついでに自分の治療も行うことができ、1年後、母子ともに回復。
その時お母さまは、お医者さまに言われました。
この子はあなたを助けるために生まれた来た-と。
生まれながらにして授かった、母を助けるという「役割」。
お守りのような存在でした。
「母に喜んでもらおうと勉強もがんばった」と言います。
そして、その「役割」は次第に、家族から社会へ、関わる人の広がりと共に拡大していったのです。
誰かの支えになる、喜ばれることを果たす―という役割。
けれど、その役割がいつもうまく“機能”していたわけではありません。
果たしたくても、状況が許さないこともあった。
前回お話したような「好きなことが取り上げられた」とき。
心の中で澱のように沈殿していたやるせない想いが、大きな渦となって噴出したときです。
きっかけは、「母からの電話だった」と言います。
いつものように、どうということはない母の愚痴話。
子どもの頃からずっと聴いてきた愚痴話。
でも、そのときに「私のなかで何かがいっぱいになった」。
もういい加減にしてくれるかな!
そう言って、ガチャンと電話を切ったのです。
「まきこちゃんがおかしくなった」と慌てる母。
そこから抱え続けてきたすべての悩みや理不尽さを吐き出し、処理をしていくことになります。
そして、次のステップであるカウンセラーの途に進むまでに3年の歳月を要したのです。
次回へつづく。
松本コミュニケーション研究所は、人との対話を通じて自分の言葉を聴き、自分への理解を深めることで、目をつむりがちな日常にひそむリスクにいち早く気がつき、ひとつでも多くのリスクを回避いただけることを目的に活動をしています。いただいたサポートは、目いっぱい大事に活かします!