自分の言葉を自分のために使う_2
Vol.2 好きなことを取り上げられて
私はカウンセリングやコーチングについて専門知識もなく、学んだこともありません。
ですから私見の範囲で、松本さんがされるセッションは、彼女自身の体験に大きな礎があるのではないかと感じています。
松本さんの社会人人生のスタートは、建設業界の施工管理の仕事だったと伺いました。
女性でも手に職をつけてお金に困らない生活をしたい。
そんな幼いころからの想いで高等専門学校の建築科へ進み、建設業界へと飛び込んだそうです。
仕事はとても楽しく、やりがいもある。
女性らしい気遣いは、現場とお客様のよき懸け橋にもなる。
現場の職人さん、そしてお客様の厚い信頼を得ながら、男性社会の職場で少しずつ自分の道を切り拓いていきました。
けれどあるとき、大きな壁が立ちはだかったのです。
四大卒の男性社員が入社。
松本さんの手がけていた仕事は、彼にどんどん流れて行くようになります。
「四大卒の男性社員」という名目に、松本さんのこれまでの努力と評価はどんどん打ち砕かれていったと言います。
その後に身を置いた大工の世界でも、同じことが起こりました。
「モノヅクリがしたい」という望みとは裏腹に、現場管理の業務が増えていく。
金槌を叩きたいのに、叩かせてもらえない。
能力や実力ではない別次元の理由で、好きなことを取り上げられる。
「自分ではどうしようもできない」というやるせない気持ちを押し隠しながら、なんとか仕事を続けていた松本さん。
その気持ちは膨張し続け、彼女の人生に影を落とすようになっていきました。
2年半のひきこもり生活。
カウンセリングに通うものの、話を聴いてもらえるのはほんの数分。
薬を出されて、はいおしまい…
そんな生活が続いたといいます。
状況はよくならず、薬は強くなる一方。
副作用に苦しみ、もうこれ以上は耐えられないと病院に電話をしても
「あなたに合うはずだから飲みなさい」という先生の返事。
―自分の人生を人に預けちゃいけない―
もうこれ以上カウンセリングも行かないし、薬も飲まない!!
そう松本さんは宣言をします。
それが、現在の活動の起点となった出来ごとでした。
次回へつづく。
松本コミュニケーション研究所は、人との対話を通じて自分の言葉を聴き、自分への理解を深めることで、目をつむりがちな日常にひそむリスクにいち早く気がつき、ひとつでも多くのリスクを回避いただけることを目的に活動をしています。いただいたサポートは、目いっぱい大事に活かします!